抗パーキンソン病薬(ドーパミン作動薬)のうつ病への有効性を検証するプロトコールの作成

文献情報

文献番号
200918030A
報告書区分
総括
研究課題名
抗パーキンソン病薬(ドーパミン作動薬)のうつ病への有効性を検証するプロトコールの作成
課題番号
H21-臨床研究・一般-003
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
功刀 浩(国立精神・神経センター 神経研究所 疾病研究第三部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(臨床研究・予防・治療技術開発研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
9,990,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
従来の抗うつ薬には反応しない治療抵抗性うつ病に対して、より効果的な治療法を開発することは重要な課題である。うつ病の病態生理にドーパミン神経系の機能不全が関与していることが知られており、本研究は、パーキンソン病にしか保険適応されていないドーパミン作動薬のうつ病、とくに治療抵抗性うつ病に対する有効性・安全性を検証する予備的な臨床試験を開始して効果を検討するとともに、より厳密な臨床試験のプロトコールを作成することを目的とする。
研究方法
①抗パーキンソン病薬(ドーパミン作動薬カベルゴリン、プラミペキソールなど)によるオープン試験を行い、その有効性や忍用性に関する予備的データを収集した。②オープン試験によって明らかになった有効性・忍容性をもとに至適用量と比較に必要な被験者数を推定し、これまでの文献も参考にして22年度以降にRCTを行うためのプロトコールを作成した。③カベルゴリンについて前臨床試験による検討も行った。
結果と考察
①プラミペキソールの投与によって、治療抵抗性うつ病患者の重症度が大きく改善し(治療前21.4 ⇒治療後7.5;P=0.002)、半数以上が寛解に至った。忍用性も比較的高かった。②この結果に基づいて、多施設共同研究「難治性うつ病を対象とした抗パーキンソン病薬(ドーパミン作動薬)の無作為化比較対照試験」のプロトコールを作成した。③カベルゴリンは慢性投与で抗うつ効果と抗不安効果があることが示唆された。そのメカニズムにおいて脳由来神経栄養因子シグナルが関与することが示唆された(Psychopharmacology印刷中)。
結論
①オープン試験により、ドーパミン作動薬は治療抵抗性うつ病相に有効であること、安全性、忍用性も比較的高いことが示唆された。②作成したプロトコールによる多施設RCTによって、ドーパミン作動薬の効果、安全性が明らかになり、ゲノム情報を用いたテーラーメイド医療が可能になれば、テーラーメイド医療に基づく治験を行う根拠となる。治験によって承認されれば、うつ病患者の早期社会復帰、自殺者減少、医療費削減など、国民の医療・福祉に大きく貢献する。③前臨床研究の結果は、治療抵抗性うつ病におけるドーパミン作動薬の有効性を支持すると共に、メカニズムの一端を明らかにした。

公開日・更新日

公開日
2011-05-31
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200918030C

成果

専門的・学術的観点からの成果
我が国におけるドーパミン作動薬の治療抵抗性うつ病に対するエビデンスは非常に乏しかったが、オープン試験によって非常に有効であることを強く示唆する結果を得ており、本研究結果は非常にインパクトが強いものであると考えている。また、前臨床試験によってドーパミン作動性薬物が抗うつ・抗不安効果をもち、その際、脳由来神経栄養因子シグナルが関与することを示したのも新しい。
臨床的観点からの成果
ドーパミン作動薬が治療抵抗性うつ病に有効であることを示したことは、臨床的にも重要な成果である。また、オープン試験や文献検討で得られた情報に基づいて、選択基準、用量、必要症例数、エンドポイント等を設定することにより、「難治性うつ病を対象とした抗パーキンソン病薬(ドーパミン作動薬)の無作為化比較対照試験」のプロトコールを作成した。これによって厳密なエビデンスが得られ、承認申請されれば、多くのうつ病患者の福音となろう。
ガイドライン等の開発
ドーパミン作動薬は今のところ抗うつ薬の治療ガイドラインには入っていない。しかし、本研究結果に基づいてさらにエビデンスが蓄積されれば、治療抵抗性うつ病への極めて有効な治療薬としてガイドラインに組いられることが予想される。
その他行政的観点からの成果
ドーパミン作動薬はパーキンソン病薬にしか適応が承認されていないが、今後、うつ病などに適応拡大することを考慮させるための基礎となる成果である。
その他のインパクト
精神医学的なインパクトは非常に高いと考えられ、研究終了時点で、本研究に基づいた研究代表者による少なくとも3回の特別講演を予定している。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
2件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
3件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Chiba S, Numakawa T, Ninomiya M et al.
Cabergoline, a dopamine receptor agonist, has an antidepressant-like property and enhances brain-derived neurotrophic factor signaling
Psychopharmacology  (2010)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-