要介護者に対する疾患別リハビリテーションから維持期・生活期リハビリテーションへの一貫したリハビリテーション手法の確立研究

文献情報

文献番号
202216001A
報告書区分
総括
研究課題名
要介護者に対する疾患別リハビリテーションから維持期・生活期リハビリテーションへの一貫したリハビリテーション手法の確立研究
課題番号
20GA1001
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
三上 幸夫(広島大学病院 リハビリテーション科)
研究分担者(所属機関)
  • 田島 文博(公立大学法人 和歌山県立医科大学 医学部 医学科 リハビリテーション医学)
  • 久保 俊一(京都府立医科大学)
  • 三上 靖夫(京都府立医科大学大学院医学研究科 リハビリテーション医学)
  • 河﨑 敬(京都府立医科大学 医学部医学科)
  • 幸田 剣(和歌山県立医科大学医学部リハビリテーション医学講座)
  • 大川 裕行(西九州大学 リハビリテーション学部)
  • 上西 啓裕(宝塚医療大学 和歌山保健医療学部)
  • 篠原 博(青森県立保健大学)
  • 黒田 るみ(山本 るみ)(福島県立医科大学 看護学部)
  • 浅枝 諒(宝塚医療大学 和歌山保健医療学部)
  • 下川 敏雄(和歌山県立医科大学 臨床研究センター)
  • 尾川 貴洋(愛知医科大学 医学部リハビリテーション医学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
5,962,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医療保険の疾患別リハビリテーションが終了した後の、介護保険の生活期リハビリテーションでは、疾患別リハビリテーションからの一貫したリハビリテーション手法が確立されておらず、要介護者に対する生活期リハビリテーションの提供実態も把握されていなかった。また、生活期リハビリテーションに関する研究のエビデンスも整理されていなかった。介護保険での生活期リハビリテーションを行う際にも、要介護者の健康状態・心身機能・活動性を診断・評価する事が重要である。そして、この診断・評価に基づいた、生活期リハビリテーションの効果的な方法確立と、これを標準化した手引きが求められていた。令和4年度は、介入研究で使用する手引きを出版物として作成し、介入研究の準備を行うこと、令和2年度に実施した実態調査と文献レビューの英語論文を作成することで、本研究の成果とすることを目的とした。
研究方法
手引きの内容については、実際に生活期リハビリテーションに関わる医師、看護師、療法士などの関係職種から意見を聴取する方針とし、研究代表者と研究分担者でワーキンググループを立ち上げ、9月上旬から下旬にかけて関連施設のスタッフから意見を聴取した。その内容は合計4回のワーキンググループで協議し、協議内容を踏まえて手引き書の内容を加筆、修正した。執筆作業を12月に終了し、令和5年1月より研究分担者にて編集作業を行った。編集では、誤字脱字、表現・用語の統一を行い、より平易な表現で関連する職種が理解できる内容に編集した。さらに、リーフレットを作成し、手引き書の内容を踏まえた実践例を記載した。
介入研究の実施は、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う介入予定施設からの受け入れ拒否があり、十分なサンプルサイズが確保できないと判断して、令和5年度末まで研究期間を延長して実施することにした。
令和2年度結果(実態調査と文献レビュー)の英語論文としての公表は、令和3年度に引き続いて国際雑誌への投稿、査読に対する英文校正を行った。
結果と考察
介護保険での生活期リハビリテーションでは、対象者やスタッフでリハビリテーション手法が統一されていないことを、令和3年度までの研究成果であきらかとした。本年度の研究において作成した手引き書は、関連するすべての職種で標準化される内容となるように、関係する職種への意見も多く反映した。また文言だけでなく、写真やイラストを多用することで、視覚的に認知しやすい内容となった。課題として、新型コロナウイルス感染症拡大による事業所制限により、本手引き書を配布して実践した介入研究を実施できなかったことがあげられる。
令和2年度結果(実態調査と文献レビュー)の英語論文としての公表について、研究機関内に国際雑誌に採択された。これにより、本邦における要介護者に対する医療保険の疾患別リハビリテーション診療から介護保険の生活期リハビリテーションマネジメントへの一貫したリハビリテーション手法が確立されていないことを、国際的に公表することができた。介護保険の生活期リハビリテーションと疾患別リハビリテーションにおけるリハビリテーション治療や評価が一貫していないことやリハビリテーション実施計画書の作成が少ない問題点を明らかにすることができた。また文献レビューにより、介護保険の生活期リハビリテーションにおけるリハビリテーション治療の報告は少なく、特定のリハビリテーション治療ごとの効果が実証ができていないことが明らかとなった。これらの問題点は、他の政策上へ有益な情報提供になるだけでなく、介入研究における研究目的を明確にできる情報をなり得る。
本年度当初の予定では作成した手引きを、要介護者に対するリハビリテーションマネジメントを実施している、介護老人保健施設、通所・訪問リハビリテーション実施施設へ配布した効果を調査するランダム化比較試験を実施する予定であった。しかしながら、新型コロナウイルス感染症拡大に伴い実施予定施設の受け入れが困難となり、十分なサンプルサイズが得られないと判断し、令和5年度末まで研究期間を延長して実施することにした。これまでの本研究の成果は要介護者に対する疾患別リハビリテーションから維持期・生活期リハビリテーションへの一貫したリハビリテーション手法の問題点と、それに対する基本指針を明らかにしたものであり、この成果を具体的な効果として明らかにするためにも介入研究を実施することが求められる。
結論
本事業によって要介護者に対する疾患別リハビリテーションから維持期・生活期リハビリテーションへの一貫したリハビリテーション手法の問題点と基本指針を明らかにすることができ、これは他の政策上へ有益な情報提供になる。さらにこの成果を基に、手引きを使用した介入研究を行うことで、一貫したリハビリテーション手法の科学的根拠の一助となる可能性がある。

公開日・更新日

公開日
2023-06-05
更新日
2024-03-27

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-06-19
更新日
2024-05-20

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202216001B
報告書区分
総合
研究課題名
要介護者に対する疾患別リハビリテーションから維持期・生活期リハビリテーションへの一貫したリハビリテーション手法の確立研究
課題番号
20GA1001
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
三上 幸夫(広島大学病院 リハビリテーション科)
研究分担者(所属機関)
  • 田島 文博(ちゅうざん病院)
  • 久保 俊一(京都府立医科大学)
  • 三上 靖夫(京都府立医科大学大学院医学研究科 リハビリテーション医学)
  • 河﨑 敬(京都府立医科大学 医学部医学科)
  • 幸田 剣(和歌山県立医科大学医学部リハビリテーション医学講座)
  • 大川 裕行(西九州大学 リハビリテーション学部)
  • 上西 啓裕(宝塚医療大学 和歌山保健医療学部)
  • 篠原 博(青森県立保健大学)
  • 黒田 るみ(山本 るみ)(福島県立医科大学 看護学部)
  • 浅枝 諒(広島大学病院診療支援部リハビリテーション部門)
  • 下川 敏雄(和歌山県立医科大学 臨床研究センター)
  • 尾川 貴洋(愛知医科大学 医学部リハビリテーション医学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究者交替、所属機関変更
田島文博:ちゅうざん病院 浅枝諒:広島大学病院

研究報告書(概要版)

研究目的
医療保険の疾患別リハビリテーションが終了した後の、介護保険の生活期リハビリテーションでは、疾患別リハビリテーションからの一貫したリハビリテーション手法が確立されておらず、要介護者に対する生活期リハビリテーションの提供実態も把握されていなかった。また、生活期リハビリテーションに関する研究のエビデンスも整理されていなかった。そこで本研究では令和2年度に、疾患別リハビリテーションが終了した要介護者を対象として、アンケート調査を実施し、生活期リハビリテーションの提供実態を把握した。そして、生活期リハビリテーションに関する研究の文献レビューからエビデンスも整理した。令和3年度は、令和2年度の研究結果を基に、疾患別リハビリテーション終了後に高齢者の状態を評価し、疾患別リハビリテーションに応じた効果的な生活期リハビリテーションを実施するための介入方法、多職種連携を含む手引きを作成した。令和4年度は、研究結果を英語論文として公表し、手引き書を発刊することで、疾患別リハビリテーションからの一貫したリハビリテーションを公表した。令和5年度は発刊した手引き書(介護領域のリハビリテーション手法手引き書)に基づいた介入研究を実施した。
研究方法
令和2年度:疾患別リハビリテーションが終了した要介護者を対象としたアンケート調査による、生活期リハビリテーションの提供実態把握(実態調査)
令和2年度;生活期リハビリテーションに関する研究の文献レビューによるエビデンスの整理(文献レビュー研究)
令和3~4年度:.実態調査、2.文献レビューの結果を基にした、疾患別リハビリテーションに応じた効果的な生活期リハビリテーションを実施するための介入方法、多職種連携を含む手引きの作成と出版(手引きの作成・出版)
令和4年度:.実態調査、2.文献レビューの英語論文作成(英語論文作成)
令和5年度:研究成果、作成した手引き書に基づいた、要介護者への介入研究(介入研究)
結果と考察
1. 実態調査
医療保険の疾患別リハビリテーション治療で行った内容は複数回答を許可したところ、可動域訓練・持久力訓練・筋力増強訓練・ADL訓練と幅広く行われていた。介護保険のリハビリテーションで行っている内容も複数回答を許可したところ、医療保険での疾患別リハビリテーション治療と同様の傾向がみられた。医療機関からリハビリテーション実施計画書を入手出来たのは44%であり、入手出来なかったのは52%であった。

2. 文献レビュー研究
検索した論文中に記載されていた評価項目について、重複を許して集計したところ、Timed Up & Go Test (TUG)が最も多く、握力GS、MMSE、Barthel Index、FIMなど、総合的・一般的な項目が上位5位を占めていた。

3. 手引きの作成・出版
令和4年1月に手引き原案を作成し、令和4年2月に原案を手引き作成委員会で編集校正し、令和4年3月に初稿を完成した。
出版に向けて合計4回のワーキンググループで協議し、協議内容を踏まえて手引き書の内容を加筆、修正した。執筆作業を12月に終了し、令和5年1月より研究分担者にて編集作業を行った。リーフレットを作成した後、令和5年5月に出版が完了した。

4. 英語論文作成
実態調査について、令和4年12月24日に、“Annals of Medicine and Surgery”に採択された。
文献レビューの論文について、令和4年11月17日に、“Health Economics Review.”に採択された。

5. 介入研究
開始時点での両群間の間に、体重、併存疾患数、Barthel index、2分間ステップテスト回数に有意な差を認めたため、傾向スコアマッチング方を用いて、各群65名ずつの解析とした。その結果、介入3か月での持久力指標である2分間ステップテスト回数に有意な差を認めた(介入群;101.2 ± 38.6、対照群;84.4 ± 27.7、p = 0.005)。また両群とも、J-CHS基準におけるフレイルに有意な改善を認めた。
結論
医療保険の疾患別リハビリテーションが終了した後の、介護保険の生活期リハビリテーションでは、疾患別リハビリテーションからの一貫したリハビリテーション手法が確立されておらず、生活期リハビリテーションに関する研究のエビデンスも整理されていなかった。本研究は生活期リハビリテーションの効果的な方法確立、標準化した手引きを基にしたリハビリテーション治療の科学的根拠を示すに至り、政策上へ有益な情報提供になり得る研究となったと考える。

公開日・更新日

公開日
2023-06-05
更新日
2024-05-28

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202216001C

収支報告書

文献番号
202216001Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
7,750,000円
(2)補助金確定額
7,750,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,978,100円
人件費・謝金 80,490円
旅費 416,503円
その他 863,766円
間接経費 1,589,000円
合計 6,927,859円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2023-06-05
更新日
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