アデノ随伴ウイルスを用いたデュシェンヌ型筋ジストロフィーに対する遺伝子変異集積領域のエクソン・スキップ治療

文献情報

文献番号
200917020A
報告書区分
総括
研究課題名
アデノ随伴ウイルスを用いたデュシェンヌ型筋ジストロフィーに対する遺伝子変異集積領域のエクソン・スキップ治療
課題番号
H21-トランス・一般-011
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
武田 伸一(国立精神・神経センター 神経研究所 遺伝子疾患治療研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 岡田 尚巳(国立精神・神経センター 神経研究所 遺伝子疾患治療研究部)
  • 永田 哲也(国立精神・神経センター 神経研究所 遺伝子疾患治療研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(基礎研究成果の臨床応用推進研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
50,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
従来我々は、アンチセンス・モルフォリノを用いたDMDに対するエクソン・スキップ治療の前臨床的研究を実施し、その安全性と有効性を示してきた。本研究では従来の技術をさらに発展させ、心筋への送達と長期間の発現に効果的な9型アデノ随伴ウイルス(AAV)を応用し、頻度の高い遺伝子欠失を対象としたエクソン・スキップ治療の臨床応用に向けた技術基盤を構築することを目的とした。
研究方法
(1)臨床試験の準備が先行しているエクソン51スキップに次いで適応患者が多いと考えられるエクソン53スキップ治療法を開発する。
(2)複数のエクソンを同時にスキップさせる取り組みとして、まずエクソン45-55のうち少数のエクソンをブロックとしてスキップさせ、随時スキップの範囲を拡大し安全性と有効性を検証する。
(3)9型AAVの中空粒子を応用し、アンチセンス分子の心筋への導入効果を検証する。さらに、核内局在化を目的として、改変U7 snRNAに結合したエクソンスキップ誘導配列を発現させる9型AAVベクターを構築し、安全性と有効性を検証する。

結果と考察
今回mdx52マウスを用いたアンチセンス分子投与実験により、エクソン53のスキッピングを確認した。また、C2C12細胞を用いて候補となるアンチセンス配列を選定した後、mdx52マウスを対象にした筋注実験によりエクソン50-53、48-53、45-55スキップがin vivoにおいても実現可能であることを示した。さらに本研究では、安全で心筋への導入効率が高く長時間の発現が期待できる9型AAVを応用し、アンチセンス分子送達担体の開発を検討した。改変U7 snRNAを構築し、アンチセンス分子をベクターから発現させた結果、高い効率でエクソンスキップが認められた。また、AAV中空粒子を用いて培養細胞にモルフォリノを導入し、核内への良好な集積効果を確認した。
結論
本研究の結果は、DMDを対象としたエクソン53スキップ治療の可能性を示唆していると考えられた。また、C2C12細胞株およびmdx52マウスを用いて、変異集積領域であるエクソン45-55スキップの実現可能性を示した。9型AAVを応用した改変U7 snRNA発現ベクターや中空粒子は、エクソン・スキップ治療に必要なアンチセンス分子の次世代担体として有望と考えられる。

公開日・更新日

公開日
2011-05-30
更新日
-