自立支援に資する介護等の類型化及びエビデンスの体系的な整理に関する研究

文献情報

文献番号
202216014A
報告書区分
総括
研究課題名
自立支援に資する介護等の類型化及びエビデンスの体系的な整理に関する研究
課題番号
21GA2003
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
松田 晋哉(産業医科大学 医学部・公衆衛生学)
研究分担者(所属機関)
  • 田宮 菜奈子(国立大学法人筑波大学 医学医療系 / ヘルスサービス開発研究センター)
  • 福井 小紀子(国立大学法人 東京医科歯科大学 大学院保健衛生学研究科)
  • 村松 圭司(産業医科大学 医学部 公衆衛生学)
  • 藤本 賢治(産業医科大学産業保健データサイエンスセンター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学政策研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
8,540,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
介護保険法の目的として、要介護者が「尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むこと」が掲げられている。。本研究は自立支援型介護自立支援に資する介護の方法等の類型化を行い、どのような介護の方法が、どのような利用者のどのようなアウトカムを改善するのかというエビデンスを示すことを目的とする。
研究方法
資料及び方法: 本研究では松田晋哉、田宮奈々子、福井小紀子の3名をそれぞれの分担研究の代表者として、以下の研究を行った。
【松田班】東日本の一自治体の医療及び介護レセプト及び介護認定調査票を個人単位で連結したデータベースを用いた回復期リハビリテーション病棟入所者の生命予後に関連する要因の検討(回復期リハ病棟に入院した65歳以上の患者について入院6か月前から2021年3月までの医療介護サービス利用状況及び主たる傷病の有病状況を分析)、および要介護認定等基準時間及びその構成要素である介護関連時間に影響を与える要因の分析(2014年4月から2021年3月までの間に4回以上認定審査を受けた者の介護認定調査票を用いて、1回目と4回目の要介護度を比較し、その変化量別に認定調査票に記載のある要介護認定等基準時間等の変化(最後の判定時-最初の判定時)を検証した。また、各基準時間及び観察期間中の医療介護サービス利用状況を説明変数とした多変量解析を行い、要介護度の変化に影響を及ぼす要因について検討を行った。
【田宮班】二次データである2018年4月〜2019年3月の茨城県介護レセプトデータを使用した。2018年7月〜12月の間に在宅から介護老人福祉施設(以下、特養)に入所した者を対象とし、入所前月の福祉用具貸与サービスの利用状況(対象者に占める入所前月に福祉用具貸与サービスを利用していた者の割合)を福祉用具貸与の対象である13品目別に算出した。車いすについては標準型車いすと多機能型車いすに分類し、貸与していた製品も調査し、さらに特養入所前に標準型車いすを使用していた者と多機能型車いすを使用していた者における入所後の新規骨折発生者の割合も算出した。
【福井班】要介護3以上の中重度の利用者を対象とする介護医療院、介護老人保健施設、特別養護老人ホームの介護施設内で日常のケアに組み込まれているケアと医療介護連携についての具体的な内容のデータ収集を行い、自立支援に資する介護の類型化及び利用者の特性の整理方法について検討、アウトカムとの関連性についてのエビデンスを整理した。
結果と考察
【松田班】回復期リハビリテーション病棟入所者の生命予後に関連する要因の検討結果では、腎不全(Hazard Ratio=1.383; 以下同じ)、骨折(1.188)、心不全(1.254)、認知症(1.364)、悪性腫瘍(1.421)。肺炎(1.744)、脳血管障害CVD(1.165)、貧血(1.215)の診断がある群で有意に死亡のハザード比が高くなっていた。要介護認定等基準時間及びその構成要素である介護関連時間に影響を与える要因の分析では、要介護度の悪化には年齢が高いこと、排泄、移動、清潔保持の自立度および医療的ケアが必要な状態の影響が大きいことが明らかとなった。
【田宮班】介護保険入所前月に福祉用具貸与サービスを利用していた者は特養入所者で約3割存在した。また、入所前に車いすを利用していた者においては多機能型車いすを利用していた者が約半数存在していることがわかり、標準型車いす使用者に比べ多機能型車いす使用者における入所後の新規骨折発生者が多い傾向が見られた。
【福井班】自立支援型介護は、入所者と密にかかわり個別の支援を行っていくことから、画一的な介護を行うよりもスタッフの負担が大きいと考える。これらの前提があることで、スタッフ個々が同一の目的目標をもってケアに当たることができ、成果も見えやすいことから、スタッフの意欲にもつながり、入所者にとって良い支援につながっているのではないかと考える。
結論
自立した生活を送るためには、介護の現場における慢性期の医療ニーズの管理、特に急性期イベントの予防が重要であることが明らかとなった。
また、要介護度の悪化には年齢が高いこと、排泄、移動、清潔保持の自立度などの影響が大きいことが明らかとなった。これらの分析結果より、排泄、移動、清潔保持の自立度を維持向上するための下肢筋力の強化、日常生活の中で生活リハビリテーションが重要であると考えられた。
福祉用武具に関しては入所前と入所後で継続的に同様の福祉用具を使用できないためにこのような負の影響が起こっている可能性があり、福祉用具を介護施設入所後も継続的に使用できるシステムの構築が望まれる。
施設関係者を対象とした構造化されたインタビュー結果では、自立支援型介護の効果が確認された。

公開日・更新日

公開日
2023-05-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-05-29
更新日
2023-05-30

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202216014Z