認知症施策の評価・課題抽出のための研究:領域横断・融合的アプローチと大規模データベースの実践的活用

文献情報

文献番号
202217003A
報告書区分
総括
研究課題名
認知症施策の評価・課題抽出のための研究:領域横断・融合的アプローチと大規模データベースの実践的活用
研究課題名(英字)
-
課題番号
20GB1003
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
今中 雄一(京都大学 医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 広井 良典(京都大学 人と社会の未来研究院)
  • 山田 文(京都大学 法学研究科)
  • 佐々木 一郎(同志社大学 商学部)
  • 前田 昌弘(京都大学 人間・環境学研究科)
  • 佐々木 典子(京都大学 医学研究科)
  • 武地 一(藤田医科大学 医学部)
  • 中村 桂子(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 林田 賢史(産業医科大学 大学病院)
  • 村上 玄樹(産業医科大学 大学病院)
  • 原 広司(横浜市立大学 国際商学部)
  • 國澤 進(京都大学 医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 認知症政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
8,077,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
認知症施策推進大綱の目標実現に向けて「共生」と「予防」の推進・進捗把握と評価方策を確立するために以下を目的とする。(1)「共生」概念を、学際的アプローチを以て、多側面から社会・生活環境の具体的なあり方を表現し、それらを、認知症の人とその家族にやさしい健康まちづくりのガイドとして示す。(2)「共生」の側面に加え、「予防」の側面から社会経済因子、関連資源、疫学指標等を基盤として、指標間の関連を明らかにしながら、自治体レベルで評価できるよう、包括的な評価指標体系を構築する。重要なアウトカム指標として、健康余命(平均自立期間)や、認知症の自立度のデータに基づく健康余命(以下、認知症自立度健康余命と呼ぶ)を全国の市町村において計測するなど、「認知症の発症予防や認知症発症後、重症化のスピードを遅らせること」に役立つ指標を開発する。
研究方法
(1)多領域の学際的専門家で過去2年間重ねた議論をもとに、「共生」の概念の社会でのあり方を具体的に示す。認知症の人とその家族にやさしい健康まちづくりガイドとなるコンセプトシート(昨年度作成)を発展させたパンフレットの作成、さらには書籍出版を目指す。
(2)「共生」「予防」の視点から、全国の市町村レベルや二次医療圏で認知症関連の施策・社会状況を可視化・評価するための指標体系を構築する。今年度は、市町村における認知症高齢者の日常生活自立度を不健康とした場合の健康余命(以下、認知症自立余命)の算出及び可視化、認知症にやさしいまちづくりに関する地域の各側面の指標を収集・分類したデータベースの拡充、認知症施策推進大綱KPIの実施状況を含め、認知症自立余命の関連因子を調査する。
結果と考察
(1)「共生」の概念整理については、認知症の人とその家族にやさしい、即ち全世代にやさしい健康まちづくりガイドの基盤として前年度に作成したコンセプトシートを発展させ、概念・具体像・提案を示すパンフレットを作成した。さらに詳細を書籍「認知症にやさしい健康まちづくりガイドブック 地域共生社会に向けた15の視点」に著し、広く一般市民や全国の自治体・官公庁関連部署等に発信し、「認知症をとりまく状況に加え、Well-beingの産業別要素分解など、フィジカルなものを超えた、あるいはこれと融合したまちのあり方を追い求めていく必要性を一層感じた」(国交省の方)、「認知症の予防については、個々の因子でなく多因子へのアプローチが有効であるとの記述に特に共感した。認知症施策を行う行政、関係機関などでは、有用な一冊になるのではないか」(A市健康増進課の方)等のフィードバックを得た。
(2)「認知症の発症予防や認知症発症後、重症化のスピードを遅らせること」に役立つ指標開発にあたりDementia Free Life Expectancyに関連しうる研究のレビュー結果を踏まえ、認知症自立余命を開発し全国各地域で計測した。即ち、要介護度1・2、認知症自立度1・2の各時点を基準として市町村、二次医療圏ごとに算出、地図等で可視化、地域差を示した。リスク調整済要介護度悪化指標(OE値) を算出した。人口規模の小さい市町村における指標値不安定にShrinkage calculation(縮小推定)の手法を用いて対応した。
評価指標体系の基礎として地域レベルの多様な社会経済資源等の指標データベースを、産官学民コンソーシアム“PEGASAS”によるHealthy Smart City 構造モデルの12領域に整理し、再構築・拡充した。
地域差の要因分析では、認知症施策推進大綱KPIの市町村単位の実施状況データと認知症自立余命との関連を調査した。認知症カフェの設置状況、認知症地域支援推進員の数、認知症初期集中支援チームの人数が0歳時、40歳時、65歳時の認知症自立余命との正の相関がみられた。
結論
(1)「共生」の包括的な概念の具現化に向け、多領域の学際的専門家の深い洞察と経験をもとに数年にわたり議論を重ね、認知症の人とその家族にやさしい社会の概念を表す具体像・提案・ガイドに相当するパンフレットを作成した。また「認知症にやさしい健康まちづくりガイドブック 地域共生社会に向けた15の視点」(今中雄一編著.学芸出版社)を著し、行政等からポジティヴなフィードバックが得られた。
(2)認知症諸施策の包括的な評価体系を構築するべく、地域レベルの多様な指標のデータベースの再構築を進めるとともに、認知症高齢者の日常生活自立度データを活用して開発した健康余命指標(認知症自立度健康余命など)を、自治体毎・二次医療圏毎に計測した。さらに、認知症施策推進大綱KPIの実施状況を含む各種地域と上記健康余命との関連、それらの地域差の要因について、探索的な分析結果を得た。

公開日・更新日

公開日
2023-07-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-07-28
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202217003B
報告書区分
総合
研究課題名
認知症施策の評価・課題抽出のための研究:領域横断・融合的アプローチと大規模データベースの実践的活用
研究課題名(英字)
-
課題番号
20GB1003
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
今中 雄一(京都大学 医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 広井 良典(京都大学 人と社会の未来研究院)
  • 山田 文(京都大学 法学研究科)
  • 佐々木 一郎(同志社大学 商学部)
  • 前田 昌弘(京都大学 人間・環境学研究科)
  • 村嶋 幸代(大分県立看護科学大学)
  • 佐々木 典子(京都大学 医学研究科)
  • 武地 一(藤田医科大学 医学部)
  • 中村 桂子(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 林田 賢史(産業医科大学 大学病院)
  • 村上 玄樹(産業医科大学 大学病院)
  • 原 広司(横浜市立大学 国際商学部)
  • 國澤 進(京都大学 医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 認知症政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
認知症施策推進大綱の目標実現に向けて「共生」と「予防」の推進・進捗把握と評価方策を確立するために以下を目的とする。(1)「共生」概念を、学際的アプローチを以て、多側面から社会・生活環境の具体的なあり方を表現し、それらを、認知症の人とその家族にやさしい健康まちづくりのガイドとして示す。(2)「共生」の側面に加え、「予防」の側面から社会経済因子、関連資源、疫学指標等を基盤として、指標間の関連を明らかにしながら、自治体レベルで評価できるよう、包括的な評価指標体系を構築する。重要なアウトカム指標として、健康余命(平均自立期間)や、認知症の自立度に基づく健康余命(以下、認知症自立度健康余命)を全国の市町村において計測するなど、「認知症の発症予防や認知症発症後、重症化のスピードを遅らせること」に役立つ指標を開発する。また、認知症自立余命延伸への施策提案につなげるべく、認知症自立余命やその地域差の関連要因(認知症施策推進大綱のKPI含む)を探索する。
研究方法
(1)多領域の学際的専門家でレビュー・議論を重ね、多側面から社会・生活環境における「共生」の在り方について、全体枠組みの構築、現場のエビデンス、学際的な理論共有を行い、「共生」の概念の社会でのあり方を具体的に示す。議論の内容を発展させ、認知症の人とその家族にやさしい健康まちづくりガイド、さらには書籍出版を目指す。
(2)「共生」「予防」の視点から、全国の市町村レベルや二次医療圏で認知症関連の施策・社会状況を可視化・評価するための指標体系を構築する。今年度は、認知症高齢者の日常生活自立度を不健康とした場合の健康余命(以下、認知症自立余命)の算出及び可視化、認知症にやさしいまちづくりに関する地域の各側面の指標を収集・分類したデータベースの構築、認知症自立余命の地域差の要因分析を行う。さらに認知症施策推進大綱KPIの実施状況と認知症自立余命の関連を調査する。
結果と考察
(1)「共生」の概念について、まずコンセプトシートを作り、さらにパンフレット「地域共生社会の実現に向けて認知症にやさしい健康まちづくりの提案」を作成した。さらに、書籍「認知症にやさしい健康まちづくりガイドブック 地域共生社会に向けた15の視点」を出版し、広く一般市民や全国の自治体・官公庁関連部署等に発信した。「認知症をとりまく状況に加え、Well-beingの産業別要素分解など、フィジカルなものを超えた、あるいはこれと融合したまちのあり方を追い求めていく必要性を一層感じた」、「認知症の予防については、個々の因子でなく多因子へのアプローチが有効であるとの記述に特に共感した」等のフィードバックを得た。
(2)「認知症の発症予防や認知症発症後、重症化のスピードを遅らせること」に役立つ指標開発にあたりDementia Free Life Expectancyに関連しうる研究をレビューし、認知症自立余命を開発し全国各地域で計測した。即ち、要介護度1・2、認知症自立度1・2を基準として市町村、二次医療圏ごとに算出し地域差を示した。また、地域の介護の質指標としてリスク調整済要介護度悪化指標OE値)を市町村単位で算出した。人口規模の小さい市町村における指標値不安定に縮小推定を用いて対応した。
評価指標体系の基礎として地域レベルの多様な社会経済資源等の指標データベースを、産官学民コンソーシアムPEGASASのHealthy Smart City 構造モデルの12領域に整理し再構築した。認知症自立余命の関連因子についてPartial Least Square回帰モデルで解析し、男性が女性より居住地の特徴に大きく影響されることが示唆された。また男女ともに65歳以上人口あたり認知症サポーター数、短大以上卒割合が正に、15歳以上人口あたりたばこ税が負に関連した。認知症施策推進大綱KPIの市町村単位の実施状況データとの関連を探索的に調査した。認知症カフェの設置状況、認知症地域支援推進員の数、認知症初期集中支援チームの人数が正に相関した。
結論
(1)「共生」の包括的な概念を具現化するべく、多領域の学際的専門家で議論を重ね、パンフレットにて要点を示し、さらに詳細を「認知症にやさしい健康まちづくりガイドブック 地域共生社会に向けた15の視点」(今中雄一編著、学芸出版社)に著し、行政等からポジティヴなフィードバックが得られた。
(2)認知症諸施策の包括的な評価体系を構築するべく、地域レベルの多様な指標のデータベースの構築を進め、 全国の市町村で認知症自立度余命(一つの健康余命指標)、リスク調整済要介護度悪化指標(OE値)などを、自治体毎・二次医療圏毎に計測し、認知症施策推進大綱KPI等の地域変数との関係や地域差の要因について、探索的な分析結果を得た。

公開日・更新日

公開日
2023-07-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-07-28
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202217003C

収支報告書

文献番号
202217003Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
10,500,000円
(2)補助金確定額
10,500,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 841,447円
人件費・謝金 2,712,798円
旅費 283,740円
その他 4,239,015円
間接経費 2,423,000円
合計 10,500,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2024-07-16
更新日
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