文献情報
文献番号
202216006A
報告書区分
総括
研究課題名
医療および介護レセプトデータ分析による在宅医療・介護連携推進のための適正な評価指標等の提案のための研究
課題番号
22GA1001
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
赤羽 学(国立保健医療科学院 医療・福祉サービス研究部)
研究分担者(所属機関)
- 山口 佳小里(国立保健医療科学院 医療・福祉サービス研究部)
- 大夛賀 政昭(国立保健医療科学院 医療・福祉サービス研究部)
- 中西 康裕(国立保健医療科学院 医療・福祉サービス研究部)
- 西岡 祐一(奈良県立医科大学 公衆衛生学講座)
- 次橋 幸男(奈良県立医科大学 公衆衛生学講座)
- 柴山 志穂美(神奈川県立保健福祉大学 実践教育センター、 保健福祉学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学政策研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
高齢者が今後さらに増加するため、在宅医療・介護提供体制の整備は急務であるが、それら提供体制の詳細な実態把握は十分ではなく、講じるべき施策を検討する際に有用な指標等も行政や医療・介護関係者間での共有が不十分である。また、在宅医療・介護連携推進事業の取り組みでは協議会の設置等、連携体制は整いつつある一方で、地域の実情を踏まえたPDCAの運用・事業展開は十分には行われていない。定量的・定性的な地域の現状把握を基に、目標設定・課題抽出・対応策の検討を行いPDCAの運用で重要な指標が設定されるが、多くの自治体において指標設定に困難を生じている現状がある。そこで本研究では、既存の指標に加えて新規指標案の検討も行い、在宅医療・介護連携推進のための適正な評価指標等を提案することを目的とする。
研究方法
在宅医療・介護連携の実態の見える化を目指し、次に示す6課題を実施した。
①4場面(日常の療養支援、入退院支援、急変時の対応、看取り)に関する各評価指標が医療・介護突合レセプト(奈良県KDB)より抽出可能か検討した。また、評価指標として使用するデータを見える化システムから取得する際に、どのような点に注意が必要となるかを併せて検討した。
②奈良県内において在宅医療・介護連携の先進自治体とされる1自治体を対象として、事業の取り組み状況をヒアリング調査した。
③在宅医療における要介護度の分布を明らかにするために、奈良県KDBを活用し次の分析を実施した。介護レセプトから各月に有効な要介護度が割り付けられたテーブルを作成し、2018年度から2020年度までの3年間に訪問診療を受けていた75歳以上の患者を抽出後、医療レセプトを用いて在宅医療の提供状況から4つのカテゴリー毎に有効な要介護度を各月のレセプト件数単位で集計し把握した。
④地域包括ケア「見える化」システムを用いて、在宅医療・介護連携関連指標に関して、自治体の規模別の分析を行い、「見える化」システムのPDCA運用への活用可能性に関しても検討した。
⑤令和3年度の在宅医療・介護連携推進事業の実態調査のローデータを用いて、在宅医療・介護連携推進事業に関する指標設定やデータ活用の状況について人口規模ごとの分析を行った。
⑥自治体と専門職の有識者にグループインタビューを行い、地域の実情に応じた在宅医療・介護連携推進を評価する上で重要度の高い項目について検討し、データを取り扱う上での留意点や、指標の定義を整理する必要性を明らかにした。
①4場面(日常の療養支援、入退院支援、急変時の対応、看取り)に関する各評価指標が医療・介護突合レセプト(奈良県KDB)より抽出可能か検討した。また、評価指標として使用するデータを見える化システムから取得する際に、どのような点に注意が必要となるかを併せて検討した。
②奈良県内において在宅医療・介護連携の先進自治体とされる1自治体を対象として、事業の取り組み状況をヒアリング調査した。
③在宅医療における要介護度の分布を明らかにするために、奈良県KDBを活用し次の分析を実施した。介護レセプトから各月に有効な要介護度が割り付けられたテーブルを作成し、2018年度から2020年度までの3年間に訪問診療を受けていた75歳以上の患者を抽出後、医療レセプトを用いて在宅医療の提供状況から4つのカテゴリー毎に有効な要介護度を各月のレセプト件数単位で集計し把握した。
④地域包括ケア「見える化」システムを用いて、在宅医療・介護連携関連指標に関して、自治体の規模別の分析を行い、「見える化」システムのPDCA運用への活用可能性に関しても検討した。
⑤令和3年度の在宅医療・介護連携推進事業の実態調査のローデータを用いて、在宅医療・介護連携推進事業に関する指標設定やデータ活用の状況について人口規模ごとの分析を行った。
⑥自治体と専門職の有識者にグループインタビューを行い、地域の実情に応じた在宅医療・介護連携推進を評価する上で重要度の高い項目について検討し、データを取り扱う上での留意点や、指標の定義を整理する必要性を明らかにした。
結果と考察
「見える化」システムに収載されている合計42指標を在宅医療の4場面に分類し人口五分位ごとに記述統計量を算出したところ、多くの指標において素集計値は規模の大きい自治体で大きく、人口10万人あたりの値は規模の大きい自治体で小さかった。評価指標の設定状況については、活用が40%を超えていた指標がいずれも事業所数・施設数といったストラクチャー指標であったことから、今後は在宅医療介護連携のプロセスやアウトカムを示す指標の活用が求められる。
4場面ごとの多くの評価指標において、レセプト上の定義付けを行う必要性が示唆された。現状では自治体において評価指標は十分に活用されているとは言い難いことから、指標に優先順位を付け、市区町村間で比較可能な指標の抽出・作成方法等を検討し、自治体がより活用しやすい指標を開発するなど検討する必要があると考えられた。
自治体が地域の実情に応じた在宅医療・介護連携を評価する際に活用すべき重要度の高い指標について検討した結果、データを取り扱う上での留意点や、指標の定義を整理する必要性が明らかになった。
4場面ごとの多くの評価指標において、レセプト上の定義付けを行う必要性が示唆された。現状では自治体において評価指標は十分に活用されているとは言い難いことから、指標に優先順位を付け、市区町村間で比較可能な指標の抽出・作成方法等を検討し、自治体がより活用しやすい指標を開発するなど検討する必要があると考えられた。
自治体が地域の実情に応じた在宅医療・介護連携を評価する際に活用すべき重要度の高い指標について検討した結果、データを取り扱う上での留意点や、指標の定義を整理する必要性が明らかになった。
結論
いくつかの指標において自治体の規模別に特徴が異なっていたため、指標を扱う際には自治体規模を考慮することが重要である。また、各自治体がPDCAに則った在宅医療介護連携事業の推進における「見える化」活用における課題・留意すべき点についても示唆を得られたが、今後に向けて指標間の関連、特にアウトカム関連指標と他の指標との関連を明らかにすることが肝要である。医療および介護レセプトデータ分析による在宅医療・介護連携推進のための適切な評価指標を設定するには、診療報酬・介護報酬上の算定要件も踏まえ、重要な指標についての引き続きの精査が必要であると考えられた。
公開日・更新日
公開日
2023-05-30
更新日
2023-05-31