文献情報
文献番号
202218011A
報告書区分
総括
研究課題名
障害者の地域生活におけるICTを活用した障害福祉サービス等の業務の効率化と効果の検証
課題番号
21GC1002
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
辻井 正次(中京大学 現代社会学部)
研究分担者(所属機関)
- 高柳 伸哉(愛知教育大学 心理講座)
- 明翫 光宜(中京大学心理学部)
- 日詰 正文(独立行政法人 国立重度知的障害者総合施設のぞみの園 総務企画局研究部)
- 鈴木 勝昭(宮城県子ども総合センター)
- 与那城 郁子(国立障害者リハビリテーションセンター 企画・情報部 発達障害情報・支援センター)
- 浮貝 明典(特定非営利活動法人PDDサポートセンターグリーンフォーレスト 地域生活支援部)
- 曽我部 哲也(中京大学 工学部)
- 熊崎 博一(長崎大学 医歯薬学総合研究科医療科学専攻精神神経科学)
- 田中 尚樹(青森県立保健大学 健康科学部)
- 渡辺 由美子(市川市教育委員会 生涯学習部社会教育課南行徳公民館)
- 杉山 文乃(特定非営利活動法人アスペエルデの会)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
4,714,000円
研究者交替、所属機関変更
<分担研究者追加>田中尚樹(青森県立保健大学健康科学部講師)、<所属変更>1.高柳 伸哉:(2021年度愛知東邦大学人間健康学部准教授)→(2022年度愛知教育大学心理講座准教授)、2.渡辺由美子:(2021年度市川市福祉部障がい者施設課・課長)→(2022年度市川市福祉部障がい者支援課・課長)
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究では、①現在の障害福祉サービス事業所のICT導入にあたってどのような業務において支援を必要としているかのニーズ分析を行った。②ニーズ分析でICT活用が望まれる業務においてICTが実際にどの程度活用されているか把握するためヒアリング調査を行った。③その上で、実際にICTの導入を希望している事業所において、ICT導入支援を行い、支援業務の効率や利用者への支援の質的向上について検証を行った。
研究方法
障害者福祉サービス事業者のICT活用のヒアリング調査については、専門家らによる意見交換会を1回開催した(2022年8月30日)。その後、メール会議によりヒアリング調査におけるインタビュー項目を確定した(②)。合わせて2021年時の調査研究の再分析を「支援業務におけるICT活用ニーズ」に焦点を絞って並行して行った(①)。その結果および分担研究者らのメール会議により、障害福祉サービス事業所の支援業務におけるICT導入支援のアプリケーションについて、ライフログクリエイターとObservation2が選択された。
研究参加事業所のリクルートについては、2021年度の調査時で検証実験参加の意思表明があった事業所ならびに研究協力者または分担研究者から紹介された事業所に研究参加募集を行った。その結果、29団体から申し込みがあった。事前ヒアリング調査としてインタビューガイドに沿って施設概要・ICT設備・支援業務におけるICT活用について尋ねた。その後、分担研究者で各施設に訪問し(一部はオンライン)ライフログクリエイターまたはObservation2の導入支援をおこなった。1か月以上の試行期間を経て、事後ヒアリング調査として、導入支援を行ったICTツールの活用状況と支援業務の変化(業務効率と支援業務質的向上の2側面)について尋ねた。
研究参加事業所のリクルートについては、2021年度の調査時で検証実験参加の意思表明があった事業所ならびに研究協力者または分担研究者から紹介された事業所に研究参加募集を行った。その結果、29団体から申し込みがあった。事前ヒアリング調査としてインタビューガイドに沿って施設概要・ICT設備・支援業務におけるICT活用について尋ねた。その後、分担研究者で各施設に訪問し(一部はオンライン)ライフログクリエイターまたはObservation2の導入支援をおこなった。1か月以上の試行期間を経て、事後ヒアリング調査として、導入支援を行ったICTツールの活用状況と支援業務の変化(業務効率と支援業務質的向上の2側面)について尋ねた。
結果と考察
まず、専門家らによる意見交換会にて2021年度のICT活用の実態調査を踏まえて、ICT導入支援として支援業務について注目する必要があると意見が一致した。次に2021年度の再分析として、現在の障害福祉サービス事業所のICT導入にあたってどのような業務において支援を必要としているかのニーズ分析を行ったところ, 利用者の生活状況・メンタルヘルス・適応行動および行動問題などのアセスメントや個別支援計画の作成の支援業務においてはアセスメント業務を含めて未開拓の領域であることが明らかになった(①)。
ICT活用が望まれる業務(個別支援計画におけるアセスメント業務)においてICTが実際にどの程度活用されているか把握するためICT導入を希望している事業所22施設を対象に事前ヒアリング調査を行ったところ、実際にICTツール活用している事業所は皆無であり、これらの課題を解決していくために,ライフログクリエイター(曽我部ら,2019)による適応行動やメンタルヘルスのアセスメントやObservations(井上・中谷,2019)といった行動記録に基づくアセスメントをサポートするアプリケーションが望ましいと考えられた(②)。
次に、22施設にICTツール(ライフログクリエイターとObservations2)の導入支援を行い,前後にヒアリング調査を行った。その結果,ICTツールの有用性(利用者の全体像の客観的把握,職員のアセスメントの質的向上など)は多くの事業所で支援業務の質的向上が体験されたが,多くの事業所では本格的な導入には至らなかった。その背景として,事後ヒアリング調査内容から「利用者のICT環境」,「職員の事情」,「予算の問題」の3つの問題に集約された(③)。
ICT活用が望まれる業務(個別支援計画におけるアセスメント業務)においてICTが実際にどの程度活用されているか把握するためICT導入を希望している事業所22施設を対象に事前ヒアリング調査を行ったところ、実際にICTツール活用している事業所は皆無であり、これらの課題を解決していくために,ライフログクリエイター(曽我部ら,2019)による適応行動やメンタルヘルスのアセスメントやObservations(井上・中谷,2019)といった行動記録に基づくアセスメントをサポートするアプリケーションが望ましいと考えられた(②)。
次に、22施設にICTツール(ライフログクリエイターとObservations2)の導入支援を行い,前後にヒアリング調査を行った。その結果,ICTツールの有用性(利用者の全体像の客観的把握,職員のアセスメントの質的向上など)は多くの事業所で支援業務の質的向上が体験されたが,多くの事業所では本格的な導入には至らなかった。その背景として,事後ヒアリング調査内容から「利用者のICT環境」,「職員の事情」,「予算の問題」の3つの問題に集約された(③)。
結論
障害福祉サービス事業所の支援業務においてICTツール活用され、業務効率化や支援業務の質的向上につながっていくためには,「ICTツールの利便性や操作性のさらなる向上」が求められると同時に,「職員の抱える課題(ICT導入に対する心理的抵抗感、アセスメントや発達障害特性や精神医学の基礎知識の習得)」,「予算の問題(業務用端末の購入補助)」について取り組む必要性があることが明らかになった。
公開日・更新日
公開日
2023-10-20
更新日
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