精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築を推進する政策研究

文献情報

文献番号
202218055A
報告書区分
総括
研究課題名
精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築を推進する政策研究
課題番号
22GC2003
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
藤井 千代(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 野口 正行(岡山県精神保健福祉センター)
  • 来住 由樹(岡山県精神科医療センター)
  • 椎名 明大(千葉大学社会精神保健教育研究センター)
  • 佐竹 直子(国立研究開発法人 国立国際医療研究センター 国府台病院)
  • 杉山 直也(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
27,847,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築を推進するうえで必要な精神保健医療福祉サービスのあり方について、エビデンスに基づく具体的かつ実現可能な政策提言を行うことである。
研究方法
精神障害にも対応した地域包括ケアシステム(「にも包括」)の構築推進に関する課題について、以下の分担班で課題の検討状況を共有しつつ、調査研究を実施した。
自治体における包括的ケアの推進に関する研究(野口正行)
地域における精神科医療機関の役割に関する研究(来住由樹)
地域における危機介入のあり方に関する研究(椎名明大)
総合病院精神科の機能に関する研究(佐竹直子)
精神科救急医療体制に関する研究(杉山直也)
精神障害者の権利擁護に関する研究(藤井千代)
結果と考察
自治体における包括的ケアの推進に関する研究については、保健師、精神科病院、自治体へのヒアリング等により市町村を中心とした精神保健相談支援体制の構築およびそれを支援する都道府県による重層的支援体制のあり方に関する提言を行い、研究成果に基づく研修を実施した。市町村における相談支援体制整備の課題に関する資料を提示し、精神保健業務に関する市区町村調査を実施した。今後さらなる「にも包括」のシステムの概念整理、個別支援から協議の場の運営等に関する検討を行い、精神保健福祉相談員講習会の見直しに向けて検討を進める必要があると考えられた。地域における精神科医療機関の役割に関する研究では、精神科の実務を担う関係諸団体から推薦を受けた研究協力者との意見交換により、精神障害にも対応した地域包括ケアシステム構築の観点から、地域における精神科医療機関の役割について概念整理を行った。地域における精神科医療機関に求められる役割は、「診療機能」「連携」「地域での役割」の3軸で整理することが適当と考えられた。今後、今年度整理した役割に関して、全国の精神科医療機関を対象とした実態調査を行う必要があると考えられた。地域における危機介入のあり方に関する研究においては、措置入院の要否判断に関するエキスパートコンセンサスの成立に向けての調査結果を踏まえて、若手精神科医を対象とした措置診察研修会を実施た。研修受講後には措置診察に関する知識の向上、学習モチベーションの増加傾向を認めた。研修の内容については、座学の講義は事前ビデオ学習を中心とし、当日の講義では講師の経験談も交えつつ質疑応答時間を長めにとることでインタラクティブ性を確保することが受講者の満足度に繋がることが示唆された。「地方公共団体による精神障害者の退院後支援ガイドライン」の運用状況について全国の保健所を対象に実施した調査では、ガイドラインに基づく支援の対象としては、治療中断のおそれが高いもの、家族等を含む地域社会資源の乏しい者等が主たる対象であることが推察された。支援実績については自治体毎にばらつきはあるものの、ほとんどの自治体でガイドラインに基づく支援が行われていることが確認された。総合病院精神科の機能に関する研究では、総合病院精神科の機能を明確化するための基礎調査の分析及びヒアリング調査から、総合病院精神科は有床、無床と救急や身体合併症対応などの機能により4つに類型化された。そのニーズは自殺対応を含む精神科救急・急性期、身体合併症・身体管理、mECT、クロザピン、摂食障害などの身体管理を有する精神科専門治療、周産期、緩和ケアなどのコンサルテーション・リエゾン等であり、など多岐にわたり、「にも包括」における総合病院精神科の必要性が示された。精神科救急医療体制に関する研究では、全国の精神科救急・急性期入院料を算定する医療機関(N=161)に対し、新規入院ケースに関する患者属性、状態像、入院の必要性、入院の必要性が高まる要配慮因子の有無、高規格病棟の必要性等に関する調査を依頼し、81の医療機関より(回答率50.3%)2123件分の調査票が得られた。重症度判定の方策の確立のため、妥当かつ有用な項目設定と、解析に十分なデータ量を取得することができ、次年度に詳細な分析を行う予定である。精神障害者の権利擁護に関する研究では、精神医療審査会業務に関する調査からは、情報通信技術(ICT)の整備が急務であることが示唆された。退院請求審査では、病態や同意能力の評価、入院医療の不可欠性の評価、提供される医療の適正さの評価に着目することが必要であると考えられた。また「入院者訪問支援事業」創設を受け、研究成果に基づいた研修のあり方について提案を行った。
結論
研究はほぼ計画通り進行しており、「にも包括」構築のための提言につなげることができると思われる。

公開日・更新日

公開日
2023-11-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2023-11-02
更新日
2024-02-06

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202218055Z