療養場所の違いに応じた認知症者のエンドオブライフケア充実に向けての調査研究-COVID-19流行の影響も踏まえて-

文献情報

文献番号
202217004A
報告書区分
総括
研究課題名
療養場所の違いに応じた認知症者のエンドオブライフケア充実に向けての調査研究-COVID-19流行の影響も踏まえて-
課題番号
21GB1001
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
三浦 久幸(国立研究開発法人国立長寿医療研究センター 在宅医療・地域医療連携推進部)
研究分担者(所属機関)
  • 葛谷 雅文(名鉄病院)
  • 会田 薫子(東京大学 大学院人文社会系研究科)
  • 大河内 二郎(社会医療法人 若弘会 介護老人保健施設 竜間之郷)
  • 平原 佐斗司(東京ふれあい医療生活協同組合 研修・研究センター)
  • 山中 崇(東京大学 医学部附属病院)
  • 平川 仁尚(あいち健康の森健康科学総合センター)
  • 石山 麗子(国際医療福祉大学大学院 医療福祉学研究科)
  • 斎藤 民(国立長寿医療研究センター 老年社会科学研究部)
  • 高梨 早苗(国立長寿医療研究センター 在宅医療・地域医療連携推進部)
  • 島田 千穂(佐久大学 人間福祉学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 認知症政策研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
7,845,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
当研究は、エビデンスに基づき、最期の療養の場の違い(病院、在宅、介護保険施設)に応じた認知症者へのエンドオブライフ・ケアの指針・手引きを作成することを目的とする。
エンドオブライフ・ケアについては療養の場の違いにより、提供可能な医療処置や介護サービスの内容・量共に異なるため、療養の場ごとの指針や手引きが必要である。
本研究では、これまで各研究で行ってきた、認知症者のエンドオブライフ・ケア(最多の死因である肺炎を含む)に関しての文献的エビデンス抽出、認知症者の意思決定支援を進める上での課題抽出、高齢者における意思決定支援推進に関わるこれまでの実績を基に、当該研究計画を立案した。
調査・手引き書作成においてはCOVID-19流行の影響を踏まえる。
療養の場の違いに応じたエンドオブライフ・ケアの手引きは国内では初めてである。
研究方法
認知症者の緩和ケア技術評価ワーキンググループ、意思決定支援プロセス評価ワーキンググループとも令和3年度に行われたフォーカスグループ・インタビュー(以下、FGI)の評価を行った。
この質的研究内容を受けて実態調査を行った。全国の療養病床・介護老人保健施設(以下、老健)・訪問看護ステーション(以下、訪看)から無作為に1,000件ずつ、合計3,000か所を抽出し、各施設1名の管理職を担う看護職計3,000名を対象とした。調査票は抽出された施設の長宛に郵送し、管理者(看護職)1名を選んで回答してもらうよう依頼し、回答者が返送用封筒で返送することで調査票を回収した。
アンケート項目としては認知症者の苦痛評価法、苦痛に対する薬物療法(種類含む)、非薬物療法の実施状況、COVID-19による影響の有無(隔離による興奮等)を含んだ。
結果と考察
FGIの評価結果を質的に分析し、緩和ケア技術については(苦痛の)早期発見や多職種による総合評価など8つのテーマが抽出された。さらに意思決定支援についてはラポール形成、意思決定能力の評価など7つのテーマが抽出された。
実態調査では586通の調査票が得られた。そのうち、研究利用に関する同意を得られたのは537通であった(有効回収率16.7%)。施設別では療養病床100通(同10.0%)、老健170通(同17.0%)、訪看230通(同23.0%)であった。緩和ケアの実施状況では、3施設共通して実施率が5割以上だったのは、「痛みや苦痛のアセスメント」「医師による痛み止め処方体制」「痛みや苦痛の多職種カンファ」であった。施設によって傾向が異なる項目として、「スケールを用いた痛み評価」は老健で低い実施率であった。「スピリチュアルペインへの注目」「家族の緩和ケア参加の支援」は訪看でのみ実施率が高かった。逆に「多職種でのBPSDの評価・カンファ」は訪看でのみ実施率が低かった。意思決定支援の実施状況では、施設によって傾向が異なる項目として、「意思表明・実現支援」「ライフレビュー支援」は療養・老健で低かった。一方、「キーパーソン家族の意向確認」は3施設とも高く、家族中心の意思決定支援が行われている可能性を示唆する結果であった。
緩和ケア技術については苦痛評価の実施や多職種でのBPSD評価など、療養場所別に特有の課題が認められた。一方、意思決定支援については特に施設や療養病床では家族中心の意思決定支援が行われており、認知症者本人の意思決定が必ずしも徹底されていない状況が示唆された。このため令和5年度に作成予定の指針には療養場所別の緩和ケアに関するunmet needsに対応するための手引き的な方策提示や療養場所に共通して「認知者本人を中心とした意思決定支援」の方向性を強く示すことが必要であると考えられた。
本研究により最も期待できる効果は、医療・介護現場の認知症の緩和ケア技術と本人の意向を尊重した意思決定支援技術の向上である。
認知症施策大綱では、(4)医療・介護の手法の普及・開発において「人生の最終段階にあっても本人の尊厳が尊重された医療・介護等が提供されることが重要である」としている。しかしながら、具体的にどのような医療・介護等が提供されるべきか、これまで明確となっておらず、本研究事業により、具体的な医療・介護等の内容が明示されることで、施策大綱の方針に沿った臨床実践が広がることが期待できる。
結論
令和4年度は【療養のFG場に共通する、あるいは療養場所の違いを考慮した、指針に入れるべき項目を明確化】するために令和3年度に行ったFGIによる質的調査の結果解析を基に療養場所別の実態調査を行った。この結果、緩和ケア技術、意思決定支援ともに療養場所に共通するあるいは療養場所により異なる課題があることが見える化できた。令和5年度はこの結果を基に指針作成を行う計画である。

公開日・更新日

公開日
2023-07-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2023-07-28
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202217004Z