ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)を用いた悪性胸膜中皮腫に対する効果的治療法の開発研究

文献情報

文献番号
200918036A
報告書区分
総括
研究課題名
ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)を用いた悪性胸膜中皮腫に対する効果的治療法の開発研究
課題番号
H21-臨床・一般-009
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
小野 公二(京都大学)
研究分担者(所属機関)
  • 中川 和彦(近畿大学医学部)
  • 中野 孝司(兵庫医科大学)
  • 平塚 純一(川崎医科大学医学部)
  • 奥村 明之進(大阪大学大学院医学系研究科)
  • 切畑 光統(大阪府立大学大学院生命環境科学研究科)
  • 櫻井 良憲(京都大学原子炉実験所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(臨床研究・予防・治療技術開発研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
40,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
悪性胸膜中皮腫(MPM)は三次元的に非常に複雑な病巣形状を呈し、高精度放射線治療の技術の応用が困難で斬新な放射線治療開発が切望されている。B-10原子核は中性子と反応し細胞径を超えない飛程のα粒子を放出する。従って、B-10が癌細胞に選択的に集積すれば選択的に癌細胞を破壊できる。京大炉では高度進展MPMにB-10化合物BPAを投与したBNCTで腫瘍の縮退と速やかな肋間神経痛の消失を得た症例を経験した。この経験と諸報告に基づき臨床研究を計画・推進し、MPMを対象とする加速器BNCTの治験の基礎を固めることを目的とする。
研究方法
BNCT研究は学際的研究故に、放射線腫瘍学者、呼吸器学・腫瘍内科学者、有機合成化学者、医学物理学者による研究の共同と分担の体制を構築する。
臨床研究者を中心に、京大炉で行った胸部悪性腫瘍に対するBNCTの経験や基礎研究に基づいて、治療プロトコールの骨格を定め、臨床研究情報センターの支援を受けて、多施設共同臨床試験研究計画書に纏め上げる。
MPMへのBPA集積に関する知見は僅少であるので、18F-BPA PETによる検索と胸部での中性子分布のシミュレーション結果を総合して臨床研究へのエントリー基準を定める。正確な線量評価にはB-10とBPAの濃度評価も不可欠で、我々が考案した測定法の検証を実験犬で行う。更に、原子炉に替わる開発中の加速器中性子源のビーム特性を物理測定および細胞・実験動物を用いた生物学的評価で明らかにする。
結果と考察
少数の胸部悪性腫瘍BNCTの自験例、基礎実験、文献調査に基づいて、完成体に近い臨床研究計画書(プロトコール)を作成した。BPAの取り込みを18F-BPA PETで検索した結果と中性子分布シミュレーションから、患者のエントリー基準は18F-BPA PETでの腫瘍と血液の放射能比≧2.25が妥当であること判明した。血中BPA濃度の簡便測定法を開発し、その利便性と特にBPAと異なる硼素化合物を併用した際の弁別測定の有用性をイヌとJRR4で実施の脳腫瘍BNCT例の血液試料で確認した。開発中の加速器中性子源の中性子RBEは2.2-2.7と判明した。原子炉中性子のそれ(RBE=3.0)よりもやや小さい値だが、中性子エネルギーを勘案すると妥当な値である。
結論
平成21年度研究と京大炉の6月再稼働のよりMPMのBNCT臨床研究に向けての条件が基本的に整った。平成22年度の前半には多施設共同の臨床研究を開始できる。加速器中性子源に関しては、物理学的・放射線生物学的なビーム特性を略把握できた。

公開日・更新日

公開日
2011-05-31
更新日
-