高悪性度骨軟部腫瘍に対するカフェイン併用化学療法の臨床使用確認試験

文献情報

文献番号
200918016A
報告書区分
総括
研究課題名
高悪性度骨軟部腫瘍に対するカフェイン併用化学療法の臨床使用確認試験
課題番号
H19-臨床試験・一般-024
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
土屋 弘行(金沢大学 医薬保健研究域医学系 がん医科学専攻機能再建学)
研究分担者(所属機関)
  • 白井寿治(金沢大学 医薬保健研究域医学系 がん医科学専攻機能再建学 )
  • 林 克洋(金沢大学 医薬保健研究域医学系 がん医科学専攻機能再建学 )
  • 田地野崇宏(福島県立医科大学医学部附属病院 整形外科)
  • 帖佐悦男(宮崎大学医学部附属病院 整形外科)
  • 坂山憲史(愛媛大学医学部附属病院 整形外科)
  • 横内雅博(鹿児島大学医学部 整形外科)
  • 家口 尚(淀川キリスト教病院)
  • 折笠秀樹(富山大学大学院医学薬学研究部バイオ統計学・臨床疫学)
  • 赤澤宏平(新潟大学医歯学総合病院 医療情報部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(臨床研究・予防・治療技術開発研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究費
8,003,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
高悪性度骨軟部腫瘍に対するカフェイン併用化学療法の有効性と安全性を多施設共同研究により確認し、本治療の先進医療としての存続と治療の標準化を目指すことを目的とする。申請者らは、この治療法を1989年より臨床応用し、その良好な結果に対し平成20年度文部科学大臣表彰科学技術賞(開発部門)「カフェイン併用化学療法と患肢温存縮小手術の開発」を受賞している。
研究方法
本試験は、多施設共同で行う第Ⅱ相臨床試験であり、プライマリーエンドポイントは術前化学療法の奏効割合、セカンダリーエンドポイントは2年無増悪生存割合、無病悪生存期間、全生存期間、有害事象発生割合である。生検により病理学的診断された四肢・体幹・後腹膜発生の悪性骨軟部腫瘍に対し、化学療法と手術を行った。従来から使用されている抗がん剤のCDDP(120mg/m2/日×1日)+ADM(30mg/m2/日×2日)に、カフェイン(1500mg/m2日×3日)を加えた化学療法を行い、画像評価や手術所見で無効のものはIFO(3g/m2/日×3日)+VP16(60mg/m2/日×3日)とカフェインの組み合わせに変更したプロトコールを用いて治療を行った。

結果と考察
平成19年度より症例登録が開始され、骨腫瘍が45例、軟部腫瘍が34例登録済みである。
プライマリーエンドポイントの奏功率について、治療を完了し、調査報告のなされた40例(骨腫瘍23例、軟部腫瘍17例)、画像判定による腫瘍反応については、Complete responseとPartial responseを合わせた奏功率が、骨腫瘍で52%、軟部腫瘍で70%という数値であった。病理判定による有効性については、骨腫瘍では68%、軟部腫瘍では47%という結果であった。骨肉腫は病理所見から有効率が68%であり、軟部肉腫では画像と病理所見を総合して有効率70%となる。これは、これまでの報告の20%から40%を大きく上回る成績である。
 セカンダリーエンドポイントである2年PFS及びOSについては、まだ転帰データが回収されていないため、今回は解析しなかった。同じくセカンダリーエンドポイントである副作用について、血液学的副作用は半数を超える患者で見られたが、これは化学療法に伴う副作用と思われた。その他、電解質異常などについても化学療法に伴う副作用と思われた。カフェインに関する動悸や頭痛などはgrade 2以下の軽度のもののみであった。
結論
本研究は、2010年3月末現在患者登録は終了したが、予後調査中であり、まだ結論は得られていない。

公開日・更新日

公開日
2011-05-31
更新日
-

文献情報

文献番号
200918016B
報告書区分
総合
研究課題名
高悪性度骨軟部腫瘍に対するカフェイン併用化学療法の臨床使用確認試験
課題番号
H19-臨床試験・一般-024
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
土屋 弘行(金沢大学 医薬保健研究域医学系 がん医科学専攻機能再建学)
研究分担者(所属機関)
  • 白井寿治(金沢大学 医薬保健研究域医学系 がん医科学専攻機能再建学 )
  • 林克洋(金沢大学 医薬保健研究域医学系 がん医科学専攻機能再建学 )
  • 田地野崇宏(福島県立医科大学医学部附属病院 整形外科)
  • 星 学(大阪市立大学医学部附属病院 整形外科)
  • 帖佐悦男(宮崎大学医学部附属病院 整形外科)
  • 坂山憲史(愛媛大学医学部附属病院 整形外科)
  • 横内雅博(鹿児島大学医学部整形外科 整形外科)
  • 家口 尚(淀川キリスト教病院)
  • 折笠秀樹(富山大学大学院医学薬学研究部バイオ統計学・臨床疫学)
  • 赤澤宏平(新潟大学医歯学総合病院 医療情報部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(臨床研究・予防・治療技術開発研究)
研究開始年度
平成19(2007)年度
研究終了予定年度
平成21(2009)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
高悪性度骨軟部腫瘍に対するカフェイン併用化学療法の有効性と安全性を多施設共同研究により確認し、本治療の先進医療としての存続と治療の標準化を目指すことを目的とする。申請者らは、この治療法を1989年より臨床応用し、その良好な結果に対し平成20年度文部科学大臣表彰科学技術賞(開発部門)「カフェイン併用化学療法と患肢温存縮小手術の開発」を受賞している。
研究方法
本試験は、多施設共同で行う第Ⅱ相臨床試験であり、プライマリーエンドポイントは術前化学療法の奏効割合、セカンダリーエンドポイントは2年無増悪生存割合、無病悪生存期間、全生存期間、有害事象発生割合である。生検により病理学的診断された四肢・体幹・後腹膜発生の悪性骨軟部腫瘍に対し、化学療法と手術を行った。従来から使用されている抗がん剤のCDDP(120mg/m2/日×1日)+ADM(30mg/m2/日×2日)に、カフェイン(1500mg/m2日×3日)を加えた化学療法を行い、画像評価や手術所見で無効のものはIFO(3g/m2/日×3日)+VP16(60mg/m2/日×3日)とカフェインの組み合わせに変更したプロトコールを用いて治療を行った。
結果と考察
平成19年度より症例登録が開始され、骨腫瘍が45例、軟部腫瘍が34例登録済みである。
プライマリーエンドポイントの奏功率について、治療を完了し、調査報告のなされた40例(骨腫瘍23例、軟部腫瘍17例)であった。骨肉腫は病理所見から有効率が68%であり、軟部肉腫では画像と病理所見を総合して有効率70%となった。これは、これまでの報告の20%?40%を大きく上回る成績である。
 セカンダリーエンドポイントである2年PFS及びOSについては、今後観察期間が経過してデーターを回収でき次第解析予定である。同じくセカンダリーエンドポイントである副作用について、血液学的副作用は半数を超える患者で見られたが、これは化学療法に伴う副作用と思われた。その他、電解質異常などについても化学療法に伴う副作用と思われた。カフェインに関する動悸や頭痛などはgrade 2以下の軽度のもののみであった。
結論
悪性骨軟部腫瘍に対し、従来の抗がん剤に加えてカフェインを追加投与することで、局所奏効率ではこれまでの報告を上回った効果が確認された。今後更にデータの回収を待って生存率などの解析を行っていき当治療の有用性を確認していく方向である。

公開日・更新日

公開日
2011-05-31
更新日
-

行政効果報告

文献番号
200918016C

成果

専門的・学術的観点からの成果
高悪性度骨軟部腫瘍に対して有効とされる薬剤は限られており、5年生存率は約50?70%と概ね頭打ちであり、新たな治療が必要である。カフェインの抗腫瘍効果については、1981年に初めてDNA修復阻害作用を呈すると報告されており、本研究申請者の土屋は、カフェインが肉腫に対する化学療法の効果増強補助剤である可能性を見出し、1989年より臨床応用を開始した。今回の多施設共同研究でも、局所奏効率が上昇していることが確認され、カフェインによる抗がん剤の相乗効果がみられた。
臨床的観点からの成果
抗がん剤の増強により局所奏効率が上昇したことにより、患者の予後のみならず、腫瘍切除範囲の縮小と機能温存が可能となることが期待できる。骨肉腫に代表される悪性骨軟部腫瘍は、若年者にも多く、予後の改善とともに、罹患した足の機能も長期的に有用肢となることが望まれる。手術前のカフェイン併用化学療法により、腫瘍が縮小することで、切断あるいは人工関節の手術の代替として、自分の骨を残して腫瘍切除が可能となる。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
なし
その他のインパクト
平成22年1月9日に一般の方にもカフェイン併用化学療法の成果を知ってもらう主旨で公開講座を金沢大学附属病院宝ホールにて開催した。患者など含め約100人が参加した。全国11施設におよぶ臨床試験を行っており、悪性骨軟部腫瘍に対して従来の抗がん剤にカフェインを加える治療を行うことで奏効率が高くなることなどを理解してもらった。また、厚労省の研究事業について理解を深めてもらった。

発表件数

原著論文(和文)
3件
原著論文(英文等)
3件
悪性骨軟部腫瘍に対する治療の工夫
その他論文(和文)
28件
その他論文(英文等)
25件
学会発表(国内学会)
31件
学会発表(国際学会等)
12件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
平成22年1月9日に一般の方にもカフェイン併用化学療法の成果を知ってもらう主旨で公開講座を金沢大学附属病院宝ホールにて開催した。

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-05-26
更新日
-