文献情報
文献番号
202218042A
報告書区分
総括
研究課題名
強度行動障害者支援のための指導的人材養成プログラムの開発および地域支援体制の構築のための研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22GC1015
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
日詰 正文(独立行政法人 国立重度知的障害者総合施設のぞみの園 総務企画局研究部)
研究分担者(所属機関)
- 安達 潤(北海道教育大学旭川校教育学部障害児臨床教室)
- 井上 雅彦(鳥取大学 大学院医学系研究科 臨床心理学講座)
- 會田 千重(国立病院機構 肥前精神医療センター 統括診療部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
11,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
強度行動障害支援者養成研修により強度行動障害者への支援方法の周知がなされているが、研修での学びが支援現場で活用されていないこと、一部の事業所や職員、家族に負担がかたよっていることが指摘されている。
こうした状況を解決する方向性として、支援チームの中核となって実践を動かす中核的人材の養成、コンサルテーションを行う指導的人材の確保、地域の関係機関との協力体制の仕組みづくり、これらを行う支援現場の負担感や孤立感の解消に役立つICTの活用、QOLにも目を向けたICFの活用等が先行研究等により整理されている。
本研究は、上記の点を基に強度行動障害者支援のための指導的人材の確保・養成および地域支援体制構築のためのモデルを整理し、モデルの試行・検証を行い、社会実装に向けたプロセスを明らかにすることを目的とした。
令和4年度は、強度行動障害に関する各地域の人材養成および支援体制の実態把握を行い、指導的人材の養成モデル、地域支援体制を強化するためのプロセスを検討することを目的とした。
こうした状況を解決する方向性として、支援チームの中核となって実践を動かす中核的人材の養成、コンサルテーションを行う指導的人材の確保、地域の関係機関との協力体制の仕組みづくり、これらを行う支援現場の負担感や孤立感の解消に役立つICTの活用、QOLにも目を向けたICFの活用等が先行研究等により整理されている。
本研究は、上記の点を基に強度行動障害者支援のための指導的人材の確保・養成および地域支援体制構築のためのモデルを整理し、モデルの試行・検証を行い、社会実装に向けたプロセスを明らかにすることを目的とした。
令和4年度は、強度行動障害に関する各地域の人材養成および支援体制の実態把握を行い、指導的人材の養成モデル、地域支援体制を強化するためのプロセスを検討することを目的とした。
研究方法
以下3つの調査研究を行った。
(1)強度行動障害に関する人材養成の現状および指導的人材の要素を明らかにし、指導的人材の養成モデルを検討することを目的に、14自治体を対象にヒアリング調査を行った。
(2)強度行動障害に関する地域支援体制の現状を把握し今後の地域支援体制強化を行うための標準的なプロセスを明らかにすることを目的に、14自治体を対象にヒアリング調査を行った。
(3)令和3年度に国立のぞみの園が開発したICF・ICTを活用した強度行動障害PDCA支援パッケージ(以下、支援パッケージ)の社会実装をするため、実践検討意見交換会を開催し、実践検討意見交換会に参加した障害福祉サービス事業所20カ所を対象に支援パッケージの試行とアンケート調査を行った。
(1)強度行動障害に関する人材養成の現状および指導的人材の要素を明らかにし、指導的人材の養成モデルを検討することを目的に、14自治体を対象にヒアリング調査を行った。
(2)強度行動障害に関する地域支援体制の現状を把握し今後の地域支援体制強化を行うための標準的なプロセスを明らかにすることを目的に、14自治体を対象にヒアリング調査を行った。
(3)令和3年度に国立のぞみの園が開発したICF・ICTを活用した強度行動障害PDCA支援パッケージ(以下、支援パッケージ)の社会実装をするため、実践検討意見交換会を開催し、実践検討意見交換会に参加した障害福祉サービス事業所20カ所を対象に支援パッケージの試行とアンケート調査を行った。
結果と考察
(1)ヒアリング調査の結果、強度行動障害支援者養成研修に加えて、フォローアップの意味合いを持つ人材養成を行っていたのは8自治体であり、その取り組みは① 知識・技術を補う研修、② 事例検討を中心とした研修、③ 支援現場でコンサルテーションを受ける研修の3タイプに整理できた。自治体職員および実践者が考える指導的人材に求める要素は、主に① 組織のアセスメント力、② 組織のマネジメント力、③ 幅広い現場経験の3つであった。
今後の指導的人材の養成に関して、事業所の強度行動障害者支援の中心となる中核的人材が、地域の中核的人材養成研修の講師やコンサルタントとなっていくというルートを描き、コンサルタントの現場指導に同行しスキルを高めていく形の人材養成が現実的な方法であると考えられた。
(2)ヒアリング調査の結果を、先行研究において示された地域支援体制整備のポイントを基にまとめた。地域支援体制構築に関する課題としては、① 地域の中で協力者の確保が難しいこと、② 事業所内で十分なサポートが行われていないこと、③ 財政的な部分での基盤が弱いなどの点があげられた。
調査に協力が得られた自治体の範囲では、強度行動障害者支援の地域支援体制整備を重要な課題として捉えており、家族や支援者の孤立を招かないことを目的とする取り組みを行っていた。一方、人材や財源の確保が難しいこと、自治体内の仕組みの問題等により事業等の推進力が思うように得られない現状もあり、多くの自治体の取り組みをデータベース化し、広く共有できるようにすることへのニーズが高いと考えられた。
(3)アンケート調査の結果、支援パッケージ全体の評価について、効果的と回答したのは86.4%であった。支援パッケージの効果として「根拠となる情報がでてきて、情報共有するときも納得しながら進められた」、社会実装に向けた課題・改善点として「労力的に負担が大きいこと、内容的に難しく感じる職員も多く、取り組みが十分に進まなかった」「QOL支援と行動問題支援の同時並行は負担が大きい。まずは、QOL支援(ICFの作成)、次に行動問題支援の記録とすることが必要」等の回答があった。
アンケート調査の結果、強度行動障害者支援に対し、支援パッケージの活用は有用であることがうかがえた。今後の普及に向けて、事業所における実践のフォローアップの必要性等もあげられ、支援パッケージの内容についても、改善と負担の少ない導入方法等継続的に検討していく必要があると考えられた。
今後の指導的人材の養成に関して、事業所の強度行動障害者支援の中心となる中核的人材が、地域の中核的人材養成研修の講師やコンサルタントとなっていくというルートを描き、コンサルタントの現場指導に同行しスキルを高めていく形の人材養成が現実的な方法であると考えられた。
(2)ヒアリング調査の結果を、先行研究において示された地域支援体制整備のポイントを基にまとめた。地域支援体制構築に関する課題としては、① 地域の中で協力者の確保が難しいこと、② 事業所内で十分なサポートが行われていないこと、③ 財政的な部分での基盤が弱いなどの点があげられた。
調査に協力が得られた自治体の範囲では、強度行動障害者支援の地域支援体制整備を重要な課題として捉えており、家族や支援者の孤立を招かないことを目的とする取り組みを行っていた。一方、人材や財源の確保が難しいこと、自治体内の仕組みの問題等により事業等の推進力が思うように得られない現状もあり、多くの自治体の取り組みをデータベース化し、広く共有できるようにすることへのニーズが高いと考えられた。
(3)アンケート調査の結果、支援パッケージ全体の評価について、効果的と回答したのは86.4%であった。支援パッケージの効果として「根拠となる情報がでてきて、情報共有するときも納得しながら進められた」、社会実装に向けた課題・改善点として「労力的に負担が大きいこと、内容的に難しく感じる職員も多く、取り組みが十分に進まなかった」「QOL支援と行動問題支援の同時並行は負担が大きい。まずは、QOL支援(ICFの作成)、次に行動問題支援の記録とすることが必要」等の回答があった。
アンケート調査の結果、強度行動障害者支援に対し、支援パッケージの活用は有用であることがうかがえた。今後の普及に向けて、事業所における実践のフォローアップの必要性等もあげられ、支援パッケージの内容についても、改善と負担の少ない導入方法等継続的に検討していく必要があると考えられた。
結論
本研究により、①強度行動障害支援者養成研修以後の人材養成の現状把握とともに、今後の指導的人材の養成に関する検討、②強度行動障害者支援に関する地域支援体制の整備の一端の把握、③支援パッケージの社会実装に向けた改善点等の把握等を行うことができた。この結果を踏まえ、次年度指導的人材の養成に向けた更なる検討と研修の試行、地域支援体制構築のための自治体等を対象とした追加調査、情報収集等を実施していく。
公開日・更新日
公開日
2025-05-29
更新日
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