新しく発明された概念に基づく抗がん剤アルクチゲニンの臨床導入

文献情報

文献番号
200918040A
報告書区分
総括
研究課題名
新しく発明された概念に基づく抗がん剤アルクチゲニンの臨床導入
課題番号
H21-臨床研究・一般-013
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
江角 浩安(国立がんセンター東病院)
研究分担者(所属機関)
  • 大津 敦(国立がん研究センター東病院)
  • 佐藤 暁洋(国立がん研究センター東病院)
  • 池田 公史(国立がん研究センター東病院)
  • 奥坂 拓志(国立がん研究センター東病院)
  • 畠 清彦((財)癌研究会有明病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(臨床研究・予防・治療技術開発研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
60,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
がん組織に特異的なエネルギー代謝系を標的とした、正常組織に対して相対的に低毒性の抗腫瘍薬をスクリーニングしてきた。天然物の中からこれまでにキガマイシン、アルクチゲニンなどを見いだした。本研究では、局方に登録されているゴボウシにアルクチゲニンが多く含まれる事に注目し、ゴボウシ抽出エキスでアルクチゲニンと同じ効果を得られる事を確認し、早期の臨床導入を目的とした。
研究方法
ヒト由来の膵臓がん細胞株であるAsPc1、BxPc3、CAPAN1、CAPAN2、CFPAC、MIAPaCa2、PANC1、PSN1、Su8686、KP3の10株を実験に用いた。アルクチゲニン精製物およびゴボウシ抽出エキスは、クラシエ製薬より供与を受けた。細胞への傷害性の評価、マウス臓がん細胞移植モデルの作製をしこれに対する抗腫瘍性、遺伝的すい臓がん発症モデルの作製しこれによる抗腫瘍性を検討した。
結果と考察
ゴボウシの粗抽出物は、精製アルクチゲニンと同等の抗腫瘍活性を持つことがin vitroおよびin vivoの研究結果から明らかになった。栄養飢餓状態に選択的なアルクチゲニンの細胞障害性は、遺伝的背景の異なる膵臓がん細胞株において広く見られた。牛蒡子エキスとゲムシタビンの併用効果を動物モデルにおいて大きな抗腫瘍性を発揮することが明らかになった。移植モデルよりもヒトすい臓がんに近い遺伝的すい管がん発症モデルで、延命効果が顕著であった。急性及び亜急性毒性試験で特に取り立てて大きな毒性は見られなかった。また、ゲムシタビンとの併用によっても、ゲムシタビンの毒性を大きく増強するような反応は見られなかった。
結論
 現在までの前臨床試験は膵臓がんに特化したものであるが、将来の事を考えれば膵臓がん以外への応用も考え他の細胞株、他の動物モデルでの抗腫瘍性の検討を追加するのが望ましい。2. POCのためのバイオマーカーを考える必要があるが、メタボローム、PET 、Diffusion-weighted MRI等も検討する3. Phase I試験は、単にPharmacokineticsに止まらず単剤での抗腫瘍効果もEnd-pointとするのがよい。これがないと、牛蒡子の適応症がゲムシタビンあるいはTS-1との併用だけで認められると将来の展開が苦しくなる。出来るだけ早い時期にPMDAとの相談をする。4. いずれにしろ大きな困難があるとは思えないのでエキスとしての臨床試験のデザインを急ぐ必要がある。

公開日・更新日

公開日
2011-05-31
更新日
-