障害者の支援機器開発に携わる医療・福祉・工学分野の人材育成モデル構築に資する研究

文献情報

文献番号
202218002A
報告書区分
総括
研究課題名
障害者の支援機器開発に携わる医療・福祉・工学分野の人材育成モデル構築に資する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
20GC1013
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
出江 紳一(国立大学法人 東北大学 大学院 医工学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 永富 良一(東北大学大学院医工学研究科)
  • 井上 剛伸(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所 福祉機器開発部)
  • 浅川 育世(茨城県立医療大学 保健医療学部 理学療法学科)
  • 大西 秀明(新潟医療福祉大学 リハビリテーション学部)
  • 中尾 真理(国立大学法人 東北大学 大学院 医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
15,963,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
支援機器開発には様々な専門職が関わるが、実践する人材の不足などが課題であったため、各専門職等に求められる諸条件を普及啓発する連携体制を構築するための方策をマッチング事業などの実践を通して抽出し、人材育成のプログラムおよびプログラム改善の仕組みを組み込んだ支援機器開発人材育成モデルを構築する。
研究方法
1)令和3年度の研究で実施した支援機器開発人材育成(パイロット版)研修会、および医工融合ワークショップの結果を基に、β版プログラムを作成した。
2)令和3年度の研究で作成したβ版プログラムを改善するために、講義2回とワークショップ3回のテスト会を実施し、受講者全員を対象にアンケート調査を行い集計した。
3)β版プログラムのテスト会の結果を基に、課題の抽出を完成版プログラム作成に向けた方針決定した。
4)医療機器ビジネス学として、主として医療系の知識が豊富ではない工学系学部・高専出身学生で占められる医工学研究科大学院生向けの正規カリキュラム(45時間/セメスター)用のオンラインデザインワークショッププログラムを提供し、受講生からのフィードバックによりプログラムを改善した。
5)ニーズを明確化するデザイン思考を知識としてだけではなく機器開発の基本的発想とできるように、プログラムの洗練化を進めた。
6)完成版プログラムの仕様書の参考とするため、リハビリテーション科専門医の臨床経験に基づく研修用シナリオを作成した。
結果と考察
1)完成版プログラムとして、プログラムの仕様書、ケーススタディ、研修用の説明資料を作成した。また、プログラム作成にあたり、支援機器に特有の課題の整理として作成した「支援機器開発・利活用ハートサイクル」を活用し、支援機器開発と利活用をサイクルで捉えることを明示した。
2)人材育成モデルβ版プログラムを用い、講義及びワークショップのテスト会を実施し、最終成果物である完成版プログラム作成のための課題抽出及び改善点の提案を目的に、事前・事後アンケートを作成・実施した。その結果、β版プログラムの内容について前年度に作成したα版よりも高い満足度が得られ、本手法に対する医療福祉専門職、支援機器開発職の興味の高さを確認することができた。完成版において、講義モデルは、知識と態度、ワークショップモデルは、スキルと態度に分類される複数の項目で構成し、各々の項目に対し学習到達目標、プログラム実施にかかる標準所要時間も策定した。さらに、プログラムの目的、想定する受講者の他、本プログラムを実装する担当講師の要件についても議論し提案した。
3)β版プログラムでは受講者の支援機器開発の経験によって、2種類のワークショップを用意した。そのことが受講者満足度の改善理由の一つと思われる。この点は、本研究の基本的な方針としているPDCAサイクルを回すことから得られた修正であり、このような手法の有用性を示す結果と考えられる。
4)医療機器ビジネス学では、複数の潜在的ニーズを含む患者シナリオに基づき、ニーズ探索、ニーズセレクション、ニーズステートメントを行ったのち選択された未解決課題に対応するアイディアに基づく提案をまとめるグループワークを実施した。様々なケースシナリオを用意することによって、医工連携のさまざまな領域のオンラインワークショップのトレーニングが可能になった。またシナリオの平易な解説資料の用意あるいはファシリテーターによるQ&Aにより学部生向けにもワークショップへの展開が可能であることを確認した。
結論
プログラム策定班が作成した研修プログラムβ版を社会実装班が大学、学会、シーズニーズマッチング交流会において、講義モデルとして合計2回、ワークショップモデルとして合計3回、実施し、アンケート結果に基づいて、支援機器開発人材育成における有用性と意義を明らかにするとともに完成版(講義モデルおよびベーシックとアドバンスの2種類からなるワークショップモデル)を作成した。さらに、専門職等に求められる諸条件の収集と整理、支援機器開発事例の調査は、完成版の作成に有用であった。これらに加えて、系統的な医工連携教育プログラムの開発を進め、医療知識が足りない理工系学生への教育のために研修用シナリオの平易な解説資料の用意あるいはファシリテーターによるQ&Aが有効であることを確認した。それと同時にファシリテーターの育成が重要であることが明らかになった。本研究により、AIや遠隔医療技術などの先端的技術を取り入れた多様な支援機器が持続的に開発促進され、優れた支援機器が超高齢少子社会の課題解決に資すると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2024-03-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-03-28
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202218002B
報告書区分
総合
研究課題名
障害者の支援機器開発に携わる医療・福祉・工学分野の人材育成モデル構築に資する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
20GC1013
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
出江 紳一(国立大学法人 東北大学 大学院 医工学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 永富 良一(東北大学大学院医工学研究科)
  • 井上 剛伸(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所 福祉機器開発部)
  • 浅川 育世(茨城県立医療大学 保健医療学部 理学療法学科)
  • 大西 秀明(新潟医療福祉大学 リハビリテーション学部)
  • 中尾 真理(国立大学法人 東北大学 大学院 医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
支援機器開発には様々な専門職が関わるが、実践する人材の不足などが課題であったため、各専門職等に求められる諸条件を普及啓発する連携体制を構築するための方策をマッチング事業などの実践を通して抽出し、人材育成のプログラムおよびプログラム改善の仕組みを組み込んだ支援機器開発人材育成モデルを構築する。
研究方法
令和2年度末までに、支援機器開発に必要な知識とスキル(現場のニーズ探索、それを解決するコンセプトの発見・プロトタイプ製作、モニター評価、研究倫理、法規制を含むマネジメント、支援機器選定・導入のノウハウ等)から各専門職等に求められる諸条件を調査・収集し、分類整理した。
令和3年度末までに、各専門職等に求められる諸条件を普及啓発し、連携体制を構築するための方策を抽出した。
令和4年度末までに、各専門職等に求められる諸条件及び連携体制構築に必要な実践的方策を整理し、多職種連携の支援機器開発人材育成モデルを構築した。
結果と考察
1)障害者の支援機器開発に資する人材育成モデルプログラムの作成
支援機器開発に資するα版プログラムとして、プログラムの仕様書、ケーススタディ、研修用の説明資料を作成した。また、プログラム作成にあたり、支援機器に特有の課題の整理として、「支援機器開発・利活用ハートサイクル」を作成し、支援機器開発と利活用をサイクルで捉えることを明示した。
β版プログラムを改善するために、合計5回のテスト会を実施し、統一形式のアンケート調査を実施して受講者からのフィードバックを得た。その結果、高い満足度が得られ適切な難易度であり、α版と比較して受講者の希望に沿ったプログラムに修正できたことが確認されたが、受講時間については受講者間で希望にばらつきが生じた。
2)障害者の支援機器開発人材育成モデルの試験的実施
α版プログラムの試行結果を基に、受講者の支援機器開発の経験によって、2種類のワークショップを用意し、β版プログラムを作成した。講義モデルの実施前後に行なったアンケート調査の結果、プログラムの満足度、時間、難易度が昨年と比べて受講者の希望に沿った結果になった
3)障害者の支援機器開発人材育成モデルの策定
人材育成モデルは、β版プログラムでテスト会に使用した学習のためのケーススタディ・研修用の説明資料の他、プログラムの仕様書で構成した。、令和3年度に作成した「支援機器開発・利活用ハートサイクル」にあるステークホルダーとその役割も踏まえ、社会実装が可能なモデルを構築することに注力した。
4)デジタル技術を活用した支援基金研究開発動向調査
デジタル技術を活用した支援機器の研究開発に関連する文献を抽出する事ができた点と、中でも通信・ネットワーク技術やセンシング技術の活用が進んでいる点が示された。一方で、これらの支援機器ではリハビリテーション専門職の関与がまだまだ進んでいないことが文献数より示された。特に、理学療法士、作業療法士以外の専門職の関与に関する文献は抽出されず、今後さらなる調査も必要と考えられる。
5)医工連携教育プログラムの開発
々なケースシナリオを用意することによって、医工連携のさまざまな領域のオンラインワークショップのトレーニングが可能になった。またシナリオの平易な解説資料の用意あるいはファシリテーターによるQ&Aにより学部生向けにもワークショップへの展開が可能であることを確認した。ファシリテーターの育成が重要であることが明らかになった。
結論
研究期間内に策定したβ版プログラムを改変し社会実装におけるアンケート結果をもとに、講義モデル、ワークショップモデル(ベーシック版・アドバンス版)を完成させた。β版プログラムには、学習のためのケーススタディ・研修用の説明資料が含まれ、さらに文科省の単位交換プログラムに載せることを想定したプログラム仕様書を、令和3年度作成した「支援機器開発・利活用ハートサイクル」を踏まえ作成し、最終成果として人材育成モデルの構築を完成させた。

公開日・更新日

公開日
2024-03-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-03-28
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202218002C

成果

専門的・学術的観点からの成果
従来は支援機器の開発に必要な知識や技能の理解が不十分であり、専門職養成校や医工連携教育を行う大学院での教育も不十分であった。本研究によりニーズに基づいて支援機器を開発するために必要な知識と技能が整理されたことは、レギュラトリサイエンスやバイオデザイン学の発展に寄与するものであると考えられる。成果は日本リハビリテーション医学会誌等の雑誌に掲載されるとともに、日本リハビリテーション医学会学術集会において2年連続でシンポジウム・ワークショップが企画・実施されるなど大きな反響があった。
臨床的観点からの成果
少子高齢社会において慢性期医療や介護福祉の現場を支える技術として支援機器の発展と普及が必要である。しかし、開発に関わる人材の育成が課題であった。本研究成果である支援機器開発人材育成モデルにより支援機器開発人材育成が専門職養成校や医工連携教育を行う大学院において実施されることが促進されると考えられる。それによりニーズに合致した支援機器開発が進み、慢性期医療や介護福祉において障害者のQOLの向上に寄与すると期待される。
ガイドライン等の開発
本研究により支援機器開発人材育成モデルが開発され研修プログラムの仕様書が提供された。本仕様書は教育ガイドラインとして活用することが可能である。具体的には、専門職養成校や医工連携教育において講義が実施される際や、関連学会でのワークショップが実施される際のガイドラインとして活用することが可能である。本人材育成モデルには参加者アンケート等により研修プログラムを改善する仕組みを含むことから、慢性期医療や介護福祉現場の多様性に対応した研修プログラムのガイドラインが開発されると期待される。
その他行政的観点からの成果
支援機器開発人材育成モデルは厚生労働省が推進する「障害者自立支援機器等開発促進事業」として実施されてきた一連の事業において、従来不足していた開発人材を育成するという課題の解決に貢献するものである。すでに専門職養成校や医工連携教育を行う大学院、関連学会において講義モデル・ワークショップモデルが実施され大きな反響がありリハビリテーション医学会誌への寄稿を依頼された。育成される人材は支援機器の利活用にも精通することから支援機器開発普及において相互にリンクする行政課題の解決に貢献すると考えられる。
その他のインパクト
本研究の取り組みは関連学会で注目され、日本リハビリテーション医学会での2年連続のワークショップ・シンポジウム(令和4年、令和5年)、日本臨床神経生理学会(令和3年)での教育講演・ワークショップ、全国大学理学療法教育学会シンポジウム(令和3年)等が開催された。また本研究の取り組みは、日本リハビリテーション医学会(Jpn J Rehabil Med 59: 400-406, 2022)、日本義肢装具学会誌(日本義肢装具学会誌37, 2, 2021)等で紹介された。

発表件数

原著論文(和文)
5件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
5件
その他論文(英文等)
2件
学会発表(国内学会)
5件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
出江 紳一
リハビリテーション医療と医工連携・産学連携
Jpn J Rehabil Med , 59 (4) , 400-406  (2021)
https://doi.org/10.2490/jjrmc.59.400
原著論文2
井上 剛伸
支援機器開発に関わる人材育成モデル -工学研究者の立場から-
新潟医療福祉学会誌 , 21 (3) , 139-140  (2022)
https://doi.org/10.34540/niigatajohewewa.21.3_139
原著論文3
井上剛伸
福祉工学
医用工学ハンドブック , 437-456  (2022)
原著論文4
中尾真理, 大西秀明,浅川育世,田上未来,出江紳一
支援機器開発における多分野他職種連携の課題と専門医がリハビリテーション科医師に求める能力―リハビリテーション科専門医に施行したアンケート結果からー
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine , 59 (12) , 1248-1258  (2022)
https://doi.org/10.2490/jjrmc.22018
原著論文5
Nakao M. Oshima F. Izumi S.
Comment on “Which Factors affect the Severity of Dysphagia in Lateral Medullary Infarction?
Dysphagia , 35 (5) , 872-873  (2020)
https://doi.org/10.1007/s00455-020-10109-y
原著論文6
井上剛伸,間宮郁子
義肢装具と支援機器 —支援機器開発の視点—
日本義肢装具学会誌 , 37 (2) , 115-119  (2021)
https://doi.org/10.11267/jspo.37.115
原著論文7
田上未来,井上剛伸
障害者の自立支援機器開発の施策について
日本義肢装具学会誌 , 37 (2) , 12-114  (2021)
https://doi.org/10.11267/jspo.37.112
原著論文8
原 陽介
バイオデザインによる機器開発と人材育成
新潟医療福祉会誌 , 21 (3) , 137-138  (2021)
https://doi.org/10.34540/niigatajohewewa.21.3_137
原著論文9
原 陽介
医療機器開発のための技を伝える
リハビリテーション・エンジニアリング , 36 (2) , 118-121  (2021)
https://doi.org/10.24691/resja.36.2_118
原著論文10
浅川 育世
障がい者の支援機器開発に携わる医療・福祉・工学分野の人材育成モデルの構築に向けて:療法士養成施設教員の立場から「PT/OT教育アンケート調査結果紹介」
新潟医療福祉会誌 , 21 (3) , 141-142  (2021)
https://doi.org/10.34540/niigatajohewewa.21.3_141
原著論文11
大西 秀明
第21回新潟医療福祉学会「大会長印象記」
新潟医療福祉会誌 , 21 (3) , 132-132  (2021)
https://doi.org/10.34540/niigatajohewewa.21.3_132
原著論文12
出江 紳一
医工連携を実践するリハビリテーション人材の育成
新潟医療福祉会誌 , 21 (3) , 134-135  (2021)
https://doi.org/10.34540/niigatajohewewa.21.3_134

公開日・更新日

公開日
2024-03-26
更新日
2025-06-17

収支報告書

文献番号
202218002Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
20,000,000円
(2)補助金確定額
19,977,766円
差引額 [(1)-(2)]
22,234円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,911,317円
人件費・謝金 4,211,216円
旅費 1,143,756円
その他 8,674,477円
間接経費 4,037,000円
合計 19,977,766円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2024-03-27
更新日
2025-06-17