文献情報
文献番号
202218019A
報告書区分
総括
研究課題名
退院後の地域生活を見据えた切れ目ない診療モデルの普及と地域生活支援体制の構築に向けた研究
課題番号
21GC1011
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
伊豫 雅臣(国立大学法人千葉大学 大学院医学研究院)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
8,310,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の目的は精神医療機関を対象とした調査を行い、「精神障害者にも対応した地域包括ケアシステムの構築」に資する精神医療機関の最適な人的配置や地域との連携の普及に向けた診療モデルの構築とそれを実現するための診療報酬への提案をすることである。そのために我々は、令和3年度に本邦の精神科救急入院料病棟(以下、精神科救急病棟)を有する全国の医療機関を対象に、各医療機関における多職種の人員配置や地域との連携に効果的な治療プログラムと退院後の地域生活日数との関係を明らかとするためのアンケート調査を行なった。その結果から好事例施設を抽出し、同施設の長期入院患者への地域移行への取り組みについて実態把握を行った。また、千葉大学病院を対象に1年以上の入院を要したものの臨床特徴を調べた。
研究方法
アンケート調査を用いた横断研究を実施し、主要アウトカムとして対象施設退院後の地域における平均生活日数や対象施設の人員配置、地域移行・地域定着に資する取り組みを把握する。対象施設は日本精神科救急学会所属179施設を対象とする。主要アウトカムは対象施設の精神科救急病棟に入院した患者の「退院後1年以内の地域における平均生活日数(以下、地域平均生活日数)」とした。副次的評価項目として、対象施設の人員配置、地域移行・地域定着への取り組みの実態を把握することとした。
さらに「精神障害者にも対応した地域包括ケアシステムの構築」に資する人的配置や地域との連携に取り組んでいる施設を好事例施設として抽出し診療実績調査およびヒアリング調査と実施した。
さらに「精神障害者にも対応した地域包括ケアシステムの構築」に資する人的配置や地域との連携に取り組んでいる施設を好事例施設として抽出し診療実績調査およびヒアリング調査と実施した。
結果と考察
対象施設179施設のうち82施設から回答を得た(回答率45.8%)。精神科救急病棟と精神科急性期治療病棟における3か⽉以内在宅移⾏率は77%を超え、診療報酬の規程の60%基準を⼤きく上回っており、地域移⾏率が⾼いことが確認された。対象施設の精神科救急病棟に入院した患者(n=3,113)の地域平均生活日数は、329.84日(標準偏差、±73.15)であり、第6期障害福祉計画の目標値である地域平均生活日数316日以上であった。精神科救急病棟における精神保健福祉士(PSW)の平均担当患者数は、地域平均生活日数と負の相関を示し、平均在院日数と正の相関を示すことが明らかとなり、PSWの負担が大きいと地域平均生活日数が短くなり、平均在院日数が長くなることが明らかとなった。
本邦の精神科病床の機能別割合は精神科救急入院料病棟病床数1万床に対して、精神科療養病棟病床数9.5万床(精神保健福祉資料(平成29年度))であり、精神科療養病床における地域移行、地域支援に資する取り組みを明らかとすることは診療モデルの構築に不可欠となる。
精神科救急病棟併設されている精神科療養病棟では、精神科救急病棟で実施されている長期入院防止、入院患者の地域移行への取り組みが講習会や人事交流によって医療者に共有され、精神科療養病棟に特化した方法で入院患者に提供されている可能性がある。令和5年度は精神科級救急病棟に併設されている精神科療養病棟または地域移行機能強化病棟での長期入院患者の地域移行、地域定着に焦点を絞り、同病棟での活動を明らかとするために横断研究等を実施する。
千葉大学病院で1年以上の入院を要した者は治療抵抗例でクロザピンや修正型電気けいれん療法が有効であった。また精神病症状を伴う躁病と統合失調症の鑑別を行うことによって症状が改善し退院に結び付けられる可能性が示唆された。
本邦の精神科病床の機能別割合は精神科救急入院料病棟病床数1万床に対して、精神科療養病棟病床数9.5万床(精神保健福祉資料(平成29年度))であり、精神科療養病床における地域移行、地域支援に資する取り組みを明らかとすることは診療モデルの構築に不可欠となる。
精神科救急病棟併設されている精神科療養病棟では、精神科救急病棟で実施されている長期入院防止、入院患者の地域移行への取り組みが講習会や人事交流によって医療者に共有され、精神科療養病棟に特化した方法で入院患者に提供されている可能性がある。令和5年度は精神科級救急病棟に併設されている精神科療養病棟または地域移行機能強化病棟での長期入院患者の地域移行、地域定着に焦点を絞り、同病棟での活動を明らかとするために横断研究等を実施する。
千葉大学病院で1年以上の入院を要した者は治療抵抗例でクロザピンや修正型電気けいれん療法が有効であった。また精神病症状を伴う躁病と統合失調症の鑑別を行うことによって症状が改善し退院に結び付けられる可能性が示唆された。
結論
本研究で精神科救急医療を要する精神疾患に対する精神科救急病棟で実施されている既存の種々の医療技術、福祉資源を組み合わせた取り組みの実態とその成果を明らかとすることによって、新たな理念として明確化された「精神障害者にも対応した地域包括ケアシステムの構築」に向けた精神医療モデルを確立することにより、地域移行・地域定着を推進する施策に直接反映できる。
今後さらに正確なデータ収集を行い、詳細な分析を行うように鋭意進めていく必要がある。
今後さらに正確なデータ収集を行い、詳細な分析を行うように鋭意進めていく必要がある。
公開日・更新日
公開日
2023-11-10
更新日
-