HLAミスマッチ造血細胞移植後の新規キメリズム解析法による臨床診断の有用性に関するエビデンス創出

文献情報

文献番号
200918047A
報告書区分
総括
研究課題名
HLAミスマッチ造血細胞移植後の新規キメリズム解析法による臨床診断の有用性に関するエビデンス創出
課題番号
H21-臨床研究・一般-020
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
中内 啓光(東京大学医科学研究所 ヒト疾患モデル研究センター 高次機能研究分野)
研究分担者(所属機関)
  • 渡辺 信和(東京大学医科学研究所 病態解析領域 造血細胞移植学)
  • 高橋 聡(東京大学医科学研究所 附属病院 造血細胞移植学)
  • 田野崎 隆二(国立がんセンター中央病院 造血細胞移植学/輸血学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(臨床研究・予防・治療技術開発研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
57,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我々は、臍帯血移植後の病態解析を目的に、FACSを使用した新規キメリズム解析法(HLA-Flow法)を考案した。本法は、迅速、高感度かつ定量的で、細胞を分取して詳細に解析できることから、生着不全と再発の早期診断に極めて有効である。しかしながら、臨床研究の規模が限られ、アリル特異的抗HLA抗体も染色性が不良かつ種類が不足していたため、臨床検査として広く定着するには至っていない。そこで中内は、新たに開発した方法で染色性の良好な抗HLA抗体を作製し、全国規模でのキメリズム解析の共同研究を計画した。それにより、全国の移植施設でHLA-Flow法がHLAミスマッチ移植の臨床検査と研究の手段として有効であるというエビデンスを確立し、本法を我が国における標準的検査法として定着させることが、本研究の最終目的である。
研究方法
中内は大規模な臨床研究に対応するため、新規抗HLA抗体の蛍光色素標識、および高性能FACS機器の導入を試みた。また、高橋、田野崎、渡辺は、キメリズム解析に関する研究会を開催し、全国の移植施設から演者を招いて、臨床研究のプロトコールの作成を試みた。
結果と考察
中内は新規抗HLA-B35抗体を複数の蛍光色素で標識したが、これらはマルチカラー解析で有効に使用されている。また、マルチカラー解析とソーティングの機能を備えたFACS Aria II(Becton-Dickinson社)を医科研に導入したが、本機器は臨床検体の解析に活用されている。
渡辺は虎の門病院・血液内科(谷口修一部長)と協議し、同院の臍帯血ミニ移植に特化したキメリズム解析のプロトコールを作成し、11月より臨床研究を開始した。平成21年度末までに36例の患者を解析し、HLA-Flow法が生着不全と再発の早期診断に有効であるとの評価を得た。同院では、臨床検査として本法の導入が検討されている。高橋と田野崎は第1回キメリズム解析研究会(12月25日、医科研)を開催し、虎の門病院、原発性免疫不全症研究班(いずれも臍帯血ミニ移植)、兵庫医大(HLA半合致移植)、および岡山大学(生体肝移植)から演者を招いた。その後、免疫不全症研究班および岡山大学とプロトコールを作成し、平成22年度以降に臨床研究を予定している。
結論
平成21年度、我々の開発した方法で作製した抗HLA抗体が、実際のマルチカラー解析で有効に使用できることが示された。全国規模での臨床研究は準備が整い、虎の門病院との共同研究では順調に成果を出しつつある。

公開日・更新日

公開日
2011-05-31
更新日
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