補装具費支給制度等におけるフォローアップ体制の有効性検証のための研究

文献情報

文献番号
202218037A
報告書区分
総括
研究課題名
補装具費支給制度等におけるフォローアップ体制の有効性検証のための研究
課題番号
22GC1010
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
高岡 徹(社会福祉法人 横浜市リハビリテーション事業団 横浜市総合リハビリテーションセンター)
研究分担者(所属機関)
  • 樫本 修(宮城県リハビリテーション支援センター)
  • 菊地 尚久(千葉県千葉リハビリテーションセンター 診療部)
  • 中村 隆(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所義肢装具技術研究部)
  • 芳賀 信彦(国立障害者リハビリテーションセンター  自立支援局)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
12,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 補装具のフォローアップに関する有効性のある方策を地域レベルで構築することを目的として、フォローアップ方策の有効性の調査及び試行を実施した。
研究方法
(1) 身体障害者更生相談所(以下、更生相談所)に関する調査:①宮城県:現在実施しているはがきを用いたフォローアップ事業について、改めて利用者と補装具製作事業者へアンケートを行い、本事業の有用性を検証した。②横浜市:更生相談所が主体となって地域リハビリテーション協議会を開催し、「補装具」をテーマとした検討会を立ち上げ、年間を通じて実施した。その中で、地域の回復期リハビリテーション病院(26か所)への調査を実施した。③北九州市:令和2年に開始した補装具管理手帳のさらなる普及を図るとともに、研修会を実施した(2022年11月25日実施)。④熊本県・市:専門職に対する補装具制度の関する研修会を実施した(2022年11月26日実施)。⑤横浜市・宮城県・熊本県における関係者の座談会開催:横浜市(2022年8月5日開催)、宮城県(2022年9月9日開催)、熊本県(2022年11月26日開催)において更生相談所、市町村職員、補装具製作事業者、医療機関等の専門職に参集してもらい、各地域における現状と課題、今後の取組みについての議論を行った。
(2) 医療機関(回復期リハビリテーション病院)(菊地):千葉県内の回復期リハビリテーション病院62病院のうち、リハビリテーション外来を設置している18病院に対する調査を行い、7病院からの回答を得た。
(3) 利用者啓発・支援:①障害当事者による有効利用の促進(中村):2023年3月5日に第4回の義手ミーティングを実施した。また、過去3回のミーティングについて参加者の傾向やアンケート調査をまとめ、分析を行った。②補装具利用者支援のための資料作成(芳賀):今年度は「患者参加型医療」に関する資料や文献を収集し、その分析を行った。次年度以降の資料作成に向けて検討を行った。
(4)シンポジウムの開催(高岡、樫本、菊地、中村、芳賀): 2023年2月18日に「第3回補装具の効果的なフォローアップに関するシンポジウム」をオンライン形式で開催した。例年と同様、全国から200名近い参加があり、130名からアンケートの回答が得られた。
結果と考察
 更生相談所が主体となって補装具のフォローアップに関与する手法として、宮城県、横浜市、北九州市における実践を明示し、有効性を検証した。宮城県の調査からは、補装具フォローアップの機会が定期的に与えられることは利用者にとって有用であり、事業者も行政が要になって行う補装具フォローアップに対して協力的な意向が多いことがわかった。一方で、業務負担やフォローアップの対価に関する問題は大きかった。横浜市における既存の地域リハビリテーション協議会の仕組みを利用した検討会の実施は、他の地域においても設置・開催が可能と思われ、有効な手法のひとつとなりうると考えた。また、北九州市の補装具管理手帳の有用性は高いと考えたが、さらなる普及を図るためには計画的・継続的支援が必要であった。補装具に関する研修会は参加者のアンケートでも有用性が高く、補装具制度やフォローアップの必要性の認識を継続して広めていく必要があると考えた。
 回復期リハビリテーション病院の調査では、回答のあった病院の全てで装具に関するフォローアップを行っていたが、全例のフォローアップを行えている施設はなく、退院後定期的に外来受診を行っている患者に限る施設が多かった。退院後の外来診療そのものが実施しにくい現状に加え、更生用装具が更生相談所による直接判定しか認められないことなどに課題があった。
 利用者啓発・支援の観点からは、障害当事者による補装具の有効利用の促進を目的に、第4回の義手ミーティングを実施した。過去3年間にわたって実施してきた義手ミーティングの参加者等の分析を行い、医療職を通じた情報提供と動画配信サイト等を利用した情報共有の場を有効活用する必要があると考えた。また、補装具のフォローアップにおいて更生相談所や製作事業者等が体制を整えたとしても、利用者自身が自分の補装具不具合等に気づくことが適切な対応につながる可能性を高めることは明らかである。利用者に対する資料作成をする目的で、医療安全の考え方を取り入れ、「患者参加型医療」に関する資料の検討も実施した。
結論
 補装具フォローアップは、利用者本人を含めた多職種・多機関による多層的な仕組みの構築が必要である。本研究で各地・各機関で実施されている補装具のフォローアップに関する手段の具体的な方法を提示し、その有用性を明らかにできたことは意義があると考える。次年度は有効な仕組みをモデルとして整理し、地域の実情に応じた形で構築可能となるものとして示したい。

公開日・更新日

公開日
2023-06-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し
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倫理審査等報告書の写し
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2023-06-20
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202218037Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
15,000,000円
(2)補助金確定額
14,077,000円
差引額 [(1)-(2)]
923,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,251,774円
人件費・謝金 2,414,065円
旅費 2,101,729円
その他 5,310,065円
間接経費 3,000,000円
合計 14,077,633円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2024-05-28
更新日
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