創薬化を目指したglypican-3由来がんペプチドワクチン療法のエビデンス創出のための臨床試験

文献情報

文献番号
200918043A
報告書区分
総括
研究課題名
創薬化を目指したglypican-3由来がんペプチドワクチン療法のエビデンス創出のための臨床試験
課題番号
H21-臨床・一般-016
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
中面 哲也(国立がん研究センター東病院 臨床開発センター)
研究分担者(所属機関)
  • 小西 大(国立がん研究センター東病院)
  • 小菅 智男(国立がん研究センター中央病院)
  • 奥坂 拓志(国立がん研究センター中央病院)
  • 國土 典宏(東京大学医学部附属病院)
  • 石井 浩(癌研究会有明病院)
  • 有賀 淳(東京女子医科大学 先端生命医科学研究所)
  • 斎田 俊明(信州大学医学部)
  • 木庭 幸子(信州大学医学部)
  • 尹 浩信(熊本大学大学院生命科学研究部)
  • 中川原 章(千葉県がんセンター)
  • 原 純一(大阪市立総合医療センター)
  • 熊谷 昌明(国立成育医療研究センター)
  • 真部 淳(聖路加国際病院)
  • 木下 義晶(九州大学大学病院)
  • 吉川 史隆(名古屋大学大学院医学系研究科)
  • 永井 完治(国立がん研究センター東病院)
  • 佐藤 昇志(札幌医科大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(臨床研究・予防・治療技術開発研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
46,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
肝細胞がんを中心としてglypican-3(GPC3)を発現するがんを対象にGPC3ペプチドワクチンの有効性を検証する様々な臨床試験を実施し、科学的エビデンスを創出して、GPC3ペプチドワクチンの製薬企業への導出、企業治験の実施、医薬品としての承認申請までの道のりを一気に短縮することを目指している。
研究方法
1.肝細胞がんに対するGPC3ペプチドワクチンの臨床試験
2.悪性黒色腫を対象としたペプチドワクチン療法の開発
3.小児がんを対象としたペプチドワクチン療法の開発
4.卵巣明細胞腺がんおよび卵巣卵黄嚢腫瘍を対象としたペプチドワクチン療法の開発
5.肺がんを対象としたペプチドワクチン療法の開発
結果と考察
進行肝細胞がんを対象としたGPC3ペプチドワクチンの臨床第1相試験の結果では、遠隔転移の1例に著明な腫瘍縮小効果を認めたが、ペプチドワクチン療法単独ではまだ進行がんへの効果は限定的であり、さらに強力な免疫療法あるいは様々な治療法との併用なども基礎研究で開発することも必要と考えられた。手術・ラジオ波の根治的治療後の再発予防効果を検証する第2相試験は、国立がん研究センター倫理審査委員会承認後に開始した。順調に症例集積がなされており、結果も期待されるところである。
GPC3は悪性黒色腫にも発現はしていると考えられるが、その発現程度は肝細胞がんに比べると低い可能性が示唆された。
小児がんでは、肝芽腫、腎芽腫、卵黄嚢腫瘍でのGPC3蛋白質発現が再確認でき、GPC3ペプチドワクチン療法の臨床応用を目指す。神経芽腫やその他の小児がんの中でもGPC3発現陽性のがんが存在する可能性が示唆された。
卵巣明細胞腺がんでは①初回治療終了後、臨床的寛解が得られている寛解群(adjuvant症例)、②初回治療後の残存腫瘍に対してSecond-line化学療法を予定されている非寛解群、③今後化学療法施行予定のない再発・進行群の3群を対象としてGPC3ペプチドワクチン療法の臨床試験のプロトコールを作成して、名古屋大学医学部倫理審査委員会に申請、承認された。今後のGPC3ペプチドワクチン療法の効果が期待される。
肺がんでは、文献同様、我々の検討でも、約半数の肺扁平上皮がんにおいてGPC3蛋白の発現を認めた。今後は肺扁平上皮がんを対象としたGPC3ペプチドワクチン療法の臨床試験も計画する。
結論
肝細胞がんを中心としてGPC3を発現するがんを対象にGPC3ペプチドワクチンの有効性を検証する様々な臨床試験を実施、計画中であり、ペプチドワクチン療法の科学的エビデンスを創出することを目指す。

公開日・更新日

公開日
2011-05-31
更新日
-