地域特性に応じた発達障害児の多領域連携における支援体制整備に向けた研究

文献情報

文献番号
202218012A
報告書区分
総括
研究課題名
地域特性に応じた発達障害児の多領域連携における支援体制整備に向けた研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
21GC1003
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
本田 秀夫(信州大学 学術研究院医学系)
研究分担者(所属機関)
  • 小倉 加恵子(国立成育医療研究センター)
  • 小林 真理子(山梨英和大学 人間文化学部)
  • 日詰 正文(独立行政法人 国立重度知的障害者総合施設のぞみの園 総務企画局研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
7,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究の目的は、地域特性に応じた発達障害児の乳幼児期から学齢期のステージにおける多領域連携支援体制の標準的な流れを示すこと、および各自治体が個々の事例に対して多領域連携支援体制の流れを作成するための手引きを作成することである。
 1年目は、医療、母子保健、児童福祉、学校教育、障害者福祉の各領域における発達障害児者支援に関する法制度や公的事業等の変遷と現状について文献調査を中心に整理した。さらに、「「発達障害の地域支援システムの簡易構造評価(Quick Structural Assessment of Community Care System for neurodevelopmental disorders; Q-SACCS)」を用いて、各基礎自治体の支援従事者や行政担当者が支援体制に関する地域診断を行うためのマニュアルを作成し、マニュアルの内容のダウンロードと解説動画の閲覧ができる専用ウェブサイトを作成した。
 本年度は、各自治体で個別の事例に関する支援の流れの可視化を可能とするための地域ケアパスを作成するための手引きを作成することを大きな目標に掲げ、母子保健、児童福祉、教育、障害者福祉の立場から調査研究を行った。
研究方法
 以下のテーマについて研究を行った。
1.発達障害の地域ケアパス作成の手引き(案)の作成
2.発達障害の地域支援に係る母子保健システムに関する調査研究
3.「基礎自治体における就学前の発達障害児に対する地域支援体制の実態調査」に基づく分析と考察
4.「学校教育における発達障害者支援に関する学校と関係機関との連携体制」に関する調査研究
5.地域の支援システムにつながっていない発達障害児者に関する文献調査
結果と考察
 1では、「発達障害の地域ケアパス作成の手引き(就学前)」(案)を作成した。Q-SACCSに記入した事業やツールなどがどのようなサービス機能を有しているのかを表にして整理し、それをもとに地域ケアパスを作成する手順とした。加えて、精神保健医療福祉サービスの領域で作成されている「地域精神保健医療福祉資源分析データベース(ReMHRAD)」を参考にして、発達障害児の支援サービスに関する社会資源のマップ作成に必要なコンテンツについて検討した。
 2では、全国市町村母子保健主管課及び担当部署を対象として質問紙調査を実施した。乳幼児健診のほか相談支援や保健指導、訪問などの全ての子ども・家族を対象とした支援が発達特性の把握の機会となっており、その精度をあげるための工夫として専門職種の参加や尺度等の導入が実施されていた。また、専門的支援および専門的支援につなぐインターフェイスとなる支援も取り入れられていた。医療および福祉との連携体制の整備状況に比較して、教育との連携体制は十分とは言えない状況であった。
 3では、全国自治体を対象に調査を行った。また、発達障害児の4段階の支援プロセスにそって支援サービスの機能の評価およびアセスメントを行うため「発達障害のアセスメントと支援サービスのプロセス調査表(Questionnaire: Process of Assessment and Support Services regarding Neurodevelopment disorders: Q-PASS)」(試案2022)を開発した。これを評価ツールとして用いることで、地域特性に応じた発達障害児とその家族の支援体制と支援内容の充実につながるものと思われた。
 4では、Q-SACCSを一部改変したシート(以下、「Q-SACCS改」)を作成し、教育と福祉等との連携が一定程度実施されている5自治体にQ-SACCS改への記入依頼し、インタビュー調査を行った。基礎自治体による連携の取組は一定程度整備されつつあるものの、中学校と高等学校間の引継ぎや高等学校段階以降の連携の難しさが明らかとなった。
 5では、地域の支援システムにつながっていない発達障害児について、誰が、どのように関わっているのかといった視点で文献調査を行った。つなぎ手として個々のニーズに沿って様々な職種があげられるが、中でも保健師の役割への期待があること、情報提供の在り方、援助要請に応える信頼感などが、今後の体制整備の課題となっていた。
結論
 多領域連携による支援に関する地域診断ツールであるQ-SACCSと個別の事例に関する支援の流れの可視化を可能とする地域ケアパス作成の手引き(案)により、地域に住むすべての発達障害児およびその家族が確実に支援サービスを受けることができる体制づくりが期待される。

公開日・更新日

公開日
2025-05-29
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-07-18
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202218012B
報告書区分
総合
研究課題名
地域特性に応じた発達障害児の多領域連携における支援体制整備に向けた研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
21GC1003
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
本田 秀夫(信州大学 学術研究院医学系)
研究分担者(所属機関)
  • 小倉 加恵子(国立成育医療研究センター)
  • 小林 真理子(山梨英和大学 人間文化学部)
  • 日詰 正文(独立行政法人 国立重度知的障害者総合施設のぞみの園 総務企画局研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究の目的は、地域特性に応じた発達障害児の乳幼児期から学齢期のステージにおける多領域連携支援体制の標準的な流れを示すこと、および各自治体が個々の事例に対して多領域連携支援体制の流れを作成するための手引きを作成することである。
研究方法
 以下の研究をおこなった。
1.発達障害の医療体制に関する法制度整備に関する調査研究
2.母子保健領域における発達障害支援に関連する法制度と社会資源-現状と課題-
3.児童福祉領域からみた発達障害児支援
4.学校教育における発達障害者支援に関する学校と関係機関との連携体制に関する調査研究
5.高齢期の発達障害者支援に関する地域支援体制に関する調査研究
6.多領域連携による地域支援体制のための地域診断マニュアルの作成
7.発達障害の地域ケアパス作成の手引き(案)の作成
8.発達障害の地域支援に係る母子保健システムに関する調査研究
9.「基礎自治体における就学前の発達障害児に対する地域支援体制の実態調査」に基づく分析と考察
10.地域の支援システムにつながっていない発達障害児者に関する文献調査
結果と考察
1.発達障害者支援法以降の医療体制に関する法制度および公的事業について検討した。地域の医療体制整備、専門的な医療機関の設置と地域連携、一般の医療及び保健従事者への啓発、医療を担う人材育成を軸として整備が進められているが、まだ課題が多いことが示された。
2.母子保健領域において、発達障害児の支援体制の整備に関連する法制度や社会資源について文献調査を実施し、現状と課題を整理した。今後、母子保健領域において、こども家庭支援センターを拠点として地域資源を生かした支援体制を構築していく必要がある。
3.児童福祉法に始まるわが国の児童福祉・子ども家庭福祉の法制度上の変遷について整理した。発達障害児に対して7段階に分類して整理した。これを縦軸として、既存の公的サービスを横軸に据えた支援サービスマップの仮案を作成した。
4.学校教育に関する法令や文部科学省の通知等を基に文献の整理を行った。さらに、学校教育における発達障害児支援に関する学校と関係機関との連携体制を、自治体自らが把握し見直すことができる方法を検討することを目的として、自治体へのヒアリング調査を行った。
5.文献レビューを行い、支援現場では発達障害者の特性を踏まえた合理的配慮が浸透しつつあることなどが示された。しかし、支援機関間の連携やライフサイクルを長期的に捉えた調査研究は少なく、高齢期の発達障害者に関する調査研究の強化が必要であると考えられた。
6.「発達障害の地域支援システムの簡易構造評価(Quick Structural Assessment of Community Care System for neurodevelopmental disorders; Q-SACCS)」を用いて各基礎自治体の支援従事者や行政担当者が支援体制に関する地域診断を行うためのマニュアルを作成した。
7.基礎自治体が地域ケアパスを作成できるような手引き(案)を作成した。また、「地域精神保健医療福祉資源分析データベース(ReMHRAD)の中に、発達障害児者の支援サービスに関する社会資源のマップを追加するための検討を行った。
8.全国市町村母子保健主管課及び担当部署を対象に全国調査を行い調査で明らかにした支援現場の実情を踏まえて、発達障害支援に係る母子保健システムの地域ケアパスのモデルを検討した。
9.全国の自治体を対象とした調査を行い、地域特性に応じた発達障害児の支援について検討した。また、「発達障害のアセスメントと支援サービスのプロセス調査表」(Questionnaire: Process of Assessment and Support Services regarding Neurodevelopment disorders Q-PASS)」(試案2022)を作成した。
10.地域の支援システムにつながっていない発達障害児について文献調査を行った。つなぎ手として様々な職種があげられるが、中でも保健師の役割への期待があることが示された。情報提供の在り方、援助要請に応える信頼館などが、今後の体制整備の課題となっていた。
結論
 本研究によって、乳幼児期から学童期にいたる時期の発達障害児およびその家族に対する地域支援について、すべての基礎自治体で共通に整備されるべきと思われる支援の流れの骨子と、人口規模などの地域特性に応じた柔軟な運用を可能とするシステム・モデルのあり方が示された。また、地域ケアパス作成の手引き(案)により、地域に住むすべての発達障害児およびその家族が確実に支援サービスを受けることができる体制づくりが期待される。

公開日・更新日

公開日
2025-05-29
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2025-05-29
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202218012C

成果

専門的・学術的観点からの成果
(1) 発達障害の就学前の地域支援体制に関して、医療、母子保健、児童福祉、教育、障害者支援という多領域から文献調査、アンケート調査およびインタビュー調査を行った。さらに、その知見をもとに地域診断ツールのマニュアルと地域ケアパス作成の手引き(案)を作成した。
(2) 本研究のデザインは、従来の発達障害支援の在り方に関する研究では見られなかった新しい研究デザインであった。
臨床的観点からの成果
(1) 乳幼児期から学童期にいたる時期の発達障害児およびその家族に対する地域支援について、すべての基礎自治体で共通に整備されるべきと思われる支援の流れの骨子と、人口規模などの地域特性に応じた柔軟な運用を可能とするシステム・モデルのあり方が示された。
(2) これにより、発達障害児の支援に関する地域較差を軽減するだけでなく、地域ごとの特色を生かした工夫を可能とするシステム・モデルが提示できる。
ガイドライン等の開発
(1) 「発達障害の地域支援システムの簡易構造評価(Quick Structural Assessment of Community Care System for neurodevelopmental disorders; Q-SACCS)」を用いて各基礎自治体の支援従事者や行政担当者が支援体制に関する地域診断を行うためのマニュアルを作成した。
(2) 基礎自治体が地域ケアパスを作成できるような手引き(案)を作成した。
その他行政的観点からの成果
個別の事例に関する支援の流れの可視化を可能とする手引きを作成したとにより,国内のすべての地域で発達障害児およびその家族が確実に支援サービスを受けることができる体制づくりに寄与できると思われる。
その他のインパクト
Q-SACCSのマニュアルは紙媒体とDVDを作成して全国の基礎自治体、精神保健福祉センター、発達障害者支援センターに配布した。また、ホームページを作成した。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
7件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
7件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
2件
発達障害の支援体制に関する地域診断マニュアル1件、地域ケアパス作成の手引き(案)1件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
発達障害の支援体制に関する地域診断マニュアルのホームページ作成1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2024-03-26
更新日
2024-05-27

収支報告書

文献番号
202218012Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
9,000,000円
(2)補助金確定額
9,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 800,856円
人件費・謝金 2,218,097円
旅費 345,521円
その他 2,284,000円
間接経費 2,000,000円
合計 7,648,474円

備考

備考
当初の予定よりも購入物品が少なくてすんだことと、ReMHRADへの発達障害情報実装にかかる経費(委託)が当初の見積もりより少額であったことが主な要因で、補助金確定額より支出の方が少額となった。

公開日・更新日

公開日
2024-03-27
更新日
-