小児からの臓器提供にかかる基盤整備と普及・教育システムの開発に関する研究

文献情報

文献番号
202214003A
報告書区分
総括
研究課題名
小児からの臓器提供にかかる基盤整備と普及・教育システムの開発に関する研究
課題番号
21FF1001
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
荒木 尚(埼玉医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 瓜生原 葉子(学校法人同志社 同志社大学 商学部)
  • 多田羅 竜平(大阪市立総合医療センター緩和医療科兼小児内科)
  • 西山 和孝(北九州市立八幡病院 小児科)
  • 種市 尋宙(富山大学学術研究部医学系小児科学 小児科学講座)
  • 日沼 千尋(東京女子医科大学 看護学部 )
  • 別所 晶子(埼玉医科大学総合医療センター小児科)
  • 笹月 桃子(西南女学院大学 保健福祉学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 移植医療基盤整備研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
7,460,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
改正法施行より10年が経過し、わが国の小児の脳死下臓器提供も緩徐に増加しつつある一方、制度運用における課題が指摘されてきた。本研究は小児脳死下臓器提供の制度における多角的課題を踏まえ、総合的解決策の提言を行うことを研究目的としてきた。令和4年度は、①臓器提供の律速因子の解明、②被虐待児を除外するマニュアルの改訂および可視的ツールの開発、③全国の5類型臓器提供施設における虐待診断の現状調査、④重症小児患者における臓器提供の意思表示、⑤終末期患者の家族ケアのあり方、⑥更なる教育・啓発活動について検討し、令和5年度は、臓器提供の律速因子をさらに抽出し対策を検討する。
研究方法
① 小児脳死下臓器提供の律速に関する研究 (荒木班)
国内18歳未満の脳死下臓器提供に関するデータを日本臓器移植ネットワークから開示を受け、臓器提供成立群50件、不成立群50件を対象として2群間比較を行い、臓器提供の律速因子を検討する。
② 被虐待児を除外するマニュアルの改訂および可視的ツールの開発(種市班)
脳死下臓器提供の被虐待児除外に関し文献的評価を実施した。脳死、小児、臓器提供、虐待などのキーワードから文献を探索した。関係者へのインタビューから、わが国の小児脳死下臓器提供の課題を抽出した。研究結果を日本小児科学会倫理フォーラムで講演した。
③ 臓器提供施設における虐待診断の現状調査(荒木班)
I.国際的課題について現地教育や講演、インタビュー調査から日本の制度の特殊性について考察した。
II.虐待を受けた児童からの臓器提供に関する意識の変化( 厚労科研横田班分担研究)日本小児救急医学会員へのアンケート調査を実施した。
④ 重症小児患者における臓器提供の意思表示
初めて小児の臓器提供を実施した施設で実務に関わった看護師10名より聞き取り調査を行った。(西山班)文献的考察より「関係性の内にある弱き存在をいかに支え得るか」をテーマに掲げ、第34回 生命倫理学会年次大会にてWSを企画・開催した。(笹月班)
⑤ 終末期患者の家族ケアのあり方
国内外の緩和ケア教育プログラムの歴史や実態から小児緩和ケアの教育法について検討した。(多田羅班)「医療者の想い」について研究を進め、脳死下臓器提供を実施した施設を対象に看護師の教育ニーズの調査を実施した。(日沼班)機縁法から対象者を決定しインタビュー調査を行い、家族ケアについて文献研究を行った。(別所班)
⑥ 更なる教育・啓発活動について(瓜生原班)
全中学10,189校の道徳推進教師対象としたSurveyMonkey回答形式による調査研究1、全高校5,063校を対象に定量調査としてSurveyMonkey回答形式とした研究2を行った。

結果と考察
① 小児脳死下臓器提供の律速に関する研究 (荒木班)  日本臓器移植ネットワーク倫理委員会より承認され、令和5年4月より開始する。
② 被虐待児を除外するマニュアルの改訂および可視的ツールの開発(種市班)
文献71件が該当、被虐待児除外が問題となる5件を分析、全例が提供に至らない背景が明らかになった。
③ 臓器提供施設における虐待診断の現状調査(荒木班)
I.海外の臓器提供体制の把握
INTERNATIONAL CONGRESS DONARTE 2022にて実技講師と招待講演を行った。イタリアの臓器提供の歴史と現状から日本の制度を検討した。一方、インド初のDTI/TPMが開催、講師を務めた。招待講演を行い学会表彰を受けた。
II.虐待を受けた児童からの臓器提供に関する意識の変化に関する調査から、被虐待児からの臓器提供を容認する傾向が示された。
④ 重症小児患者における臓器提供の意思表示(西山班、笹月班)
ドナー、レシピエント各々語りの非対称性があり、双方に意思決定する礎の部分に不均衡があることが分かった。
⑤ 終末期患者の家族ケアのあり方(多田羅班、日沼班、別所班)
わが国の小児緩和ケア提供に関する国際評価は低く、教育機会が必要である。現在「小児緩和ケア教育プログラム」が展開されている。また子どもと家族への看護に活用できる教育プログラムに関する調査が予定されている。アメリカにおける看取りや脳死判定、またOPOの機能が報告されたが、一貫し家族に寄り添う専門職はないことも分かった。
⑥ 更なる教育・啓発活動について(瓜生原班)
授業実施者は、臓器移植や提供を身近で、家族が想い合い、つながるとイメージする傾向にある反面、授業内容については不安や葛藤を抱くことが分かった。

結論
現行制度の大きな課題である被虐待児の除外や子どもの意思表示に関して研究を進めた。臓器提供の意思を叶えるため、子どもの緩和ケア、看護師の教育、家族やスタッフケアの指針の検討に資する最新の知見を集め、各々検討を行った。命の授業の実践が生徒の臓器提供の意思表示にいかに反映されるか検討を行った。

公開日・更新日

公開日
2023-12-13
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2023-12-13
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202214003Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
9,698,000円
(2)補助金確定額
9,698,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,460,838円
人件費・謝金 1,241,904円
旅費 2,321,623円
その他 2,435,635円
間接経費 2,238,000円
合計 9,698,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2023-12-13
更新日
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