日本人糖尿病合併冠動脈疾患患者において積極的脂質低下・降圧療法の妥当性を問うランダム化臨床試験および観察研究

文献情報

文献番号
200918044A
報告書区分
総括
研究課題名
日本人糖尿病合併冠動脈疾患患者において積極的脂質低下・降圧療法の妥当性を問うランダム化臨床試験および観察研究
課題番号
H21-臨床・一般-017
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
植田 真一郎(琉球大学大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 野出 孝一(佐賀大学 医学部)
  • 井上 卓(琉球大学医学部附属病院)
  • 勝亦 百合子(琉球大学大学院医学研究科)
  • 松島 雅人(東京慈恵会医科大学)
  • 大屋 祐輔(琉球大学大学院医学研究科)
  • 仲田 清剛(社会医療法人敬愛会ちばなクリニック)
  • 佐田 政隆(徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部)
  • 東 幸仁(広島大学大学院医歯薬学総合研究科)
  • 島田 健永(大阪市立大学大阪掖済会病院)
  • 石橋 豊(島根大学医学部附属病院 地域医療教育研修センター)
  • 植田 育子(琉球大学大学院医学研究科)
  • 村田 京子(琉球大学大学院医学研究科)
  • 具志堅 清明(沖縄県企画部科学技術振興課)
  • 平良 秀春(沖縄県企画部科学技術振興課)
  • 安藤 真一(福岡県済生会二日市病院)
  • 今西 政仁(大阪市立総合医療センター)
  • 香坂 俊(慶応義塾大学医学部)
  • 百村 伸一(自治医科大学さいたま医療センター)
  • 安 隆則(琉球大学大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(臨床研究・予防・治療技術開発研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
36,080,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、日本人の糖尿病合併冠動脈疾患患者における妥当な治療に関するエビデンスを創出することである。内的妥当性が高く、かつ現実的な積極的脂質低下・降圧治療と標準的治療を比較するランダム化比較試験(RCT)と、外的妥当性が高く、かつ交絡因子の影響を最小限にして、経過中の脂質、血圧とアウトカムの関連を評価する観察研究を並行して実施し、積極的治療のeffectivenessに関して現実世界の患者に適用可能で、信頼性の高い結果を得る。
研究方法
前向きコホート研究は20歳以上の2型糖尿病で,冠動脈疾患を持つ患者8000名を対象とする。主要評価項目は死亡、心筋梗塞、脳卒中である。解析はLDLコレステロールレベルと血圧を時間依存性変数として行う。
前向きコホート研究で登録した患者においての横断的解析の結果に基づいてRCTのプロトコルを最終決定した。
結果と考察
平成21年11月から平成22年1月までに登録可能であった症例は622症例(平均年齢68.0±4.4歳、男性68%)であった。登録時における対象者の収縮期血圧・拡張期血圧・LDLコレステロール値はそれぞれ137±21mmHg,75±13mmHg,114.4±33.9mg/dlであった。今回登録可能であった622症例中、339症例においては後ろ向きに追跡まで行うことができた。現在沖縄県下で約1000名、県外で約400名の患者登録が進行している。本研究横断的解析の結果は、pre-study screeningの際の結果とほぼ同様であり、日本の専門医へのエビデンスの浸透が充分でない現状が再確認された。
RCTは糖尿病合併冠動脈疾患患者でかつ心筋梗塞の既往を持つ患者を対象とする。コホート研究登録患者の横断的解析から、血圧およびLDLコレステロール値の下四分位点を求め、実現可能な積極的治療の目標値(LDL70-85mg/dl,収縮期血圧120mmHg)とした。一次エンドポイントは死亡、心筋梗塞、脳卒中に加え、厳密な診断基準のもとで判定された不安定狭心症を加えた。
結論
本邦において糖尿病合併冠動脈疾患患者における脂質低下・降圧療法は、エビデンスが十分に反映されていない。観察研究及び介入研究による、積極治療の予後改善の結果が待たれる。
RCTに関しては安全性、信頼性を維持しつつ実現性と一般化可能性を高めたプロトコルが完成した。また本研究のようなRCTとコホート研究を同一の母集団で並行して実施した例は過去に無く、外的妥当性、内的妥当性の高いデータが得られ、結果の一貫性の検討により真に有効な治療法について評価が可能である。

公開日・更新日

公開日
2011-05-31
更新日
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