PDCAサイクルに沿った介護予防の取組推進のための通いの場等の効果検証と評価の枠組み構築に関する研究

文献情報

文献番号
202216003A
報告書区分
総括
研究課題名
PDCAサイクルに沿った介護予防の取組推進のための通いの場等の効果検証と評価の枠組み構築に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
21GA1001
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
藤原 佳典(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター 東京都健康長寿医療センター研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 荒井 秀典(国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター 理事長室)
  • 近藤 克則(国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター 老年学・社会科学研究センター・老年学評価研究部)
  • 山田 実(筑波大学 人間系)
  • 服部 真治(一般財団法人医療経済研究・社会保険福祉協会 医療経済研究機構 政策推進部/研究部)
  • 北村 明彦(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター 東京都健康長寿医療センター研究所)
  • 小宮山 恵美(国立保健医療科学院 生涯健康研究部)
  • 清野 諭(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター 東京都健康長寿医療センター研究所)
  • 野藤 悠(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター 東京都健康長寿医療センター研究所)
  • 横山 友里(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター 東京都健康長寿医療センター研究所)
  • 植田 拓也(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター 東京都介護予防・フレイル予防推進支援センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学政策研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
8,419,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
令和元年度に公表された「一般介護予防事業等の推進方策に関する検討会取りまとめ」では、一般介護予防事業等をPDCAサイクルに沿って推進することが重要視されている。研究代表者らは、令和2年度老人保健健康増進等事業において「PDCAサイクルに沿って通いの場等の取り組みを評価する枠組み」を提案してきた。これらの背景をもとに、本研究では、次の3点の達成を目的とした。
1)PDCAサイクルに沿った通いの場等の取り組みの短期的及び中期的効果を、参加群と非参加群の比較から明らかにすること。
2)研究代表者らが令和2年度老人保健健康増進等事業で提案した「通いの場等の取り組みを評価する枠組み(プロセス・アウトプット・アウトカム指標等)(以下、本枠組み)」の適用可能性を検証すること。
3)上記の結果を基に「PDCAサイクルに沿った介護予防の取り組みを推進するための自治体向け手引き」を作成すること。
研究方法
令和4年度は、目的1)に関して、通いの場への参加による短期的効果の検証のため、令和3年度に実施した2つの自治体(東京都八王子市、豊島区)でのベースライン調査の有効回答者を対象に、郵送による1年後追跡調査を実施した。また、通いの場の介護予防効果のメカニズムを明らかにするための文献レビューを実施した。さらに、目的3)に関して、上記1)および2)の結果を基に「PDCA サイクルに沿った介護予防の取り組みを推進するための自治体向け手引き」を完成させた。
結果と考察
八王子市の有効回答者23,151名のデータを解析した結果、狭義/広義に関わらず、通いの場参加による短期的効果として、食の多様性や毎日の外出者割合への好影響が確認された。また、広義の通いの場参加では、精神的健康にも好影響がもたらされることが示された。一方で、豊島区の有効回答者4,123名のデータを解析した結果、狭義の通いの場参加群では、非参加群よりもフレイルの割合が有意に低減した。広義の通いの場参加群では、外出者割合のみに好影響が確認された。
また、文献レビューの結果、通いの場参加による身体・認知・心理面の維持・向上、社会的相互作用を通じ、介護予防効果がもたらされていることが示唆された。これらの結果を踏まえ、自治体の様々な実情を考慮した評価の枠組みと、通いの場等の取組をPDCAサイクルに沿って推進するための「PDCA サイクルに沿った介護予防の取り組みを推進するための自治体向け手引き」を作成した。
結論
本研究では、八王子市と豊島区の高齢者を対象とした1年後追跡調査を完了し、狭義/広義の通いの場の短期的効果を明らかにした。八王子市では多様な(広義の)通いの場づくりを、豊島区では介護予防のための(狭義の)通いの場づくりを、それぞれ戦略的に推進しており、通いの場の短期的効果も自治体間で異なる傾向がみられた。八王子市では、狭義/広義に関わらず、通いの場参加による短期的効果として、食の多様性や毎日の外出者割合への好影響が確認された。また、広義の通いの場参加では、精神的健康にも好影響がもたらされることが示された。豊島区では、狭義の通いの場参加群では、非参加群よりもフレイルの割合が有意に低減した。広義の通いの場参加群では、外出者割合のみに好影響が確認された。JAGESによる文献レビューの結果、通いの場参加による身体・認知・心理面の維持・向上、社会的相互作用を通じ、介護予防効果がもたらされていることが示唆された。これらの研究成果を基盤として、自治体の様々な実情を考慮した評価の枠組みと、通いの場等の取組をPDCAサイクルに沿って推進するための手引きが作成された。今後は、全国の自治体における本枠組みの採用度や適切性、持続可能性等についてさらに検証していく必要がある。また、自治体への広報や職員向け研修等を通して、PDCAサイクルに沿った取組が全国で一層推進されるよう支援していく必要がある。

公開日・更新日

公開日
2023-05-29
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2023-05-29
更新日
2023-06-05

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202216003B
報告書区分
総合
研究課題名
PDCAサイクルに沿った介護予防の取組推進のための通いの場等の効果検証と評価の枠組み構築に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
21GA1001
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
藤原 佳典(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター 東京都健康長寿医療センター研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 荒井 秀典(国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター 理事長室)
  • 近藤 克則(国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター 老年学・社会科学研究センター・老年学評価研究部)
  • 山田 実(筑波大学 人間系)
  • 服部 真治(一般財団法人医療経済研究・社会保険福祉協会 医療経済研究機構 政策推進部/研究部)
  • 北村 明彦(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター 東京都健康長寿医療センター研究所)
  • 小宮山 恵美(国立保健医療科学院 生涯健康研究部)
  • 清野 諭(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター 東京都健康長寿医療センター研究所)
  • 野藤 悠(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター 東京都健康長寿医療センター研究所)
  • 横山 友里(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター 東京都健康長寿医療センター研究所)
  • 植田 拓也(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター 東京都介護予防・フレイル予防推進支援センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学政策研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
令和元年に公表された「一般介護予防事業等の推進方策に関する検討会取りまとめ」では、一般介護予防事業(通いの場)等をPDCAサイクルに沿って推進することが重要視されている。しかし、現状ではその具体的な推進方策や、標準化された評価の枠組みが明示されておらず、各自治体が手探りで実施している。また、通いの場等への参加が、その後のフレイル・要介護・認知機能低下の予防に効果的であることが明らかとなりつつあるものの、さらなるエビデンスの蓄積が必要である。
そこで本研究では、1)PDCA サイクルに沿った通いの場等の取組の短期的及び中期的効果を、参加群と非参加群の比較から明らかにすること、2)申請者らが令和2年度老人保健健康増進等事業において提案した「PDCAサイクルに沿って通いの場等の取組を評価する枠組み(以下、本枠組み)」の適用可能性を検証すること、3)上記の結果を基に「PDCA サイクルに沿った介護予防の取組を推進するための自治体向け手引き」を作成すること、を目的とした。
研究方法
目的1)の通いの場への参加による短期的効果の検証のため、特徴の異なる2つの自治体(東京都八王子市、豊島区)で、郵送自記式によるベースライン調査および1年後追跡調査を実施した【研究1・2】。また、中期的効果検証のため、日本老年学的評価研究(Japan Gerontological Evaluation Study,JAGES)の2013・2016・2019年度のデータから、通いの場の取組の3年後の効果を分析するとともに、通いの場の介護予防効果のメカニズムを明示するための文献レビューをおこなった【研究3】。さらに、目的2)を達成するため、八王子市および豊島区を含む29自治体の介護予防事業担当者から、本枠組みに対する意見を自由記述形式で調査した。最後に、目的3)を達成するため、「通いの場等の取り組みを評価する枠組み」および「PDCAサイクルに沿った通いの場の取組を推進するための自治体向け手引き」を完成させ、八王子市および豊島区を含む51自治体の介護予防事業担当者から、PDCAサイクルに沿った通いの場の取組の実施状況について回答を得た【研究4】。
結果と考察
【研究1】八王子市の75歳以上男女31,124名と、【研究2】豊島区の65-84歳男女5,576名の分析の結果、両自治体とも、コロナ以前に比べて、介護予防のための通いの場(狭義の通いの場)/すべてのタイプの通いの場(広義の通いの場)の参加率は低値を示しており、コロナ禍の影響を大きく受けていた。狭義の通いの場には社会経済状態の低い者が、広義の通いの場には社会経済状態の高い者が、それぞれ多く参加する傾向がみられた。八王子市の追跡調査の結果、狭義/広義に関わらず、通いの場参加による短期的効果として、食の多様性や毎日の外出者割合への好影響が確認された。また、広義の通いの場参加では、精神的健康にも好影響がもたらされることが示された。豊島区の追跡調査の結果、狭義の通いの場参加群では、非参加群よりもフレイルの割合が有意に低減した。広義の通いの場参加群では、外出者割合のみに好影響が確認された。
【研究3】JAGESデータの分析の結果、通いの場参加者では、3年後の社会参加、社会的ネットワーク、高次生活機能などの中間アウトカム指標と女性の要介護認定抑制に有意な効果がみられた。また、文献レビューの結果、通いの場参加による身体・認知・心理面の維持・向上、社会的相互作用を通じ、介護予防効果がもたらされていることが示唆された。
【研究4】以上の結果と自治体担当者への調査結果をもとに、自治体の様々な実情を考慮した評価の枠組みと、通いの場等の取組をPDCAサイクルに沿って推進するための手引きが作成された。
結論
本研究によって、通いの場の短中期的効果を体系的に整理することができた。また、研究結果や当研究グループの経験則に基づいて、通いの場の取組をPDCAサイクルに沿って推進するための自治体向け手引きが作成された。今後は、全国の自治体における本枠組みの採用度や適切性、持続可能性等についてさらに検証していく必要がある。また、自治体への広報や職員向け研修等を通して、PDCAサイクルに沿った取組が全国で一層推進されるよう支援していく必要がある。

公開日・更新日

公開日
2023-05-29
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-05-29
更新日
2023-06-05

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202216003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究では、PDCA サイクルに沿った通いの場等の取組の短期的及び中期的効果を、参加群と非参加群の比較から明らかにした。
臨床的観点からの成果
特記事項なし。
ガイドライン等の開発
通いの場の取組をPDCAサイクルに沿って推進するために、「通いの場等の取り組みを評価する枠組み」及び「PDCAサイクルに沿った通いの場の取組を推進するための自治体向け手引き」を作成した。
その他行政的観点からの成果
「PDCAサイクルに沿った通いの場の取組を推進するための自治体向け手引き」は、全国の自治体が通いの場の取組をPDCAサイクルに沿って推進するための広報や職員向け研修等として活用することができる。
その他のインパクト
研究成果は、自治体等の関係者向けにホームページ上でも公開している(https://www.healthy-aging.tokyo/top#h.vr168m2hfsvj)。

発表件数

原著論文(和文)
6件
原著論文(英文等)
4件
その他論文(和文)
3件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
12件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
ホームページ上で公開

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Mori H, Seino S, Yokoyama Y, et al
Effect of participating in Kayoi-no-ba during the COVID-19 pandemic on frailty 1 year later in older adults.
Geriatr Gerontol Int. , 25 (4) , 598-605  (2025)
https://doi.org/10.1111/ggi.70029

公開日・更新日

公開日
2023-05-29
更新日
2025-06-09

収支報告書

文献番号
202216003Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
9,900,000円
(2)補助金確定額
9,570,000円
差引額 [(1)-(2)]
330,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 162,054円
人件費・謝金 1,559,195円
旅費 67,568円
その他 6,300,585円
間接経費 1,481,000円
合計 9,570,402円

備考

備考
1,000円未満切り捨て

公開日・更新日

公開日
2023-06-05
更新日
-