千葉県における一般診療所に対する抗菌薬適正使用を推進する標準モデルを検証・推進するための研究

文献情報

文献番号
202219002A
報告書区分
総括
研究課題名
千葉県における一般診療所に対する抗菌薬適正使用を推進する標準モデルを検証・推進するための研究
課題番号
20HA1002
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
谷口 俊文(国立大学法人千葉大学 医学部附属病院・感染制御部)
研究分担者(所属機関)
  • 猪狩 英俊(国立大学法人千葉大学 医学部附属病院・感染制御部)
  • 石和田 稔彦(千葉大学真菌医学研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
7,410,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
薬剤耐性(AMR)アクションプラン2016-2020において地域全体における各機関が連携してAMR対策を促進する「地域感染症対策ネットワーク」の概念が提示されている。抗菌薬処方の多くは外来処方であり、抗菌薬適正使用促進のためには地域感染症対策ネットワークを一般診療所(開業医)まで広げる必要がある。一般診療所を中心とした外来抗菌薬処方に対する介入は標準モデルが確立していない。

本研究では①外来抗菌薬処方のモニタリングとフィードバックによる介入を標準モデルとするための整備、②医科外来抗菌薬の処方量を地域ごとにレセプトデータ(NDB)で経時的に検証、③千葉県臨床検査技師会のネットワークによるサーベイランスを用いて薬剤耐性菌検出率を経時的に検証することを目的とする。
研究方法
①千葉県全体の医療機関を調査対象として研究参加に同意した千葉県薬剤師会加入の保険薬局が応需する医療機関ごとのデータをレセプトコンピューターから抽出、毎月の全抗菌薬処方箋枚数と抗菌薬の種類別の処方箋枚数を千葉県医師会事務局で回収し集計する。
千葉県全体・市町村別・地区医師会別に集計された調査結果は1か月単位に 一覧表にして、3か月ごとに千葉県医師会員ならびに薬剤師会員に機関誌等によりフィードバックする。これを3年間実施し、他地区・他市町村の実態等を見ることで、各医療機関がどのようにそれらを認識し、抗菌薬処方状況がどのように変化していくかを観察する(前向き研究)。またAMRアクションプランが示された当時の抗菌薬使用実態を検証するため2017年のデータも抽出する(後ろ向き研究)。
②特別抽出にて医科レセプトおよび調剤レセプトおよび歯科レセプトより抗菌薬処方のある患者のレセプトを2017年度から解析できるように申請する。千葉県全体、二次医療圏、市町村単位で抗菌薬の使用量を集計、医療機関が10未満の市町村に関しては隣接する市町村と併合するように解析する。
③千葉県臨床検査技師会のネットワークを利活用して千葉県内の市町村単位における薬剤耐性菌のサーベイランスシステムを作る。地域の基幹病院(感染防止対策加算1などを算定する病院)の外来診療における薬剤耐性菌の検出動向を解析して3か月単位で集計する。2017年から遡ってデータを抽出することにより、モニタリングとフィードバックによる抗菌薬処方に対する介入研究以前と以後の地域ごとの薬剤耐性菌率の比較ができるようにする。
結果と考察
①本研究開始前の2019年度の応需処方箋枚数は1,233,539枚、2020年度は1,187,340枚、2021年度は1,259,350枚、2022年度は1,556,077枚と3年間の研究機関を通じて増加していった。それぞれ年間を通じての全処方箋枚数に占める抗菌薬を含む処方箋の割合は2019年度から2022年度まで順に11.0%、8.0%、8.9%、7.1%であった。フィードバック開始後、特に新型コロナウイルス感染症のパンデミック後は10%未満となっている。
年齢区分毎のペニシリン系抗菌薬の処方割合の推移は小児領域で増加している。また成人でも使用割合が増加傾向であるがコロナ禍に入ってからは横ばいである。第3世代セフェム系の抗菌薬の処方割合は一時期上昇したものの、2020年の中頃までの解析では横ばいあるいは徐々に低下傾向、特に65歳以上で顕著な低下傾向を示している。マクロライド系抗菌薬の処方割合は全年齢層で著しく減少している傾向であったが、2021年10~12月および2022年10~12月は一時的に処方割合が増加した。キノロン系抗菌薬は65歳以上の高齢者において2020年夏頃より処方割合が増加している。
千葉県には二次医療圏が9つあるが、ペニシリン系抗菌薬の処方割合が低い地域が、東葛北部と市原であることが判明し、この地域への教育的介入が効果的である可能性が示唆された。
②NDBの特別抽出により医科外来抗菌薬処方を二次医療圏ごとに解析した。保険薬局から収集したデータと同様の抗菌薬処方傾向を示しており、二次医療圏ごとに処方パターンに差異があることから、地域ごとの啓発活動をしなければならないことが示唆された。
③千葉県臨床検査技師会の微生物班により、JANISの検査部門に参加している病院、すなわち二次医療圏の基幹病院で耐性菌データをまとめている施設に対して協力を求めて、千葉県の二次医療圏ごとの耐性パターンを視覚化した。2020年のデータでは地域ごとに薬剤感受性のパターンが異なり、地域ごとの抗菌薬適正使用の啓発活動をしなければならないことが示唆された。
結論
千葉県内における外来抗菌薬処方量のモニタリングとフィードバックおよび薬剤耐性菌の検出率のフィードバックを行い、地域ごとの一般診療所に対する抗菌薬適正使用を推進する標準モデルを確立した。

公開日・更新日

公開日
2024-06-07
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-06-07
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202219002B
報告書区分
総合
研究課題名
千葉県における一般診療所に対する抗菌薬適正使用を推進する標準モデルを検証・推進するための研究
課題番号
20HA1002
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
谷口 俊文(国立大学法人千葉大学 医学部附属病院・感染制御部)
研究分担者(所属機関)
  • 猪狩 英俊(国立大学法人千葉大学 医学部附属病院・感染制御部)
  • 石和田 稔彦(千葉大学真菌医学研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
薬剤耐性(AMR)アクションプラン2016-2020において地域全体における各機関が連携してAMR対策を促進する「地域感染症対策ネットワーク」の概念が提示されている。抗菌薬処方の多くは外来処方であり、抗菌薬適正使用促進のためには地域感染症対策ネットワークを一般診療所(開業医)まで広げる必要がある。一般診療所を中心とした外来抗菌薬処方に対する介入は標準モデルが確立していない。

本研究では①外来抗菌薬処方のモニタリングとフィードバックによる介入を標準モデルとするための整備、②医科外来抗菌薬の処方量を地域ごとにレセプトデータ(NDB)で経時的に検証、③千葉県臨床検査技師会のネットワークによるサーベイランスを用いて薬剤耐性菌検出率を経時的に検証することを目的とする。
研究方法
①千葉県全体の医療機関を調査対象として研究参加に同意した千葉県薬剤師会加入の保険薬局が応需する医療機関ごとのデータをレセプトコンピューターから抽出、毎月の全抗菌薬処方箋枚数と抗菌薬の種類別の処方箋枚数を千葉県医師会事務局で回収し集計する。
千葉県全体・市町村別・地区医師会別に集計された調査結果は1か月単位に 一覧表にして、3か月ごとに千葉県医師会員ならびに薬剤師会員に機関誌等によりフィードバックする。これを3年間実施し、他地区・他市町村の実態等を見ることで、各医療機関がどのようにそれらを認識し、抗菌薬処方状況がどのように変化していくかを観察する(前向き研究)。またAMRアクションプランが示された当時の抗菌薬使用実態を検証するため2017年のデータも抽出する(後ろ向き研究)。
②特別抽出にて医科レセプトおよび調剤レセプトおよび歯科レセプトより抗菌薬処方のある患者のレセプトを2017年度から解析できるように申請する。千葉県全体、二次医療圏、市町村単位で抗菌薬の使用量を集計、医療機関が10未満の市町村に関しては隣接する市町村と併合するように解析する。
③千葉県臨床検査技師会のネットワークを利活用して千葉県内の市町村単位における薬剤耐性菌のサーベイランスシステムを作る。地域の基幹病院(病院感染対策加算1などを算定する病院)の外来診療における薬剤耐性菌の検出動向を解析して3か月単位で集計する。2017年から遡ってデータを抽出することにより、モニタリングとフィードバックによる抗菌薬処方に対する介入研究以前と以後の地域ごとの薬剤耐性菌率の比較ができるようにする。
結果と考察
①本研究開始前の2019年度の応需処方箋枚数は1,233,539枚、2020年度は1,187,340枚、2021年度は1,259,350枚、2022年度は1,556,077枚と3年間の研究機関を通じて増加していった。それぞれ年間を通じての全処方箋枚数に占める抗菌薬を含む処方箋の割合は2019年度から2022年度まで順に11.0%、8.0%、8.9%、7.1%であった。フィードバック開始後、特に新型コロナウイルス感染症のパンデミック後は10%未満となっている。
年齢区分毎のペニシリン系抗菌薬の処方割合の推移は小児領域で増加している。また成人でも使用割合が増加傾向であるがコロナ禍に入ってからは横ばいである。第3世代セフェム系の抗菌薬の処方割合は一時期上昇したものの、2020年の中頃までの解析では横ばいあるいは徐々に低下傾向、特に65歳以上で顕著な低下傾向を示している。マクロライド系抗菌薬の処方割合は全年齢層で著しく減少している傾向であったが、2021年10~12月および2022年10~12月は一時的に処方割合が増加した。キノロン系抗菌薬は65歳以上の高齢者において2020年夏頃より処方割合が増加している。
千葉県には二次医療圏が9つあるが、ペニシリン系抗菌薬の処方割合が低い地域が、東葛北部と市原であることが判明し、この地域への教育的介入が効果的である可能性が示唆された。
②NDBの特別抽出により医科外来抗菌薬処方を2次医療圏ごとに解析した。保険薬局から収集したデータと同様の抗菌薬処方傾向を示しており、二次医療圏ごとに処方パターンに差異があることから、地域ごとの啓発活動をしなければならないことが示唆された。
③千葉県臨床検査技師会の微生物班により、JANISに参加している病院、すなわち2次医療圏の基幹病院で耐性菌データをまとめている施設に対して協力を求めて、千葉県の2次医療圏ごとの耐性パターンを視覚化した。2020年のデータでは地域ごとに薬剤感受性のパターンが異なり、地域ごとの抗菌薬適正使用の啓発活動をしなければならないことが示唆された。
結論
千葉県内における外来抗菌薬処方量のモニタリングとフィードバックおよび薬剤耐性菌の検出率のフィードバックを行い、地域ごとの一般診療所に対する抗菌薬適正使用を推進する標準モデルを確立した。

公開日・更新日

公開日
2024-06-07
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-06-07
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202219002C

収支報告書

文献番号
202219002Z