文献情報
文献番号
202218046A
報告書区分
総括
研究課題名
入院中の強度行動障害者への支援・介入の専門プログラムの整備と地域移行に資する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22GC1019
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
會田 千重(国立病院機構 肥前精神医療センター 統括診療部)
研究分担者(所属機関)
- 杠 岳文(独立行政法人国立病院機構肥前精神医療センター(臨床研究部))
- 市川 宏伸(日本発達障害ネットワーク 調査研究委員会)
- 井上 雅彦(鳥取大学 大学院医学系研究科 臨床心理学講座)
- 日詰 正文(独立行政法人 国立重度知的障害者総合施設のぞみの園 総務企画局研究部)
- 成田 秀幸(国立知的障害者総合施設のぞみの園 診療部)
- 根本 昌彦(国立知的障害者総合施設のぞみの園 研究部)
- 山下 健(独立行政法人国立病院機構さいがた医療センター 医局)
- 吉川 徹(愛知県医療療育総合センター発達障害研究所 障害システム研究部門)
- 児玉 匡史(地方独立行政法人岡山県精神科医療センター 医療部)
- 田中 恭子(国立病院機構菊池病院)
- 高橋 和俊(社会福祉法人侑愛会)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
8,680,000円
研究者交替、所属機関変更
研究分担者
山下健(所属機関変更)
地方独立行政法人 大阪府立病院機構大阪精神医療センター
(令和4年4月1日~令和4年6月30日)
→国立病院機構さいがた医療センター
(令和5年7月1日以降)
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は入院中の強度行動障害者の専門治療・研修プログラム整備と地域移行に向けた福祉・教育等との連携ガイドライン作成を目的とする。
研究方法
全国多施設共同で1)入院中の強度行動障害者の専門治療・研修プログラム整備(1~2年目)と介入による効果判定(1~2年目)、2)地域移行に向けた連携ガイドライン作成(1~2年目)、3)今後の専門医療普及に向けての実態調査(2年目)、を行う。
1)①多職種向けの「強度行動障害チーム医療研修」
《方法》
国立病院機構で2015年度から実施している「強度行動障害チーム医療研修」をベースに、研究代表者・分担者多職種(医師・看護師・公認心理士・福祉専門家)でカリキュラムの検討を行い、②の介入研究実施予定の医療機関スタッフ対象に、オンライン研修を行う。
《研修効果判定》
受講者に対する質問紙調査等により分析を行う。
1)②強度行動障害者の入院治療による介入と効果判定(非盲検無対照試験)
《対象:以下選択基準を満たす精神科入院患者、年間目標症例数:計20名》
1.自力歩行可能以上の運動機能を有する
2.障害支援区分認定調査の「行動関連項目」10点以上
3.「強度行動障害判定基準」10点以上
4.ABC-J(異常行動チェックリスト日本語版)の興奮性サブスケール18点以上
5.IQ70未満で知的障害を有する
《方法》
以下の2つの入院治療プログラムをスケジュールに沿って研究代表者・分担者・協力者で実施し、介入効果を判定し、代表者施設にデータを集約し解析する。
・緊急レスパイト目的の入院治療プログラム(治療プログラムⅠ)
・行動療法(応用行動分析)や構造化を用いた介入プログラム(治療プログラムⅡ)
《対象の評価指標》
①行動障害の重症度
・障害支援区分認定調査の「行動関連項目」
・「強度行動障害判定基準」
・ABC-J
・日本語版BPI-S
《治療効果判定》
標準化された指標である1.2.と、治療プログラムⅡの場合は3.標的症状の定量変化(福祉分野で既に導入され始めているObservationsアプリによる匿名の定量測定)で、入院時/退院時/退院後1か月で有意差を比較する
1.主要評価項目:ABC-Jの各サブスケール
2.日本語版BPI-Sの各頻度合計得点
3.標的症状(行動障害)の定量測定(Observationsアプリ)
1)①多職種向けの「強度行動障害チーム医療研修」
《方法》
国立病院機構で2015年度から実施している「強度行動障害チーム医療研修」をベースに、研究代表者・分担者多職種(医師・看護師・公認心理士・福祉専門家)でカリキュラムの検討を行い、②の介入研究実施予定の医療機関スタッフ対象に、オンライン研修を行う。
《研修効果判定》
受講者に対する質問紙調査等により分析を行う。
1)②強度行動障害者の入院治療による介入と効果判定(非盲検無対照試験)
《対象:以下選択基準を満たす精神科入院患者、年間目標症例数:計20名》
1.自力歩行可能以上の運動機能を有する
2.障害支援区分認定調査の「行動関連項目」10点以上
3.「強度行動障害判定基準」10点以上
4.ABC-J(異常行動チェックリスト日本語版)の興奮性サブスケール18点以上
5.IQ70未満で知的障害を有する
《方法》
以下の2つの入院治療プログラムをスケジュールに沿って研究代表者・分担者・協力者で実施し、介入効果を判定し、代表者施設にデータを集約し解析する。
・緊急レスパイト目的の入院治療プログラム(治療プログラムⅠ)
・行動療法(応用行動分析)や構造化を用いた介入プログラム(治療プログラムⅡ)
《対象の評価指標》
①行動障害の重症度
・障害支援区分認定調査の「行動関連項目」
・「強度行動障害判定基準」
・ABC-J
・日本語版BPI-S
《治療効果判定》
標準化された指標である1.2.と、治療プログラムⅡの場合は3.標的症状の定量変化(福祉分野で既に導入され始めているObservationsアプリによる匿名の定量測定)で、入院時/退院時/退院後1か月で有意差を比較する
1.主要評価項目:ABC-Jの各サブスケール
2.日本語版BPI-Sの各頻度合計得点
3.標的症状(行動障害)の定量測定(Observationsアプリ)
結果と考察
①多職種向けの「強度行動障害チーム医療研修」
R5年5月末日までに退院後評価が終了した21事例に関する主要な治療スタッフ21名は看護師が18名(86%)と最多で、性別は男性62%・女性38%と男性が多く、治療スタッフの年代は40代が11名(52%)と半数以上、在職年数は10年以上が62%を占めていた。強度行動障害者への支援・介入に関して作成した研修動画資料については、「よく理解できた」「理解できた」を合わせると91%であり、研修資料の必要性も「とても感じる」「感じる」を合わせると100%であった。研修動画資料で特に有効だったものとして「強度行動障害の看護」「行動障害への対処法~構造化」が挙げられた。
②強度行動障害者の入院治療による介入と効果判定
引き続き事例集積中であるが、現時点で治療プログラムⅠ(約3週間)の19例について集計した結果、男性16名・女性3名、年齢は6-42歳(中央値:19歳)、身長・体重の中央値は164cm・65kgであった。知的障害の程度は最重度8名・重度8名・中等度2名・軽度1名、自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder:以下ASD)の合併は全例100%、てんかん合併は3例(16%)であった。主な行動障害は他害や器物破損・激しい自傷等であった。また障害支援区分は4が1名・5が6名・6が5名で、ほか7名は児童であり、行動関連項目の中央値は17(10-20点)、強度行動障害判定基準の中央値は28(13-46点)であった。主要評価項目であるABC-J興奮性サブスケールは入院時に比し退院時の数値が低下した事例が19例中14例であった。今後更に事例を集積し統計解析予定である。
R5年5月末日までに退院後評価が終了した21事例に関する主要な治療スタッフ21名は看護師が18名(86%)と最多で、性別は男性62%・女性38%と男性が多く、治療スタッフの年代は40代が11名(52%)と半数以上、在職年数は10年以上が62%を占めていた。強度行動障害者への支援・介入に関して作成した研修動画資料については、「よく理解できた」「理解できた」を合わせると91%であり、研修資料の必要性も「とても感じる」「感じる」を合わせると100%であった。研修動画資料で特に有効だったものとして「強度行動障害の看護」「行動障害への対処法~構造化」が挙げられた。
②強度行動障害者の入院治療による介入と効果判定
引き続き事例集積中であるが、現時点で治療プログラムⅠ(約3週間)の19例について集計した結果、男性16名・女性3名、年齢は6-42歳(中央値:19歳)、身長・体重の中央値は164cm・65kgであった。知的障害の程度は最重度8名・重度8名・中等度2名・軽度1名、自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder:以下ASD)の合併は全例100%、てんかん合併は3例(16%)であった。主な行動障害は他害や器物破損・激しい自傷等であった。また障害支援区分は4が1名・5が6名・6が5名で、ほか7名は児童であり、行動関連項目の中央値は17(10-20点)、強度行動障害判定基準の中央値は28(13-46点)であった。主要評価項目であるABC-J興奮性サブスケールは入院時に比し退院時の数値が低下した事例が19例中14例であった。今後更に事例を集積し統計解析予定である。
結論
これまで「強度行動障害者専門の入院治療先の乏しさ・待機者の多さ」「一般精神科病棟入院中の専門的介入手法の未整備」「退院後の地域移行の難しさ」などが把握されていたが、本研究による介入やSV連絡会議により、①精神科病棟での手厚いチーム医療体制・研修整備の必要性、②病棟環境調整の難しさ、③重大な他害など処遇困難事例の地域福祉サービス利用の難しさ、④福祉サービス利用を断られ疲弊した家族支援の問題、⑤各地域でのネットワーク構築のための専門協議会の不足などが浮き彫りになった。今後も入院中の強度行動障害者の1)専門治療・研修プログラム整備と介入による効果判定、2)地域移行に向けた連携ガイドライン作成、3)今後の専門医療普及に向けての実態調査、を行っていく。
公開日・更新日
公開日
2025-05-30
更新日
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