障害福祉サービス等における高次脳機能障害者の支援困難度の評価指標についての研究

文献情報

文献番号
202218034A
報告書区分
総括
研究課題名
障害福祉サービス等における高次脳機能障害者の支援困難度の評価指標についての研究
課題番号
22GC1007
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
深津 玲子(国立障害者リハビリテーションセンター 病院)
研究分担者(所属機関)
  • 今橋 久美子(藤田 久美子)(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所 脳機能系障害研究部)
  • 鈴木 智敦(名古屋市総合リハビリテーションセンター)
  • 数井 裕光(高知大学 教育研究部医療学系臨床医学部門)
  • 川上 寿一(滋賀県立リハビリテーションセンター)
  • 小西川 梨紗(滋賀県高次脳機能障害支援センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
9,080,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日常生活上の支援に困難のある高次脳機能障害者であっても、共同生活援助の重度障害者支援加算の要件を満たせない実態があることから、同障害の支援困難度を適正に評価できる指標の開発は喫緊の課題である。本研究は、高次脳機能障害のうち特に支援上の困難となる社会的行動障害の評価指標を作成し、その検証を行い、新たな支援困難度評価を提案することを目的とする。
研究方法
1) 高次脳機能障害、認知症、強度行動障害等の支援における専門家によって構成された研究班で、現行の障害支援区分認定調査項目中活用できる項目の特定、その他追加項目を検討し、新たな支援困難度評価表案を作成。
2) 1)の評価表を用いて、障害福祉サービス等を提供している6事業所で、高次脳機能障害利用者1名について支援者2名(専門職)が、利用記録等に基づき評価。
3) 2)で収集した支援困難度評価表の評価と現行の障害支援区分との関連を調査。同じケースを2人の専門職が別々に評価した結果をもとに、同評価の信頼性を検証し、類似尺度である「脳外傷者の認知-行動障害尺度(TBI-31)」のデータと今回の評価との相関分析により妥当性を検証。
評価は支援に従事する専門職が回答し、利用者の個人情報は取り扱わない。研究は国立障害者リハビリテーションセンターおよび所属機関の倫理審査委員会の承認を得たうえで行う。
結果と考察
1) 支援困難度評価表案の作成;知的障害児・自閉症児を対象とした強度行動障害判定基準、認知症高齢者を対象とした日常生活自立度判定基準、Neuropsychiatric inventory、Zarit 介護負担尺度などの評価尺度等を基に評価項目の検討を行い、現行の障害者支援区分認定調査項目のうち行動障害に関連する34項目に新たに9項目を加え43項目とした。各項目を「必要な支援の頻度(支援が不要、まれに支援が必要、月に1回以上支援が必要、週に1回以上の支援が必要、週に5日以上の支援が必要、の5段階)」「重症度;本人への影響(なし、軽度、中等度、重度、の4段階)」「介護負担度;周囲への影響(まったくなし、軽度、中等度、重度、の4段階)」「介入による変化(介入が不要、どのような人の介入でも一定の変化がみられる、特定の人の介入で変化がみられる、どのような人の介入でも変化が見られない、の4段階)」の4つの評価をする表を作成した。評価43項目は、被害的・拒否的、作話、感情が不安定、昼夜逆転、暴言暴行、同じ話をする、大声・奇声を出す、支援の拒否、徘徊、落ち着きがない、外出して戻れない、1人で出たがる、収集癖、物や衣類を壊す、不潔行為、異食行動、ひどい物忘れ、こだわり、多動・行動停止、不安定な行動、自らを傷つける行為、他人を傷つける行為、不適切な行為、突発的な行動、過食・反すう等、そう鬱状態、反復的行動、対人面の不安緊張、意欲が乏しい、話がまとまらない、集中力が続かない、自己の過大評価、集団への不適応、多飲水・過飲水、散財、借金、退行、自己中心的、万引き・盗み、家宅侵入、危険な運転、過剰な正義感、拒食。
2) 1)の支援困難度評価表を用いて高次脳機能障害者の支援者による評価データの収集;令和4年度末までに101事例(支援者2名で評価95事例、1名で評価6事例)のデータを収集した。
3) 2)で収集したデータの解析;途中経過として、令和4年12月までに収集した事例(支援者2名で評価45事例、1名で評価10事例)データについて、「介護負担度」と「介入による変化」の各項目評価を、0×人数+1×人数+2×人数+3×人数で重みづけした得点を算出し、介護負担度が大きい項目は「こだわり」「感情が不安定」「話がまとまらない」「ひどい物忘れ」「自己の過大評価」であった。また、これらの項目は介入による変化がほとんど見られない項目でもあった。一方、障害支援区分との相関関係が弱い項目は、「過剰な正義感」「自らを傷つける行為」「万引き、盗み」「自己の過大評価」「不安定な行動」であり、これら項目は現行の認定調査でとらえにくいことが示唆された。今年度は収集した101事例についてデータ解析を進めるとともに、信頼性・妥当性の検討も行う。当初研究計画書では4年度までに支援困難度評価表を作成し、5年度にデータ収集としていたが、前倒しに開始し、4年度中に目標である100事例のデータ収集を終了し、4年度目標以上の達成である。5年度に分析を進め、高次脳機能障害の支援困難度を適正に評価できる指標を開発する。
結論
高次脳機能障害の障害特性に応じた支援困難度を適正に評価できる支援困難度評価表を作成し、試用した。今後は分析を進め、高次脳機能障害の支援困難度を適正に評価できる指標を開発し、家庭や社会での生活が困難な者が、適切な支援を十分に受けられる体制構築に寄与する。

公開日・更新日

公開日
2023-06-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-06-20
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202218034Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
10,000,000円
(2)補助金確定額
4,400,000円
差引額 [(1)-(2)]
5,600,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,602,716円
人件費・謝金 737,043円
旅費 300,238円
その他 1,070,003円
間接経費 690,000円
合計 4,400,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2024-02-08
更新日
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