在宅・介護施設等における事故報告に関連する事故の予防及び再発防止の研究

文献情報

文献番号
202216012A
報告書区分
総括
研究課題名
在宅・介護施設等における事故報告に関連する事故の予防及び再発防止の研究
課題番号
21GA2001
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
種田 憲一郎(国立保健医療科学院 国際協力研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 後 信(財団法人日本医療機能評価機構 医療事故防止事業部)
  • 森山 葉子(国立保健医療科学院 医療・福祉サービス研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学政策研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
5,602,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
介護施設において、安全な介護の実施が求められている。超高齢社会を迎えて、介護施設の果たす役割は益々大きくなるため、国民の介護施設に対する様々な要求が高まる可能性が考えられる。しかし介護施設の種類で医療的ケアを実施する職種や構成が異なることから、介護施設で発生する介護ケアに関する事故については、発生するプロセスや背景要因、根本原因などは、介護施設に特有の事故である可能性が示唆される。従って、介護施設において発生した介護事故等の事例を収集し、詳細に分析することが求められる。そこで、本研究では、介護老人保健施設等を対象とした調査・ヒアリング、既存調査・文献(判例を含む)の検索も実施する。研究2年目は、海外の報告制度、介護安全の取組みの全体像と、とくに誤嚥・窒息についても深めた分析を行うことを目的とする。
研究方法
7法人・団体の介護老人保健施設等を対象とした調査・ヒアリング、更に1法人・団体における具体的な介護安全に資する人材育成の取組み(研修)と評価のヒアリング、文献等(判例を含む)の検索も実施した。
結果と考察
介護施設等における誤嚥・窒息に関わる判例のレビュー(1988年12月から2020年12月)からは、30件が抽出された。海外の報告制度について、イギリス(イングランド)、オーストラリア、アメリカ、アメリカ・マサチューセッツ州においては、オンラインで提出可能なシステムを採用し、イギリスにおいては報告者を広く設定しており、一般人でも登録でき、報告手続きの簡便さが重要である。判例や国内外での取組みなどから、検討すべき有害事象(転倒・誤嚥などによる傷害)の予防及び再発予防策の類型化(体系的な考え方)として、以下の7つの視点が考えられた:①有害事象の起こりやすさ(転倒、誤嚥など)の把握と対応、②有害事象につながる行動を早期発見、③有害事象につながる行動があっても傷害を起こしにくい予防、④有害事象の早期発見、⑤有害事象の早期治療、⑥介護施設と医療機関との連携(とくに④と⑤に関連して)、⑦回避困難であった事例を訴訟に発展させない取組み。利用者・家族と安全に関わるリスク等の共有と協働した取組みが必要であるが、記の①とも関連して、個々の利用者ごとに把握された有害事象の起こりやすさと、それへの対応方法について(施設の規模・機能による限界も含めて)、施設ごとの事例解説などを作成して利用者・家族と共有する。このとき、過剰な予防策は利用者の自律性・QOL・機能回復の制限となることの理解・協力を求めて、利用者・家族とも協働する。
結論
介護現場の取組み状況についてのヒアリング・意見交換会から、事故予防に体系的に取組むための仕組み(報告、分析、対策立案、実施、評価など)と利用者・家族も含めて多職種で協働する訓練を整備・推進する取組みが、さらに期待される。

公開日・更新日

公開日
2023-05-29
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-05-30
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202216012B
報告書区分
総合
研究課題名
在宅・介護施設等における事故報告に関連する事故の予防及び再発防止の研究
課題番号
21GA2001
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
種田 憲一郎(国立保健医療科学院 国際協力研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 後 信(財団法人日本医療機能評価機構 医療事故防止事業部)
  • 森山 葉子(国立保健医療科学院 医療・福祉サービス研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学政策研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
介護施設において、安全な介護の実施が求められている。超高齢社会を迎えて、介護施設の果たす役割は益々大きくなるため、国民の介護施設に対する様々な要求が高まる可能性が考えられる。しかし介護施設の種類で医療的ケアを実施する職種や構成が異なることから、発生するプロセスや背景要因、根本原因などは、介護施設に特有の事故である可能性が示唆される。従って介護施設において発生した介護事故等の事例を収集し、詳細に分析することが求められる。そこで、本研究(2年間)は、介護老人保健施設等を対象とした調査・ヒアリング、既存調査・文献(判例を含む)の検索も実施することを目的とする。
研究方法
研究1年目は、6法人・団体からのヒアリング、介護現場の取り組み状況の意見交換会(9の介護施設から参加)、介護安全の取組みの全体像の検討と、とくに転倒について深めた分析を行った。研究2年目は、更に7法人・団体からのヒアリング、文献等(判例を含む)の検索も実施し、とくに誤嚥・窒息についても分析を行った。また海外における転倒予防の取組み、報告制度についてもインターネットを用いて調査した。
結果と考察
介護施設等における判例のレビュー(1988年12月から2022年11月)からは、転倒に関わる54件、また誤嚥・窒息に関わる30件が抽出された。また、海外における転倒予防に関する取組みについては、イギリスなどで行政機関等によりステートメント・指針が発出され、高齢者個別の転倒リスクの把握・介入の重要性、転倒後の適切な対応について言及されていた。海外の報告制度については、オンラインで提出可能なシステムを採用し、イギリスにおいては一般人でも登録でき、報告手続きの簡便さが重要である。判例や国内外での取組みなどから、検討すべき有害事象(転倒・誤嚥などによる傷害)の予防及び再発予防策の類型化(体系的な考え方)として、以下の7つの視点が考えられた:①有害事象の起こりやすさ(転倒、誤嚥など)の把握と対応、②有害事象につながる行動を早期発見、③有害事象につながる行動があっても傷害を起こしにくい予防、④有害事象の早期発見、⑤有害事象の早期治療、⑥介護施設と医療機関との連携(とくに④と⑤に関連して)、⑦回避困難であった事例を訴訟に発展させない取組み、利用者・家族と安全に関わるリスク等の共有と協働した取組みが必要である。上記①とも関連して、個々の利用者ごとのリスク評価と、それへの対応方法について(施設の規模・機能による限界も含めて)、施設ごとの事例解説などを作成して利用者・家族と共有する。このとき、過剰な予防策は利用者の自律性・QOL・機能回復の制限となることの理解・協力を求めて、利用者・家族とも協働する。
結論
介護現場の取組み状況についてのヒアリングなどからは、介護安全の全体構成(案)を参考に、事故予防に体系的に取組むための仕組み(報告、分析、対策立案、実施、評価など)と利用者・家族も含めて多職種で協働する訓練を整備・推進する取組みが、さらに期待される。

公開日・更新日

公開日
2023-05-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-05-30
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202216012C

成果

専門的・学術的観点からの成果
介護施設等における転倒及び誤嚥・窒息に関わる判例のレビュー、国内外での介護安全に関する取組みの情報収集などから、検討すべき有害事象(転倒・誤嚥などによる傷害)の未然防止及び再発予防策の類型化(体系的な考え方)として、7つの視点を提示した。利用者・家族と安全に関わるリスク等の共有と協働した取組みの必要性を含むもので、WHOやOECDなどが提案する患者・家族との協働というグローバルな視点とも一致する予防策である。
臨床的観点からの成果
研究1年目には、6法人・団体からのヒアリング、介護現場の取り組み状況の意見交換会(9の介護施設から参加)、研究2年目には、更に7法人・団体からのヒアリングによって、介護安全の取組みの全体像の検討も行い、介護安全の全体構成(案)も提示した。これによって、介護現場において期待される事故予防に資する体系的な仕組みづくり(報告、分析、対策立案、実施、評価など)と利用者・家族も含めて多職種で協働する訓練など、戦略的に介護安全を推進する示唆を得られる。
ガイドライン等の開発
該当なし
その他行政的観点からの成果
研究で得られた知見を基に、第26回社会保障審議会介護給付費分科会介護報酬改定検証・研究委員会の資料となる介護保険施設のリスクマネジメントに関する調査研究事業にも参画し、当該調査研究の計画・実施・とりまとめにも貢献した。得られた都道府県の国に対する要望として、「介護事故情報の活用に関する好事例の共有」「介護事故情報の集計フォーマット・ツールの配布」、「全国の介護事故情報を国において分析した結果等のフィードバック」などが示された。
その他のインパクト
研究で得られた知見を基に、2023年5月に開催されたOECD(経済協力開発機構)の医療の質及びアウトカム作業部会(Working Party on Health Care Quality and Outcomes)において、介護サービスの質及び安全性を把握するための指標開発の検討をする際に、日本における介護安全の取り組みの現状も紹介し、グローバルに介護安全を推進する取組みの検討についても貢献した。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
審議会分科会の資料作成1件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
国際会議における発信1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2023-06-22
更新日
-

収支報告書

文献番号
202216012Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,602,000円
(2)補助金確定額
5,602,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,791,976円
人件費・謝金 602,388円
旅費 122,407円
その他 3,085,229円
間接経費 0円
合計 5,602,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2023-06-06
更新日
-