文献情報
文献番号
202217008A
報告書区分
総括
研究課題名
認知症診療医のための「特発性正常圧水頭症の鑑別診断とアルツハイマー病併存診断、および診療連携構築のための実践的手引き書と検査解説ビデオ」作成研究
課題番号
22GB1002
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
数井 裕光(高知大学 教育研究部医療学系臨床医学部門)
研究分担者(所属機関)
- 伊関 千書(東北大学病院 リハビリテーション部)
- 中島 円(順天堂大学 医学部)
- 鐘本 英輝(大阪大学 大学院医学系研究科)
- 森 悦朗(東北大学大学院 医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 認知症政策研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
11,539,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
認知症施策推進大綱においては、認知症性疾患に罹患しても認知症状態にならないよう進行を遅らせることが重視されている。特発性正常圧水頭症(iNPH)は早期に診断し、シャント術で治療することで症状を進行させないことのみならず、症状を改善させることも可能な病態である。しかし良好なシャント術成績を得るためには、早期発見、アルツハイマー病(AD)やレビー小体病(LBD)等の変性疾患との鑑別/併存診断、認知症診療医と脳神経外科医との円滑な診療連携が必要である。しかし2019年度に我々が行った厚生労働省老人保健健康増進事業調査によって、認知症疾患医療センターの認知症診療医のiNPHに関する知識や診療が十分でないこと、認知症診療医と脳神経外科医との連携が円滑で無いこと等が明らかになった。そこで本研究では、認知症診療医にiNPH診療のエッセンスを理解し、かつ参画してもらい、さらに脳神経外科医との診療連携を円滑にするための「認知症診療医のためのiNPH鑑別/併存診断と治療、および診療連携構築のための実践的手引き書と検査解説ビデオ」を作成し公開する。
研究方法
2022年度には「2-3 結果と考察」の項目に挙げた点について文献調査を行った。また検査解説ビデオの項目として重視しているCSFタップテストについては日本正常圧水頭症学会会員に対する、また認知症診療医と脳神経外科医との円滑な診療連携方法確立については、日本脳神経外科学会会員に対するアンケート調査を計画した。さらにAD病理が併存したiNPH例に対するシャント術の有益性を明らかにするために実施している多施設共同ランダム化対照試験SINPHONI-3の症例登録を進めた。
結果と考察
文献調査の結果、iNPH診療における問題点としては、受診していない/適切に診断されていないiNPH患者がいる、iNPHと類似疾患との鑑別/併存診断法が明らかになっていない、変性疾患等を併存したiNPH例に対するシャント術の実施基準が明確でないこと等が明らかになった。AD、LBDとiNPHとの鑑別/併存診断法については、ADにおいてはCSFタップテストが重要であることが明らかになった。LBDにおいては、上肢・体幹に筋強剛とすくみ足が目立たない場合はLBDの併存を示唆しないiNPHであること、ドパミントランスポーター画像が有用であることが明らかになった。またこれらの知見に基づいた、シャント術とL-DOPA投与による治療アルゴリズム(案)を作成した。ADやPDなどを併存したiNPH例に対するシャント術の有用性については、長期予後では併存疾患のないiNPHよりも劣るものの,治療効果はあることを明らかにした。CSFタップテストにおいては、歩行障害はTUGで、認知障害はMMSEとFABで評価されていたが、評価時期は施設によって多様であった。
次年度に実施する2つのアンケート調査フォームを高知大学次世代医療創造センターのウエブサイト上に構築して、専門家の校閲とブラッシュアップを経て完成させた。前者のアンケート項目としては、一般脳神経外科医のiNPH患者の診療状況、シャント術実施に対して消極的になる症例の特徴などを加えた。後者に関しては、評価方法と実施時期等についての項目を加えた。SINPHONI-3については、2022年度末までに新たに2施設が症例登録を行い,8例が新規登録され,2022年度末現在の全登録数が30例となった。
文献調査において、我が国から発表された文献において、iNPH診療における問題点として明らかになった項目は、当初計画で、本実践的手引き書の内容として記載しようと考えていた「iNPHの発見方法」、「iNPHとAD、LBD等の類似した症候を呈する疾患との鑑別/併存診断法」、「併存疾患を有するiNPHに対するシャント術適応」であったため、これらは的を射ていたと考えられた。しかし文献調査の結果、後者2つの項目についてのエビデンスは十分ではなく、今後もエビデンスの蓄積が必要だと考えられた。このエビデンスが不足していることも含めて、実践的手引き書には記載する予定である。
CSFタップテストの方法と認知症診療医と脳神経外科医との連携確立の方法については、ともに我が国の臨床場面を考慮して、使用しやすい現実的なものにする必要がある。そのためには、我が国の現状を知る必要があるので、来年度のアンケート調査の結果が重要と考えている。
次年度に実施する2つのアンケート調査フォームを高知大学次世代医療創造センターのウエブサイト上に構築して、専門家の校閲とブラッシュアップを経て完成させた。前者のアンケート項目としては、一般脳神経外科医のiNPH患者の診療状況、シャント術実施に対して消極的になる症例の特徴などを加えた。後者に関しては、評価方法と実施時期等についての項目を加えた。SINPHONI-3については、2022年度末までに新たに2施設が症例登録を行い,8例が新規登録され,2022年度末現在の全登録数が30例となった。
文献調査において、我が国から発表された文献において、iNPH診療における問題点として明らかになった項目は、当初計画で、本実践的手引き書の内容として記載しようと考えていた「iNPHの発見方法」、「iNPHとAD、LBD等の類似した症候を呈する疾患との鑑別/併存診断法」、「併存疾患を有するiNPHに対するシャント術適応」であったため、これらは的を射ていたと考えられた。しかし文献調査の結果、後者2つの項目についてのエビデンスは十分ではなく、今後もエビデンスの蓄積が必要だと考えられた。このエビデンスが不足していることも含めて、実践的手引き書には記載する予定である。
CSFタップテストの方法と認知症診療医と脳神経外科医との連携確立の方法については、ともに我が国の臨床場面を考慮して、使用しやすい現実的なものにする必要がある。そのためには、我が国の現状を知る必要があるので、来年度のアンケート調査の結果が重要と考えている。
結論
文献調査を概ね終了でき、本実践的手引き書の内容のエッセンスが固まった。また次年度からの全国レベルの2つのアンケート調査の準備が整った。
公開日・更新日
公開日
2023-07-28
更新日
-