障害者総合支援法の見直しを踏まえた、地域で暮らす障害者の地域生活支援の効果的な支援方法及び評価方法の検討のための研究

文献情報

文献番号
202218044A
報告書区分
総括
研究課題名
障害者総合支援法の見直しを踏まえた、地域で暮らす障害者の地域生活支援の効果的な支援方法及び評価方法の検討のための研究
課題番号
22GC1017
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
田村 綾子(聖学院大学 心理福祉学部)
研究分担者(所属機関)
  • 藤井 千代(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所)
  • 青石 恵子(熊本大学)
  • 曽根 直樹(日本社会事業大学大学院 福祉マネジメント研究科)
  • 鈴木 孝典(大正大学 社会共生学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
8,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
令和2~3年度厚生労働科学研究費補助金(障害者政策総合研究事業)「地域で暮らす障害者の地域生活支援の実態把握及び効果的な支援方法、その評価方法についての研究」(研究代表:田村綾子)の分析結果からは、地域生活を送る障害者の自己実現や承認欲求の充足に向けた支援のあり方や、居住形態別の支援状況及びそれに対する利用者の評価を把握し、支援の効果を検証することが求められることがわかっている。本研究は、障害者総合支援法の見直しをふまえ、病院や施設からの地域移行を体験し、障害福祉サービス等を利用しながら地域生活を送る障害者を対象として、その支援の効果を評価するための方策を検討するとともに、障害者の地域生活における効果的な支援のあり方に関する提言に資することを目的とする。
研究方法
関係団体より研究協力者の推薦を得て研究協力者会議を構成し、調査回答の協力者については、日本相談支援専門員協会及び都道府県精神保健福祉士協会に調査概要を提示し、計画相談に従事する相談支援専門員のうちから協力可能な者を紹介してもらった。その支援者が支援計画を作成している障害者に関して、1支援者につき上限4名を条件に沿って選定し、郵送自記式質問紙法による調査を実施した。選定条件は、精神科病院や障害者支援施設、訓練事業所やグループホーム等から地域生活に移行した者で、調査時点で地域生活している方(グループホームやサービス付き高齢者住宅の入居者は可、訓練施設や介護施設の入所者は除く)とした。
質問紙票の作成には、令和2~3年度厚生労働科学研究費補助金(障害者政策総合研究事業)「地域で暮らす障害者の地域生活支援の実態把握及び効果的な支援方法、その評価方法についての研究」(研究代表:田村綾子)を基盤とし、障害当事者である研究協力者等の助言を受けて一部改変した。また、回答に使用するWHODAS2.0による評価方法に関しては、研究目的や概要と併せて説明動画を作成し、調査協力の依頼書に掲載した。また、調査回答者のうち、希望者には謝礼を後日送付した。
調査の実施にあたり、調査票の印刷・発送・回収・データ入力を民間業者に業務委託した。
倫理面への配慮として、調査票はすべて無記名とし、得られた回答は個人が特定できないように取り扱うこと、返送された調査票は施錠保存し研究終了後5年を経過したのちすべて適切な方法で廃棄処分すること、委託業者との間で誓約書の提出を含む契約を交わすこと、論文作成や学会発表における研究成果の公表に際して個人情報は記載しないことを厳守し、調査の実施にあたり、聖学院大学研究倫理委員会における審査によって承認を得た(承認番号 第2022-17b号)。以上に加えて、依頼文書には、結果を統計的にまとめて厚生労働省に報告書として提出すること、調査協力しなくても不利益が生じないことを併せて明記した。なお、調査で使用する評価尺度は、開発者(兵庫県立大学大学院社会科学研究科 筒井孝子教授)の承諾を得たものを使用した。
結果と考察
相談支援専門員378名に配布し、196名より障害者513名分の回答を得た(A票の欠損したB票、C票各3件を含む)。
 回答者の男女比は概ね6:4で、精神障害者が70%強、知的障害者が約25%であったが、身体障害、発達障害、高次脳機能障害、難病も含まれていた。地域移行支援事業の利用歴は約25%が有し、その大半は現在の計画相談支援の事業所での実施によるものであった。地域移行したことについては、86%が肯定的に評価していた。現在の居住場所は自宅が54%、次いで共同生活援助(グループホーム)が42%で、全体の56%は単身生活であった。
 WHODAS2.0の結果、「可動性」や「セルフケア」については問題ない者が多いが、障害者の回答では、基本的欲求である生理的欲求のうち性的欲求の充足は他の項目に比べて低かったほか、いくつかの欲求に関する充足度には障害種別による有意差を認めた。WHODAS2.0の評価と社会関連性指標の間にはいくつかの相関がみられたほか、社会関連性指標と基本的欲求の充足の程度との間での相関や、居住形態や居住場所と社会関連性、及び欲求充足の程度との間での相関がみられた。
結論
地域生活への移行後の暮らしにおいて、障害者が障害福祉サービス等を活用することで生理的欲求を満たすことは、生活を始めたその日から必要となるが、生活スタイルが定着するにつれて社会的欲求や承認欲求を満たし、好きなことを楽しんだり、より良い生き方への欲求をもつには年月がかかり、障害者が主体的な生き方・暮らし方の選択を行えるためには、地域移行後の支援における「本人中心」のアプローチを継続することが支援者に求められる。

公開日・更新日

公開日
2023-06-06
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202218044Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
10,400,000円
(2)補助金確定額
7,297,751円
差引額 [(1)-(2)]
3,102,249円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 464,070円
人件費・謝金 2,512,479円
旅費 59,580円
その他 1,861,622円
間接経費 2,400,000円
合計 7,297,751円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2024-03-27
更新日
-