文献情報
文献番号
200917014A
報告書区分
総括
研究課題名
アドレノメデュリン(AM)の炎症性腸疾患治療薬としての臨床応用
課題番号
H21-トランス・一般-005
研究年度
平成21(2009)年度
研究代表者(所属機関)
北村 和雄(宮崎大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
- 芦塚 伸也(宮崎大学 医学部)
- 鶴田 敏博(宮崎大学 医学部)
- 稲津 東彦(宮崎大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(基礎研究成果の臨床応用推進研究)
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
34,504,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
アドレノメデュリン(AM)は我々が発見した強力な降圧作用を有する生理活性ペプチドであり、多彩な作用を有し、循環調節や循環器疾患の病態に極めて重要な役割を果たしている。一方、AMには強力な抗炎症作用や組織保護作用があることが明らかになり、炎症性腸疾患(IBD)治療薬としても期待されている。
本研究の目的は、IBDの治療薬としてのAMの有用性を基礎的および臨床的研究で明確にし、AMをIBDの治療薬として実用化するための基盤を確立することである。研究期間3年のうち、前半は臨床研究を行うための基礎研究を行い、後半にAMのIBD治療薬としての有用性を証明するための探索的臨床研究を行う。
本研究の目的は、IBDの治療薬としてのAMの有用性を基礎的および臨床的研究で明確にし、AMをIBDの治療薬として実用化するための基盤を確立することである。研究期間3年のうち、前半は臨床研究を行うための基礎研究を行い、後半にAMのIBD治療薬としての有用性を証明するための探索的臨床研究を行う。
研究方法
AM のIBD発症・増悪化抑制効果およびその機序について、IBDモデルであるDSS腸炎モデルマウスを用い、症状と病理学的所見、通性嫌気性菌数、上皮間T細胞のサイトカイン産生等の検討を行なった。一方、臨床研究の準備としては、臨床研究に用いる製剤を作成すると共に、臨床研究に関するプロトコールを作成した。
結果と考察
DSS腸炎モデルマウスでは顕著な体重減少、下痢、下血などが示されたが、AM投与によりそれらの症状が著しく軽減した。また、AM投与により、腸管組織の炎症像は顕著に軽減した。IBD患者では一部の常在菌が異常に増加し、腸炎の発症・増悪化の原因になる。常在菌の大半を占める通性嫌気性菌数を調べた結果、対照群と比較しAM投与群では菌数が減少した。AM投与群では上皮間T細胞から産生されるサイトカインは、対照群と比較しAM投与群で炎症性サイトカイン(IL-6, TNF-)の産生が減少し、制御性サイトカイン(TGF-)は増加した。以上の結果、AM は炎症性腸疾患モデル動物では、炎症性サイトカインや嫌気性菌を抑制して、抗炎症および臓器保護作用を示し、病態と症状を改善することが示された。
臨床研究に用いるAM製剤については、GMP基準で合成されたAM原末を製剤化して、臨床研究に用いる準備ができている。さらに、臨床研究のプロトコール作成が終了し、当施設での倫理委員会での承認も得られた。
臨床研究に用いるAM製剤については、GMP基準で合成されたAM原末を製剤化して、臨床研究に用いる準備ができている。さらに、臨床研究のプロトコール作成が終了し、当施設での倫理委員会での承認も得られた。
結論
AMはヒトの体内に存在する物質であり抗原性がなく、安全性も高いことから、安心して使用できる有効な炎症性腸疾患治療薬になりうる可能性が示された。また、臨床研究開始に向けての準備も着実に進んでいる。
公開日・更新日
公開日
2011-05-30
更新日
-