医療観察法における専門的医療の向上と普及に資する研究

文献情報

文献番号
202218020A
報告書区分
総括
研究課題名
医療観察法における専門的医療の向上と普及に資する研究
課題番号
21GC1012
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
平林 直次(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 病院 司法精神診療部)
研究分担者(所属機関)
  • 大鶴 卓(独立行政法人国立病院機構 琉球病院)
  • 村杉 謙次(独立行政法人国立病院機構 小諸高原病院)
  • 壁屋 康洋(独立行政法人国立病院機構 榊原病院)
  • 五十嵐 禎人(国立大学法人 千葉大学 社会精神保健教育研究センター)
  • 岡田 幸之(国立大学法人 東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 精神行動医科学分野)
  • 河野 稔明(国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 地域精神保健・法制度研究部)
  • 竹田 康二(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 病院 司法精神診療部)
  • 今村 扶美(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 病院 臨床心理部 臨床心理室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
7,308,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の主たる目的は、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律(以下、医療観察法)の対象者全体を類型化し、それぞれに応じた処遇のあり方や転帰・予後を明らかにすること、喫緊の課題である入院および通院複雑事例に関する調査や、治療・処遇方法を開発することである。
研究方法
研究代表者は、2回の研究班会議を開催し、研究分担班同士の情報共有をはかり、研究を進めた。グループ1(大規模調査)では、データベース事業の入院データベースを利活用する研究事業(利活用研究事業)からデータ提供を受け、令和3年度に作成したデータセットの解析を行った。また、指定通院医療機関を対象とした全国調査を実施した。グループ2(事例研究)では、令和3年度に続いて事例の収集を進め、複雑事例の治療や処遇に関する分析を進め、各種の成果物をまとめた。
分担研究班の構成
グループ1(大規模調査)
a 医療観察法対象者の類型化に関する研究(河野班)
b 指定入院医療機関退院後の予後に関する全国調査(竹田班)
c 頻回/長期行動制限を受けた対象者の全国調査(壁屋班)
グループ2(事例研究)
d 入院複雑事例に対する効果的な治療や介入方法に関する研究(村杉班)
e 施設内および施設間のコンサルテーションの実施方法に関する研究(今村班)
f直接通院の実態および通院処遇複雑事例の特徴に関する全国調査(大鶴班)
g 医療観察法再鑑定の必要性に関する調査および検討(五十嵐班)
h 医療観察法鑑定書の作成方法に関する研究(岡田班)
結果と考察
主診断で分割した対象者集団ごとのTwoStepクラスター分析で、臨床的意義の高いクラスターが生成されるモデルが抽出された。それらに基づき、12の基本類型が抽出された。
薬物療法により入院対象者を群分けすると、クロザピン群は平均入院期間が4.8年と長く、入院期間中の隔離経験率が47.6%と高かった。また持効性注射剤群は通院処遇移行者の割合が95.5%と高かった。高齢者では処遇終了と同時に精神保健福祉法入院となる傾向が認められた。処遇終了と同時に精神保健福祉法入院となる場合、F0、F1、F7では早期に処遇終了していた。また指定入院医療機関ごとに処遇終了率にばらつきが認められた。
通院複雑事例は、「アドヒアランス不良群」「通院複雑事例中核群」「自傷・自殺リスク群」の3群に分類された。医療観察法処遇終了後5年間の予後調査では、すべての問題行動の発生は通院処遇終了後、増えることはなかった。通院処遇終了後3年間は重大な他害行為の発生はなく、終了後5年間で96名中1名、1件であった。CLZ治療継続率はLAIによる治療継続率よりも高かった。
グループ2(事例研究)では、令和3年度に続いて事例の収集を進め、複雑事例の治療や処遇に関する分析を進め、各種の成果物をまとめた。指定入院医療機関の施設の枠組みを超えた転院トライアル、コンサルテーションの事業化を想定し、事務局の機能モデルを作成し活用しうるものであることを確認した。医療観察法の鑑定書を提出する際にまとめとして添付する「鑑定書総括用書式」を作成することを提案し、その作成方法の解説および作成例を提示した。
結論
データベース事業により構築されたデータベースは、臨床及び研究において有効に活用されており、引き続き事業を継続することにより多大な成果が期待される。
指定入院医療機関の施設の枠組みを超えた転院トライアル、コンサルテーションの事業化を推進することにより、指定医療機関の医療の均てん化、向上が期待される。
「鑑定書総括用書式」を用いることにより、医療観察法の審判に視する鑑定の実施が期待される。

公開日・更新日

公開日
2023-09-07
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2023-09-25
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202218020B
報告書区分
総合
研究課題名
医療観察法における専門的医療の向上と普及に資する研究
課題番号
21GC1012
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
平林 直次(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 病院 司法精神診療部)
研究分担者(所属機関)
  • 大鶴 卓(独立行政法人国立病院機構 琉球病院)
  • 村杉 謙次(独立行政法人国立病院機構 小諸高原病院)
  • 壁屋 康洋(独立行政法人国立病院機構 榊原病院)
  • 五十嵐 禎人(国立大学法人 千葉大学 社会精神保健教育研究センター)
  • 岡田 幸之(国立大学法人 東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 精神行動医科学分野)
  • 河野 稔明(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 地域精神保健・法制度研究部)
  • 竹田 康二(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 病院 司法精神診療部)
  • 今村 扶美(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 病院 臨床心理部 臨床心理室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の主たる目的は、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律(以下、医療観察法)の対象者全体を類型化し、それぞれに応じた処遇のあり方や転帰・予後を明らかにすること、喫緊の課題である入院および通院複雑事例に関する調査や、治療・処遇方法を開発することである。
研究方法
研究代表者は、8つの分担研究班を編成し、グループ1ではデータベース事業のデータを主に利活用し入院および通院処遇に関する大規模調査を実施した。グループ2では複雑事例の治療や処遇に関する主に事例研究を行った。
分担研究班の構成
グループ1(大規模調査)
a 医療観察法対象者の類型化に関する研究(河野班)
b 指定入院医療機関退院後の予後に関する全国調査(竹田班)
c 頻回/長期行動制限を受けた対象者の全国調査(壁屋班)
グループ2(事例研究)
d 入院複雑事例に対する効果的な治療や介入方法に関する研究(村杉班)
e 施設内および施設間のコンサルテーションの実施方法に関する研究(今村班)
f直接通院の実態および通院処遇複雑事例の特徴に関する全国調査(大鶴班)
g 医療観察法再鑑定の必要性に関する調査および検討(五十嵐班)
h 医療観察法鑑定書の作成方法に関する研究(岡田班)
結果と考察
グループ1(大規模調査)では、重度精神疾患標準的治療法確立事業(データベース事業)のデータを利活用し、入院対象者の類型化(河野班)、退院後の予後に関連する要因の抽出(入院データベースと予後調査の連結)(竹田班)、入院複雑事例の特徴と関連する要因の抽出(壁屋班)を行った。その結果、入院対象者の12類型、入院複雑事例を含む処遇終了と同時に精神保健福祉法入院となる対象者の特徴(年齢、F0、F1、F7との関係)、退院時の薬物療法と転帰や予後との関係が明らかとなった。通院複雑事例は3群に分類された(大鶴班)。社会復帰関連指標は入院複雑事例と通院複雑事例に共通の特徴であり、重症度の指標、治療の焦点化や進捗の指標としての活用が可能と考えられた。
グループ2(事例研究)では、事例の収集を進め、複雑事例の治療や処遇に関する分析を進め、各種の成果物をまとめた。大規模調査の結果から指定入院医療機関の治療や処遇判断は一様ではなく、指定入院医療機関の施設横断的試み「転院トライアル、SDM with CF (Shared Decision Making with Case Formulation)、コンサルテーション」によるばらつきの解消の重要性が指摘された(村杉班、今村班)。治療や処遇判断のばらつきの解消を目的として、施設横断的試みを臨床実践するためのツールや機能モデルを開発し、事業化のための準備を整えた(今村班)。また、処遇判断においては治療反応性の評価が重要であり、52条鑑定の積極的利用や(五十嵐班)、鑑定書作成に当たっては「鑑定書総括用書式」や「手引き」を使用することにより、処遇判断のばらつきの軽減が期待された(岡田班)。
結論
○入院対象者の類型化を基に個別性の高い治療・処遇のクリティカルパスを示す必要がある。
○通院複雑事例については、類型化に応じた処遇のあり方や治療技術を開発し、臨床応用する必要がある。
○転院トライアル、コンサルテーション、SDM with CF、ブロック会議などの施設横断的な試みを促進する事務局を設置し、指定入院医療機関のいわゆる“ピアレビュー事業”に組み込み、臨床実践することが期待される。
○社会復帰関連指標は入院および通院対象者の重症度の指標、治療の焦点化や進捗の指標として活用可能である。
○入院継続および退院許可の申立てでは、治療反応性の評価がもっとも重要であり、治療が尽くされていることを確認するために他の指定入院医療機関によるコンサルテーションの活用や52条鑑定の積極的な実施が望まれる。

公開日・更新日

公開日
2023-09-07
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-09-25
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202218020C

収支報告書

文献番号
202218020Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
9,500,000円
(2)補助金確定額
9,500,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,485,536円
人件費・謝金 1,650,759円
旅費 283,420円
その他 2,888,285円
間接経費 2,192,000円
合計 9,500,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2024-03-27
更新日
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