薬学的視点を踏まえた自立支援・重度化防止推進のための研究

文献情報

文献番号
202216010A
報告書区分
総括
研究課題名
薬学的視点を踏まえた自立支援・重度化防止推進のための研究
課題番号
22GA1005
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
溝神 文博(国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター 薬剤部)
研究分担者(所属機関)
  • 岡崎 光洋(東京大学 大学院薬学系研究科 医薬政策学講座)
  • 竹屋 泰(大阪大学 医学部)
  • 伊藤 直樹(国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター リハビリテーション科部)
  • 岡田 希和子(名古屋学芸大学 管理栄養学部)
  • 浜田 将太(一般財団法人 医療経済研究・社会保険福祉協会 医療経済研究機構 研究部)
  • 枝広 あや子(地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター 東京都健康長寿医療センター研究所)
  • 高橋 寛(岩手医科大学 薬学部 臨床薬学講座 地域医療薬学分野)
  • 小宮 仁(名古屋大学 医学部附属病院)
  • 水野 智博(藤田医科大学 医学部)
  • 長谷川 みどり(藤田医科大学 医学部)
  • 岸本 桂子(昭和大学 薬学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学政策研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
5,380,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
訪問薬剤管理指導において、ポリファーマシー対策等の薬学的管理を行う際には、情報収集が最も重要である。具体的には、詳細な処方歴や症状や病状だけでなく、認知機能、日常生活動作(ADL)、栄養状態、生活環境などの多角的な情報に基づく患者評価が必須であり、加えて、多職種での介入が重要となる。本研究では、こうしたチーム医療のモデルを訪問薬剤管理指導に活用するための問題点を明らかにし、その改善策を提示することを目的とする。具体的には、薬剤師が地域医療レベルで関連職種と情報共有を行う際の様式案及び体制構築を行い、各現場に実装しその効果検証を行う。
研究方法
1. 訪問薬剤管理指導に対する薬剤師と各職種との情報共有に関する実態調査と介護施設における多職種連携に関する実態調査を行った。
方法としては、URL、QRコードからの電子入力対応とし、全国の医療機能情報を検索できる情報サイトより検出し施設長宛てに案内を郵送する。なお、全国老人保健施設協会、岩手県薬剤師会、日本訪問リハビリテーション協会、全国介護老人保健施設協会、老年歯科医学会に依頼し会員に郵送もしくは一斉メールでアンケートのURL、QRコードを配布する。
薬剤師向けアンケート
① 訪問薬剤管理指導を実施している保険薬局、病院薬剤部に勤務する薬剤師
その他職種向けアンケート
② 訪問薬剤管理指導を実施している保険薬局、病院薬剤部から情報提供を受けたことのある   
施設の多職種(医師・歯科医師・看護職・ケアマネジャー・介護士・ホームヘルパー・医療ソーシャルワーカー/相談員・作業療法士・理学療法士・言語聴覚士・管理栄養士)
介護施設アンケート
③ 介護施設(特に介護老人保健施設及び介護医療院)に所属する薬剤師もしくは、介護施設に関わる薬剤師
の3群を対象とした。
2.訪問薬剤管理指導の実態調査 好事例収集
方法:担当施設及び関連施設に実態調査として聞き取り及び共有により処方適正化につながった好事例の収集を行った。
3.介護老人保健施設での薬剤師と各職種の情報共有の実態調査
(1) 老健薬剤師からのヒアリング調査
 5名の老健薬剤師から介護老人保健施設内及び施設外において、薬剤師と多職種連携についての現状のヒアリングを行うため、座談会を開催した。
結果と考察
①薬剤師向けアンケートでは、1196名からの回答を得た。服薬や薬剤に関する業務で行っていることとしては、残薬確認(97.2%)と服薬アドヒアランスの評価(84.5%)であったが、服薬動作の援助(15.6%)、口腔内の残薬の確認(6.0%)などは2割以下の実施であった。訪問薬剤管理指導の報告書は、医師(98.5%)とケアマネージャー(91.5%)と主に共有していた。また看護職(37.3%)やホームペルパー(9.8%)、介護士(9.5%)と共有していた。
②多職種向けのアンケートでは、567名(医師165名、歯科医師40名、看護職123名、ケアマネジャー21名、医療ソーシャルワーカー/相談員31名、作業療法士36名、理学療法士79名、言語聴覚士13名、管理栄養士47名、その他12名)から回答を得た。在宅患者訪問薬剤管理指導で薬剤師が行っている業務内容を把握している割合は、71.1%であった。追加で実施してほしい業務は、処方見直しや生活状況の聞き取り、他医療機関の処方情報が多かった。
③介護施設に関わる薬剤師75名から回答を得た。73件(97.3%)が服薬管理において多職種連携が必要であると回答し、「他職種から薬剤師への情報提供」が25件(40.3%)がその理由である。介護施設内での処方提案の実施において困難な点(時間、人員、知識・経験)(10点評価の7点以上を困難と区分した場合)項目ごとにみると、「時間」が23件(30.7%)、「人員」が22件(29.3%)、「知識・経験」が27件(36.0%)と、いずれも約3割で困難であると考えられていた。好事例集の作成及び介護老人保健施設の薬剤師による聞き取り調査を実施し、簡便な情報収集のツールの作成が必要であると考えられた。
結論
本研究により、在宅医療や介護施設に関わる薬剤師のほとんどが多職種連携は必要であると考えているが、情報提供として看護師以外の職種では1割以下と非常に少ない。また、薬剤師が提供している情報は「薬」に関する管理や残薬といった物に関する情報であるが、多職種が求めている情報は、「処方見直し」などの薬物療法の有効性・安全性に関する情報である。そのため、薬剤師が積極的な情報収集と薬物療法に対する積極的な処方提案が行える報告書の作成が必要である。
簡便な情報収集のツールの作成や在宅医療や介護施設でのより良い多職種連携に向けて、情報共有ツールの活用等を含めて薬剤師の業務改善を検討していくことが必要であると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2023-06-05
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-05-30
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202216010Z