WHO統合国際診断面接第5版(CIDI 5.0)日本語版の開発と信頼性・妥当性の検証および活用のための体制整備に資する研究

文献情報

文献番号
202218009A
報告書区分
総括
研究課題名
WHO統合国際診断面接第5版(CIDI 5.0)日本語版の開発と信頼性・妥当性の検証および活用のための体制整備に資する研究
課題番号
20GC1023
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
西 大輔(東京大学大学院医学系研究科 精神保健学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 中尾 智博(九州大学大学院医学研究院 精神病態医学分野)
  • 倉田 明子(広島大学病院 精神科)
  • 小笠原 一能(名古屋大学 医学部附属病院)
  • 吉内 一浩(東京大学 医学部附属病院)
  • 木村 充(独立行政法人国立病院機構 久里浜医療センター)
  • 高橋 美保(東京大学 教育学研究科臨床心理学コース)
  • 吉岡 京子(東京大学 大学院医学系研究科 健康科学・看護学専攻 地域看護学分野)
  • 大西 弘高(東京大学 医学系研究科 医学教育国際研究センター医学教育国際協力学部門)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
3,847,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
WHO統合国際診断面接(Composite International Diagnostic Interview, CIDI)は、WHOが開発、公表している現時点では唯一の、うつ病、不安障害などの比較的頻度の高い精神疾患の診断をつけるための情報を包括的に収集できる精神保健疫学調査用の構造化面接である。精神障害の国際的診断基準がDSM-IVからDSM-5に変更されたことに伴い、CIDIは第5版(CIDI 5.0)に改訂された。CIDI 5.0を日本でも使用できるように整備することは、わが国の精神障害の疫学研究の基盤整備として、精神障害に関するさまざまな臨床研究で共通して診断、症状評価を行う上できわめて有用と考えられる。
 本研究は、CIDI 5.0の日本語版を開発し、その信頼性と妥当性をDSMチェックリストとの比較により検討することを主な目的とする。また副次的に、CIDI5.0を精神保健に関する様々な専門家が活用する可能性について検討することも目的とした。
研究方法
まずCIDI5.0の日本語版を開発および面接員のトレーニングを行った。研究参加者については、将来の全国調査の対象となる地域住民とともに、地域住民の各精神疾患の有病率がそれほど高くないことを踏まえて精神科医療機関で加療中の各疾患の患者にも参加していただく必要があると考えられた。地域住民群に関しては、性別、年齢を層別化した地域住民100人をリクルートした。精神疾患患者群に関しては、各共同研究機関において、精神病性障害群、うつ病、双極性障害、不安症群、強迫性障害、心的外傷ストレス障害(PTSD)、摂食障害、アルコール使用障害で加療中の患者をリクルートした。地域住民群に関してはDSM-5のチェックリストによる診断、患者群に関してはDSM-5に基づいた主治医の診断をゴールドスタンダードとして、CIDI5.0による各疾患の診断の感度、特異度、およびCIDIの性能の指標として以前のバージョンであるCIDI3.0のときも用いられていたArea Under the Curve (AUC)を算出した。また、インタビュー等を通して精神保健に関する様々な専門家との連携に関する検討を行った。
結果と考察
患者群を対象とした研究に関しては、一部の疾患を除いて、ほぼ予定通りの研究参加者を確保できた。患者群124人および地域住民群100人の合計224人を解析対象として信頼性と妥当性を検討した結果、Area Under the Curve (AUC)は、うつ病0.73、双極性障害0.74、強迫性障害0.82、アルコール使用障害0.78、神経性無食欲症0.78であり、一定程度の信頼性と妥当性があることを確認できた。信頼性、妥当性の検討に関しては、海外におけるCIDI3.0の各疾患におけるAUCは、うつ病0.75、双極性障害0.93、アルコール使用障害0.81と報告されており(Haro, Josep Maria, et al. International journal of methods in psychiatric research. 2006)、うつ病とアルコール使用障害に関してはCIDI3.0と同程度の精度であることを確認できた。双極性障害に関する結果については精査が必要であるが、一般的には主治医が寛解している双極性障害の診断をつけ続けている可能性はあると考えられる。ただ、双極性障害のAUCもうつ病のAUCと同等であり、CIDI3.0では検討されていなかった強迫性障害や神経性無食欲症も含めて、検討を行ったすべての疾患で一定の精度が保たれていることが確認できた。
また精神保健に関する様々な専門家との連携に関しては、専門家がCIDI5.0を単独で活用することに関しては一定の限界が想定されるものの、CIDI5.0をもとにした教材等の活用によって専門家や非専門職のトレーニングに活用できる可能性が考えられた。
結論
CIDI5.0日本語版の信頼性と妥当性を検討し、少なくともうつ病、双極性障害、強迫性障害、アルコール使用障害、神経性無食欲症に関しては一定程度の信頼性と妥当性があることを確認できた。また、CIDI5.0をもとにした教材等の活用によって専門家や非専門職のトレーニングに活用できる可能性が考えられた。

公開日・更新日

公開日
2023-07-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2023-07-03
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202218009B
報告書区分
総合
研究課題名
WHO統合国際診断面接第5版(CIDI 5.0)日本語版の開発と信頼性・妥当性の検証および活用のための体制整備に資する研究
課題番号
20GC1023
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
西 大輔(東京大学大学院医学系研究科 精神保健学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 中尾 智博(九州大学大学院医学研究院 精神病態医学分野)
  • 倉田 明子(広島大学病院 精神科)
  • 小笠原 一能(名古屋大学 医学部附属病院)
  • 吉内 一浩(東京大学 医学部附属病院)
  • 木村 充(独立行政法人国立病院機構 久里浜医療センター)
  • 高橋 美保(東京大学 教育学研究科臨床心理学コース)
  • 吉岡 京子(東京大学 大学院医学系研究科 健康科学・看護学専攻 地域看護学分野)
  • 大西 弘高(東京大学 医学系研究科 医学教育国際研究センター医学教育国際協力学部門)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
WHO統合国際診断面接(Composite International Diagnostic Interview, CIDI)は、WHOが開発、公表している現時点では唯一の、うつ病、不安障害などの比較的頻度の高い精神疾患の診断をつけるための情報を包括的に収集できる精神保健疫学調査用の構造化面接である。精神障害の国際的診断基準がDSM-IVからDSM-5に、ICD-10からICD-11に変更されたことに伴い、CIDIは第5版(CIDI 5.0)に改訂された。CIDI 5.0を日本でも使用できるように整備することは、わが国の精神障害の疫学研究の基盤整備として、精神障害に関するさまざまな臨床研究で共通して診断、症状評価を行う上で、またDSM-5やICD-11による精神障害の診断を国内に広く普及する上で、きわめて有用と考えられる。
 本研究は、CIDI 5.0の日本語版を開発し、その信頼性と妥当性をDSMチェックリストとの比較により検討することを主な目的とした。また副次的に、CIDI5.0を精神保健に関する様々な専門家が活用する可能性について検討することも目的とした。
研究方法
1.CIDI5.0日本語版の開発と信頼性・妥当性の検討
CIDI5.0の英語版を日本語に翻訳し、面接システムを作成した。地域住民群に関してはDSM-5のチェックリストによる診断、患者群に関してはDSM-5に基づいた主治医の診断をゴールドスタンダードとして、CIDI5.0による各疾患の診断の感度、特異度、およびCIDIの性能の指標として以前のバージョンであるCIDI3.0のときも用いられていたArea Under the Curve (AUC)を算出した。
2.精神保健に関する様々な専門家との連携に関する検討
保健師、心理師、プライマリケア医に教材案の提供、フォーカスグループインタビューなどを行い、それぞれの観点からCIDI 5.0の日本語版の活用可能性および課題について意見を聴取した。
結果と考察
1.地域住民群に関しては、2021年度に100人の研究参加者を集積し、患者群に関しては、125人を集積した。各診断の感度、特異度は以下の通りであった(うつ病:感度0.50、特異度0.96;双極性障害:感度0.48、特異度0.99;強迫性障害:感度0.71、特異度0.92;アルコール使用障害:感度0.58、特異度0.98;神経性無食欲症:感度0.61、特異度0.95)。AUCを算出すると、うつ病0.73、双極性障害0.74、強迫性障害0.82、アルコール使用障害0.78、神経性無食欲症0.78であった。
うつ病とアルコール使用障害に関してはCIDI3.0と同程度の精度であることを確認できた。双極性障害に関する結果については精査が必要であるが、一般的には主治医が寛解している双極性障害の診断をつけ続けている可能性はあると考えられる。ただ、双極性障害のAUCもうつ病のAUCと同等であり、CIDI3.0では検討されていなかった強迫性障害や神経性無食欲症も含めて、検討を行ったすべての疾患で一定の精度が保たれていることが確認できた。
2.保健師に関しては、精神科受診に至っていない事例の一助となる可能性、地域における保健師の保健活動のみならず、保健師のアセスメント技術の標準化やケアの質の向上にも資する可能性があると考えられた。さらに、精神疾患・障害の好発年齢にある生徒の身近な存在である養護教諭、福祉事務所のケースワーカー、児童相談所の職員等もトレーニングを受ければ活用できる可能性があるとの意見が得られた。心理師に関しては、課題として面接者・被面接者双方の負担の大きさ、機械的なやり取りを前提とすることにコミュニケーション上の違和感があることが指摘された。一方、精神科へのリファー・精神科医療やリエゾンなどの医療領域での活用の他、教育領域、司法領域など各領域の多職種連携における活用可能性が挙げられた。
プライマリケア医に関しては、現状のCIDI5.0の所要時間の長さのため、直接利用することは困難であるものの、短縮化した動画を作成すれば学習には活用できる可能性があること、日本プライマリ・ケア連合学会においてもメンタルヘルスの教育強化を必要としており、うつ病や不安症圏の疾患への対応や基本的な面接トレーニングのニーズはあることが指摘された。
結論
CIDI5.0日本語版の信頼性と妥当性を検討し、少なくともうつ病、双極性障害、強迫性障害、アルコール使用障害、神経性無食欲症に関しては一定程度の信頼性と妥当性があることを確認できた。また、CIDI5.0をもとにした教材等の活用によって専門家や非専門職のトレーニングに活用できる可能性が考えられた。

公開日・更新日

公開日
2023-07-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-07-03
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202218009C

収支報告書

文献番号
202218009Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,000,000円
(2)補助金確定額
5,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 943,956円
人件費・謝金 1,373,644円
旅費 299,532円
その他 1,250,729円
間接経費 1,153,000円
合計 5,020,861円

備考

備考
自己資金:20,861円

公開日・更新日

公開日
2024-03-27
更新日
-