文献情報
文献番号
202216004A
報告書区分
総括
研究課題名
早期の在宅療養移行及び療養継続支援における訪問看護による効果測定及び評価のための研究
課題番号
21GA1002
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
山本 則子(国立大学法人 東京大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
- 五十嵐 歩(東京大学大学院 医学系研究科)
- 野口 麻衣子(渡邊 麻衣子)(東京医科歯科大学 保健衛生学研究科)
- 目 麻里子(筑波大学 医学医療系)
- 福井 千絵(東京大学大学院 医学系研究科)
- 角川 由香(東京大学 医学系研究科)
- ELTAYBANI SAMEH(エルタイバニ サメハ)(東京大学大学院 医学系研究科)
- 高岡 茉奈美(東京大学大学院 医学系研究科)
- 柏原 康佑(東京大学 医学部附属病院)
- 小島 太郎(東京大学大学院 医学系研究科)
- 北村 智美(一般財団法人医療経済研究・社会保険福祉協会 医療経済研究機構 研究部)
- 新田 國夫(医療法人社団つくし会)
- 弓野 大(医療法人社団ゆみの)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学政策研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
7,693,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の目的は、1)訪問看護提供による効果、サービスの充実度を測定するための標準化評価指標を開発すること(研究1)、2)看取り期を含む対象への前向き研究により、訪問看護の効果、サービスの充実度を可視化すること(研究2,3,5)、3)評価指標を活用したサービスの充実に向けた評価方法(PDCAサイクル)を提案することである(研究4)。
研究方法
本研究は5つの分担研究から構成される。[研究1]訪問看護提供による効果、サービスの充実度を測定するための評価指標の確立、[研究2]訪問看護提供による効果、サービスの充実度の文献検討、[研究3]既存コホートの観察継続による訪問看護提供による効果、サービスの充実度の評価、[研究4]評価指標を活用したサービスの充実に向けた評価方法(PDCAサイクル)の提案、[研究5]訪問看護提供に関する比較試験である。
結果と考察
訪問看護提供による効果、サービスの充実度を測定するための評価指標の確立においては(研究1)、VENUS指標による評価の実施可能性、評価者間信頼性を改善させるための方策として、VENUS評価ガイドを作成した。評価ガイドを活用して再評価を行った結果、多くの項目において回答の欠損割合の低下と評価者間信頼性の向上が効果として得られた。一方「尊厳の尊重」に関するアウトカム等、実現可能性・評価者間信頼性が改善しない項目もみられ、質問文の文言や回答選択肢の見直しを検討する必要性が示唆された。
訪問看護提供による効果、サービスの充実度の文献検討においては(研究2)、訪問看護の効果に関するアンブレラレビューを実施し、10件のレビュー論文が適格基準を満たした。訪問看護の死亡率、施設入所、患者満足度、QOLに対する統計的に有意な影響は示されなかった。一方、訪問看護は、高齢者の入所回数を減らす効果があった。機能状態の改善、地域で療養する高齢者の増加など、訪問看護提供による効果が示された研究もある。介入内容が簡潔な記述にとどまっていること、国による文脈の違いに関するデータの欠如、そしてフォローアップ期間のばらつきなどに起因する。訪問看護提供による効果を評価するためには、介入期間とフォローアップ期間で層別化した一次研究のメタ分析が必要である。
既存コホートの観察継続による訪問看護提供による効果、サービスの充実度の評価においては(研究3)、訪問看護利用群・非利用群における前向きコホート研究(36カ月後調査)を実施した。要介護高齢者への訪問看護提供による加齢とともに心身機能が低下する中でも、生活に支障のない睡眠の確保、全身状態の悪化予防につながる可能性が見出された。
評価指標を活用したサービスの充実に向けた評価方法(PDCAサイクル)の提案においては(研究4)、VENUS QICの開発・検証を行なった。現在、プログラム後の調査実施中であり、詳細については分析後の報告とするが、対象者の反応からは、プログラムが事業所のケアの質のPDCAサイクルに効果をもたらす可能性がうかがわれた。
訪問看護提供に関する比較試験においては(研究5)、令和4年度より、訪問看護介入効果を検討することを目的とした非ランダム化比較試験を開始した。
訪問看護提供による効果、サービスの充実度の文献検討においては(研究2)、訪問看護の効果に関するアンブレラレビューを実施し、10件のレビュー論文が適格基準を満たした。訪問看護の死亡率、施設入所、患者満足度、QOLに対する統計的に有意な影響は示されなかった。一方、訪問看護は、高齢者の入所回数を減らす効果があった。機能状態の改善、地域で療養する高齢者の増加など、訪問看護提供による効果が示された研究もある。介入内容が簡潔な記述にとどまっていること、国による文脈の違いに関するデータの欠如、そしてフォローアップ期間のばらつきなどに起因する。訪問看護提供による効果を評価するためには、介入期間とフォローアップ期間で層別化した一次研究のメタ分析が必要である。
既存コホートの観察継続による訪問看護提供による効果、サービスの充実度の評価においては(研究3)、訪問看護利用群・非利用群における前向きコホート研究(36カ月後調査)を実施した。要介護高齢者への訪問看護提供による加齢とともに心身機能が低下する中でも、生活に支障のない睡眠の確保、全身状態の悪化予防につながる可能性が見出された。
評価指標を活用したサービスの充実に向けた評価方法(PDCAサイクル)の提案においては(研究4)、VENUS QICの開発・検証を行なった。現在、プログラム後の調査実施中であり、詳細については分析後の報告とするが、対象者の反応からは、プログラムが事業所のケアの質のPDCAサイクルに効果をもたらす可能性がうかがわれた。
訪問看護提供に関する比較試験においては(研究5)、令和4年度より、訪問看護介入効果を検討することを目的とした非ランダム化比較試験を開始した。
結論
訪問看護提供による効果、サービスの充実度を測定するための評価指標の確立については(研究1)、評価指標の評価ガイド作成により、評価者間信頼性がさらに向上した。一方、評価ガイドを活用しても欠損割合および評価者間信頼性が改善しないものもあった。評価ガイドを用いても実施可能性、評価者間信頼性が不十分だった項目については、質問文の文言や回答選択肢の見直しを含めて検討する必要がある。また「尊厳の追求」等、客観的な評価が難しい項目は、VENUS指標の項目および判断基準を教育のためのツールとして活用できる可能性がある。
訪問看護提供による効果、サービスの充実度の文献検討については(研究2)、訪問看護の効果に関するアンブレラレビューにより、訪問看護は、死亡率、入院、施設入所、利用者満足度、QOLに有意な影響を及ぼすという結果は得られなかった。一方、機能状態の改善、地域での療養継続、予防接種率の向上など有益な効果があるとの結果を得た。介入内容が簡潔な記述にとどまっていること、国による文脈の違いに関するデータの欠如、そしてフォローアップ期間のばらつきなどに起因する。訪問看護提供による効果を評価するためには、介入期間とフォローアップ期間で層別化した一次研究のメタ分析が必要である。
研究1,2については令和4年度で調査終了とし、研究3,4,5については令和5年度も引き続き調査を実施し、データ収集完了後、分析を行う。
訪問看護提供による効果、サービスの充実度の文献検討については(研究2)、訪問看護の効果に関するアンブレラレビューにより、訪問看護は、死亡率、入院、施設入所、利用者満足度、QOLに有意な影響を及ぼすという結果は得られなかった。一方、機能状態の改善、地域での療養継続、予防接種率の向上など有益な効果があるとの結果を得た。介入内容が簡潔な記述にとどまっていること、国による文脈の違いに関するデータの欠如、そしてフォローアップ期間のばらつきなどに起因する。訪問看護提供による効果を評価するためには、介入期間とフォローアップ期間で層別化した一次研究のメタ分析が必要である。
研究1,2については令和4年度で調査終了とし、研究3,4,5については令和5年度も引き続き調査を実施し、データ収集完了後、分析を行う。
公開日・更新日
公開日
2023-05-31
更新日
-