障害者の支援機器開発におけるモニター評価手法の開発及びモニター評価を実践する人材の育成プログラム開発のための研究

文献情報

文献番号
202218010A
報告書区分
総括
研究課題名
障害者の支援機器開発におけるモニター評価手法の開発及びモニター評価を実践する人材の育成プログラム開発のための研究
課題番号
21GC1001
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
二瓶 美里(東京大学 大学院新領域創成科学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 西嶋 一智(宮城県 リハビリテーション支援センター)
  • 石井 豊恵(神戸大学 大学院保健学研究科)
  • 森山 英樹(神戸大学 大学院保健学研究科)
  • 内田 智子(神戸大学大学院 保健学研究科)
  • 白銀 暁(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所福祉機器開発部)
  • 蜂須賀 知理(有光 知理)(東京大学 大学院情報学環(兼任:大学院新領域創成科学研究科))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
9,465,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 支援機器の開発においては、利用者の多様化したニーズや障害種別、心身機能特性、生活環境に適用するため、製品化の過程で実際の使用場面に即したモニター評価を行い、機器や運用の改善点を抽出することが重要である。本研究では、モニター評価者が、開発段階に応じて使用可能な標準的な評価手法及び機器改良に関連する気づきを抽出することが可能な評価手法と、評価チームに求められる知識やスキルの向上を図るための人材の育成プログラムを開発することを目的とする。
研究方法
 本研究では、モニター評価者が、開発段階に応じて使用可能な標準的な評価手法及び機器改良に関連する気付きを抽出することが可能な評価手法と、評価チームに求められる知識やスキルの向上を図るための人材の育成プログラムを開発することを目的とし、調査結果を分析し、ガイドブックの作成とワークショップの実施、e-learning システムの提案を行う。
結果と考察
 モニター評価には開発に合わせ多面的で集学的な評価が必要であることから、令和3年度は,調査結果よりチームアプローチが重要であることを示した。令和4年度は、開発者及び医療福祉専門職の評価チームに求められる能力が基礎的な能力や知識と専門的な能力を把握するための能力チェックシートを提案した。また、開発者がモニター評価に積極的に関わることの重要性を示し、改良につながる気づきを抽出する手法を提案した。医療福祉専門職のモニター評価参画促進においては、令和3年度は、医療福祉専門職の職業意識に即した関与のあり方、負担の軽減や公平性の検討を行った。これらの知見を踏まえ、令和4年度は職種別教育プログラムのフレームワークを提案して、これらの内容を含めたガイドブックを作成し、ガイドブックを原案としたe-learningシステムのプロトタイプを作成した。さらにガイドブックを用いたワークショップにより、教育・研修プログラムの有効性と活用可能性を確認できた。
結論
 本研究では、モニター評価の人材育成プログラムの中心となるガイドブックの作成とガイドブックの評価を行った。ガイドブックを活用したワークショップを実施した結果、対象ユーザの具体化や使用場面、評価方法、リスクや安全性等モニター評価に必要な項目が抽出できることが示された。また、これらの結果を用いてガイドブックを改訂し、さらにガイドブックをe-leaningシステムのプロトタイプ原案として活用した。今後作成したガイドブックを公開、活用しモニター評価の推進を支援する予定である。
 支援機器開発に関わる中小企業が効率よく効果的に支援機器を開発するためには、モニター評価は不可欠であり、また、医療従事者の参画も重要である。本研究で得られた知見としては、これまで製品化された優れた支援機器の開発や評価に携わった人々は、数少ない職人(長年の経験により熟練の技術を身に着けてきた人)であり、後継者の育成やこれからの労働人口の減少の影響を受けることは容易に想像できる。質の高い支援機器を継続して、効率的にそして効果的に行うためには、支援機器に興味を持つ開発職及び医療福祉関係に関わる人材を増やし、人材育成を行うこと、その人材がネットワークを作り情報交換することが改めて重要であることを示した。

公開日・更新日

公開日
2024-03-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し
倫理審査等報告書の写し
倫理審査等報告書の写し
倫理審査等報告書の写し
倫理審査等報告書の写し
倫理審査等報告書の写し
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2023-06-20
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202218010B
報告書区分
総合
研究課題名
障害者の支援機器開発におけるモニター評価手法の開発及びモニター評価を実践する人材の育成プログラム開発のための研究
課題番号
21GC1001
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
二瓶 美里(東京大学 大学院新領域創成科学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 西嶋 一智(宮城県 リハビリテーション支援センター)
  • 石井 豊恵(神戸大学 大学院保健学研究科)
  • 森山 英樹(神戸大学 大学院保健学研究科)
  • 内田 智子(神戸大学大学院 保健学研究科)
  • 白銀 暁(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所福祉機器開発部)
  • 蜂須賀 知理(有光 知理)(東京大学 大学院情報学環(兼任:大学院新領域創成科学研究科))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 支援機器は、障害者が自立した日常生活を送り、活動や参加を実現するために必要不可欠な道具である。利用者の多様化したニーズや障害種別、心身機能特性、生活環境に適用するため、製品化の過程で実際の使用場面に即したモニター評価を行い、機器や運用の改善点を抽出することが重要である。そのため、近年モニター評価を実施するための基盤整備や、評価を行う人材の育成、評価指標の策定などが進められている。
 先行研究では、障害者の自立支援機器の活用及び普及促進に求められる人材育成のための機器選択・活用に関する調査(上野、厚生労働科学研究補助金H30~H31)や、支援機器の適切な選定及び導入運用に向けたガイドライン作成のための調査(井上、同事業H31~R2)などがある。一方、開発過程におけるモニター評価体制に関しても、既存の事例や評価指標を用いた調査が行われている。しかし、実際には次のような問題点がある。
 そこで本研究では、モニター評価者が、開発段階に応じて使用可能な標準的な評価手法及び機器改良に関連する気づきを抽出することが可能な評価方法と、評価チームに求められる知識やスキルの向上を図るための人材の育成プログラムを開発することを目的とする。なお、対象とする支援機器は、WHO GATEプロジェクト優先50種から抽出した視覚・聴覚・認知・肢体(移動・コミュニケーション)・義肢の6種とし開発者や健常者での機能評価を終えた、想定する利用者によるモニター評価を行う段階の機器とした。
研究方法
1.障害者の支援機器開発におけるモニター評価手法の開発
 障害者が使用する支援機器のモニター評価について、実施経験のある企業や組織に対してその内容や効果、満足度等の実態、気づきの有無やその内容を明らかにすることを目的としたアンケートを実施した。また、モニター評価により機器の改良に至った具体的な気づきの事例の収集及び分析を目的としたインタビューを実施及び分析を行った。また、海外の事例を調査し、モニター評価の評価項目の整理を行った。
2.モニター評価を実施する人材育成プログラムの開発
 看護師、理学療法士、作業療法士を対象に、モニター評価に関するインタビュー調査及び分析を行った。また、モニター評価に参加する者の経験や知識を確認するためのチェックシートの開発を行った。さらに、モニター評価を実践する人材育成プログラムの開発のための現状調査としてアンケート調査を実施した。
3.開発したモニター評価手法及び人材育成プログラムの評価 
 モニター評価の教材の開発とその評価を行うために複数のワークショップを実施した。
結果と考察
1.障害者の支援機器開発におけるモニター評価手法の開発
 開発フェーズにおけるモニター評価の位置づけの明確化、モニター評価における8つの評価項目の抽出、機器改善の気付きを抽出する手法の提案、海外事例に基づく評価項目の一覧表の作成を行った。
2.モニター評価を実施する人材の育成プログラム開発
 各職種におけるモニター評価実施時の実施体制、役割、要件を明確化した。また、業務時間内にモニター評価を実施できる環境づくりや、関心に基づいて実務者がモニター評価を実施できる体制整備が必要であることを示した。また、モニター評価に必要な能力を確認するためのチェックシートを作成した。チェックシートは開発職と医療職がそれぞれの経験を確認することが可能なものとし、モニター評価の経験を確認する項目及び医療職などの臨床経験に関する2つの項目で構成されるものとした。さらに、具体的な教育(学習)手法として e-ラーニング・アプリケーションのプロトタイプを構築した。

3.開発したモニター評価手法及び人材育成プログラムの評価
 モニター評価に必要な知識や方法、評価項目等を整理したガイドブックを作成した。人材育成プログラムの教材を用いて、ワークショップを実施した結果、対象ユーザの具体化や使用場面、評価方法、リスクや安全性等モニター評価に必要な項目が抽出できることが示された。
結論
 本研究の目的である、モニター評価者が、開発段階に応じて使用可能な標準的な評価手法及び機器改良に関連する気づきを抽出することが可能な評価手法と、評価チームに求められる知識やスキルの向上を図るための人材育成のプログラムを開発し、ガイドブックの作成、e-learning システムの提案、ワークショップを完了することができた。さらに、これらの教材を活用したワークショップにより、教育・研修プログラムの有効性と活用可能性を確認でき、結果として予想を上回る成果や洞察を得ることができた。

公開日・更新日

公開日
2024-03-28
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202218010C

成果

専門的・学術的観点からの成果
モニター評価に関する支援機器開発企業、医療専門職、欧州先行事例調査結果より、モニター評価におけるチームアプローチの必要性、開発者がモニター評価に積極的にかかわる重要性を示し、支援機器の改良につながる「気付き」を抽出する効果的な手法の提案及び開発を行った。モニター評価人材育成プログラムに用いるガイドブックの作成,e-ラーニング・アプリケーションの提案及び制作を行った。
臨床的観点からの成果
医療福祉専門職のモニター評価参画促進において、医療福祉専門職の職業意識に即した関与の在り方、負担の軽減や公平性の検討を行い、それを基に職種別教育プログラムのフレームワークを構築した。開発者及び医療福祉専門職等の評価チームに求められる各評価者の能力を把握するための、基礎的な能力・知識と専門的な能力チェックシートを作成した。
ガイドライン等の開発
研究実施期間内において、ガイドラインの開発等は研究計画に含まれていない。
その他行政的観点からの成果
本研究で提案した評価手法や人材育成プログラムは、令和5年度から開始した支援機器開発のモデル拠点構築に関する研究において活用できるレベルの成果となった。今後、全国の支援機器開発モデル拠点での周知及び有効活用が十分に期待できる。
その他のインパクト
提案した人材育成プログラムにより、新規企業の容易な参入と、新規施設が評価事業によりメリットを享受できる良循環が生み出されることが期待される。e-learningプログラムにおいては、モニター評価での活用だけでなく、支援機器開発に求められる人材育成ツールとして、幅広い活用が見込まれる。2023年9月に開催されるLIFE2023にて本研究テーマのオーガナイズドセッションを企画している。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
1件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
2件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
2件
講演2件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
二瓶美里、西浦裕子
認知症のある人の生活を支援する機器の開発研究:利用場面における実証研究の実際と課題(特集認知症の人のQOL向上とテクノロジー)
日本認知症ケア学会誌 , 21 (2) , 250-256  (2022)
原著論文2
白銀暁、中村美緒
支援機器の開発過程におけるモニター評価の方法に関する海外先行事例の調査
リハビリテーション・エンジニアリング , 33 (2) , 125-130  (2023)

公開日・更新日

公開日
2023-06-23
更新日
-

収支報告書

文献番号
202218010Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
12,000,000円
(2)補助金確定額
12,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,396,710円
人件費・謝金 1,563,002円
旅費 433,249円
その他 5,072,039円
間接経費 2,535,000円
合計 12,000,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2023-06-23
更新日
-