適切な末梢血幹細胞採取法の確立及びその効率的な普及による非血縁者間末梢血幹細胞移植の適切な提供体制構築と、それに伴う移植成績向上に資する研究

文献情報

文献番号
202214002A
報告書区分
総括
研究課題名
適切な末梢血幹細胞採取法の確立及びその効率的な普及による非血縁者間末梢血幹細胞移植の適切な提供体制構築と、それに伴う移植成績向上に資する研究
課題番号
20FF1002
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
日野 雅之(大阪公立大学 大学院医学研究科 血液腫瘍制御学)
研究分担者(所属機関)
  • 西田 徹也(日本赤十字社愛知医療センター名古屋第一病院 血液内科)
  • 上田 恭典(倉敷中央病院 血液内科・血液治療センター)
  • 中世古 知昭(国際医療福祉大学 医学部 血液内科)
  • 熱田 由子(日本造血細胞移植データセンター)
  • 矢部 普正(東海大学 医学部)
  • 長藤 宏司(久留米大学 医学部 血液・腫瘍内科)
  • 藤 重夫(大阪国際がんセンター 血液内科)
  • 矢野 真吾(東京慈恵会医科大学 腫瘍・血液内科)
  • 後藤 秀樹(北海道大学病院 検査・輸血部)
  • 難波 寛子(東京都赤十字血液センター 事業推進二部)
  • 廣瀬 朝生(大阪公立大学 大学院医学研究科 血液腫瘍制御学)
  • 岡村 浩史(大阪公立大学大学院 医学研究科、血液腫瘍制御学)
  • 梅本 由香里(大阪公立大学医学部附属病院 看護部)
  • 小川 みどり(公益財団法人日本骨髄バンク)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 移植医療基盤整備研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
7,124,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
非血縁者末梢血幹細胞移植をさらに普及させ、最適な時期に最適なドナーから移植ができることで患者救命、移植成績の向上を目指すため、ドナー選択に資するエビデンスに基づいた情報発信、ドナーの安全性向上に資する体制の整備、コーディネートの効率化、採取の効率化、ドナーの負担軽減、ドナープール拡大に向けたドナー適格性の再評価を行い、安全で希望に添う負担が少ない提供体制を確立し、移植後患者の慢性GVHDを含めた合併症対策、長期フォローアップ体制を確立し、厚生労働行政における課題と対策の提言・施策の迅速かつ効率的な実現が出来るよう研究を行なった。
研究方法
R3年度に引き続きドナー安全講習を実施した。ドナー安全向上のための動画コンテンツを作成した。R3年度開発したドナーアプリを前方視的に評価した。R3年度に実施した造血細胞移植患者手帳アンケート調査結果に基づき、改訂を行った。体外フォトフェレーシス(ECP)のニーズ、凍結の実態を調査した。H30年度のDPCデータとTRUMPデータを用いてPBSCT実施数の比較を行った。
結果と考察
R4年度、全ての都道府県にPBSCH認定施設が設置され、135施設となった。非血縁者骨髄採取(UR-BMH)748件(前年比86.4%)、非血縁者末梢血幹細胞採取(UR-PBSCH)307件(前年比100.7%)が実施され、コロナ禍及びハプロ移植の増加でUR-BMHは減少したが、UR-PBSCHは微増し、比率は29.1%に増加した。重篤な有害事象(SAE)は認めず、骨髄バンクが策定したドナー適格性判定基準およびマニュアルに従ったUR-PBSCHは安全に実施可能であった。血縁ドナーの短期SAEはPBSCドナー0.51%、BMドナー0.32%で認め、PBSCドナーにおけるSAEリスク因子は既往歴、60歳以上、女性であった。持続型G-CSF は25.9%の施設で導入され、R5年3月末時点で247例に使用され、直近3ヶ月ではG-CSFの27.4%を占めていた。1例に既知の有害事象である採取後動脈炎が報告された。一方、連日型G-CSF filgrastimではPBSCドナーにおいて2例の報告があった。未だ多くの施設(血縁ドナー58.3%、非血縁ドナー72.6%)が原則入院でG-CSFを投与しており、理由はG-CSF投与後の有害事象に対する対応体制など安全への懸念であったため、通院でG-CSFを投与する際の注意喚起動画を作成した。アンケート結果に応じてドナーアプリを改修し、観察研究を継続した。R3年度に引き続きドナー安全研修を実施し、延べ2,102名が受講し、受講が義務化される採取責任医師および採取担当医師全員の受講が完了した。ドナー安全情報データベース、ドナー適格性判定基準検索システムを適宜改修し、アフェレーシストラブルシューティング動画vol 2を作成した。ドナー安全のさらなる向上が期待できる。PBSCHに関して外部からの人的支援を希望する職種の第一位はアフェレーシスナースであり、末梢血幹細胞採取研修の結果、日赤アフェレーシスナースのPBSCHへの参加が技術的に可能であることが確認でき、タスクシフトが期待される。末梢血幹細胞凍結保存手順書がない施設は6.5%であったが、骨髄凍結保存手順書は40.7%の施設でなかった。解凍作業の手順書は47.2%の施設でなく、25%の施設で警報装置の定期的な保守がされていなかった。アンケート調査結果に基づき造血細胞移植患者手帳の改訂を行い、かかりつけ医の一覧が記載できる項を追加、患者さんの最近の状況の記載欄を修正、アントラサイクリン蓄積量、看護師の指導内容、節目検診、がん検診の記録の項追加などを行った。手帳アプリ化のニーズは高かったが、維持費などの費用的な課題、セキュリティー上の課題から今回の改訂では採用できなかった。ECPの対象となる年間予想患者数は内科、小児科ともに約6割の施設で0-1人であった。DPCデータとTRUMPデータの比較で、同種移植数の差はわずかであるのに対して、自家移植はTRUMPの登録数が約500例少なく、啓発が必要である。
結論
R4年度全ての都道府県にPBSCH認定施設が設置され、135施設となり、UR-PBSCHは非血縁採取の29.1%を占めるに至った。ドナー安全向上のためドナー安全研修(のべ2,102名が受講)、ドナー安全情報データベース、ドナー適格性判定基準検索システムの適宜改修、アフェレーシストラブルシューティング動画作成、外来でG-CSFを投与する際の注意喚起動画、ドナーアプリの開発をおこなった。アフェレーシスナースによるタスクシフトは技術的に可能であることが確認できた。UR-PBSCTによる慢性GVHD対策としてLTFU強化のため造血細胞移植患者手帳の改訂を行った。

公開日・更新日

公開日
2023-12-13
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2023-12-13
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202214002B
報告書区分
総合
研究課題名
適切な末梢血幹細胞採取法の確立及びその効率的な普及による非血縁者間末梢血幹細胞移植の適切な提供体制構築と、それに伴う移植成績向上に資する研究
課題番号
20FF1002
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
日野 雅之(大阪公立大学 大学院医学研究科 血液腫瘍制御学)
研究分担者(所属機関)
  • 宮村 耕一(名古屋第一赤十字病院 造血細胞移植センター)
  • 西田 徹也(日本赤十字社愛知医療センター名古屋第一病院 血液内科)
  • 上田 恭典(倉敷中央病院 血液内科・血液治療センター)
  • 中世古 知昭(国際医療福祉大学 医学部 血液内科)
  • 熱田 由子(日本造血細胞移植データセンター)
  • 矢部 普正(東海大学 医学部)
  • 長藤 宏司(久留米大学 医学部 血液・腫瘍内科)
  • 藤 重夫(大阪国際がんセンター 血液内科)
  • 矢野 真吾(東京慈恵会医科大学 腫瘍・血液内科)
  • 杉田 純一(北海道大学病院 検査・輸血部)
  • 後藤 秀樹(北海道大学病院 検査・輸血部)
  • 難波 寛子(東京都赤十字血液センター 事業推進二部)
  • 西本 光孝(大阪市立大学 血液腫瘍制御学)
  • 廣瀬 朝生(大阪公立大学 大学院医学研究科 血液腫瘍制御学)
  • 岡村 浩史(大阪公立大学大学院 医学研究科、血液腫瘍制御学)
  • 梅本 由香里(大阪公立大学医学部附属病院 看護部)
  • 折原 勝己(公益財団法人日本骨髄バンク 医療情報部)
  • 小川 みどり(公益財団法人日本骨髄バンク)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 移植医療基盤整備研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
コーディネート期間の短い非血縁者末梢血幹細胞移植(UR-PBSCT)をさらに普及させ、最適な時期に最適なドナーから移植ができることで患者救命、移植成績の向上を目指すため、ドナー選択に資するエビデンスに基づいた情報発信、ドナーの安全性向上に資する体制の整備、コーディネートの効率化、採取の効率化、ドナーの負担軽減、ドナープール拡大に向けたドナー適格性の再評価を行い、安全で希望に添う負担が少ない提供体制を確立し、移植後患者の慢性GVHDを含めた合併症対策、長期フォローアップ体制を確立し、厚生労働行政における課題と対策の提言・施策の迅速かつ効率的な実現が出来るよう研究を行なった。
研究方法
非血縁者間末梢血幹細胞採取(UR-PBSCH)体制の強化、ドナー安全情報の一元管理システム構築、ドナー安全研修の実施、ドナー有害事象の分析、骨髄・末梢血幹細胞ドナー手帳の改訂、ドナー安全に資するコンテンツ作成、ドナーアプリ開発、ドナー適格性の再検討、アフェレーシスの効率化、タスクシフトの検討を検討した。造血細胞移植患者手帳アンケート調査結果に基づき、改訂を行った。体外フォトフェレーシス(ECP)のニーズを調査した。DPCデータの移植実績とTRUMPの登録実績との齟齬の検討を行なった。
結果と考察
UR-PBSCH施設は135施設(全都道府県に設置)に増加した。非血縁者骨髄採取(UR-BMH)748件(R1年度比75.4%)、UR-PBSCH 305件(R1年度比128.2%)が実施され、コロナ禍及びハプロ移植の増加によりUR-BMHは減少したが、UR-PBSCHは徐々に増加し、29.1%(R1年度19.3%)を占めた。重篤な有害事象は認めず、骨髄バンクが策定したドナー適格性判定基準およびマニュアルに従ったUR-PBSCHは安全に実施可能であった。ドナー安全情報データベース及びドナー適格性判定基準検索システムの構築、アフェレーシストラブルシューティング動画作成、ドナー安全研修(受講が義務化される採取責任医師および採取担当医師全員を含め、のべ2,102名が受講)によりドナーの安全性が向上した。持続型G-CSFは25.9%の施設で導入され、R5年3月末時点で247例に使用され、直近3ヶ月ではG-CSFの27.4%を占めていたが、未だ多くの施設(血縁ドナー58.3%、非血縁ドナー72.6%)が投与後の有害事象に対する対応体制など安全への懸念のため原則入院でG-CSFを投与しており、ドナー安全体制整備のため骨髄・末梢血幹細胞ドナー手帳の改訂、通院でG-CSFを投与する際の注意喚起動画作成、G-CSF投与後の症状登録モバイルアプリケーション開発を行なった。H29年度版およびH30年度版DPCデータとTRUMPデータを比較し、同種移植の差はわずかであるのに対して、自家造血幹細胞移植は約2割がTRUMPに登録されていない可能性があることがわかった。18-19歳の血縁ドナーと20-24歳の血縁ドナーの採取データを比較し、採取手技の遂行性とドナーの安全性に問題がないことを確認し、成人年齢引き下げに伴い、骨髄バンクドナーの提供年齢を引き下げることが可能と思われたが、若年者では健康上以外の理由での終了、特に、都合つかず・連絡とれずの割合が高く、人生にとって重要な時期と重なっていることを踏まえ、コーディネートを進行させる場合は特に配慮が必要であると思われる。
PBSCHに関してタスクシフトが充分完了しておらず、人的支援を希望する職種の第一位はアフェレーシスナースであった。PBSCH研修の結果、日赤アフェレーシスナースのPBSCHへの参加が技術的に可能であることが確認できた。凍結保存に関する調査の結果、手順書が不十分な施設が半数近くあった。
UR-PBSCTに比してUR-BMTを優先する理由は慢性GVHDへの懸念が大半であった。ステロイド抵抗性または不耐容の慢性GVHD患者数からECP治療対象予想患者数は内科、小児科ともに約6割の施設で年間0-1人であった。LTFU強化のためアンケート調査を行い、ニーズに合わせて造血細胞移植患者手帳の改訂を行った。
結論
全ての都道府県にPBSCH認定施設が設置され、135施設となり、UR-PBSCHは29.1%を占めるに至った。ドナー安全向上のためドナー安全研修(のべ2,102名が受講)、ドナー安全情報データベース及びドナー適格性判定基準検索システム構築、ドナー手帳改訂、トラブルシューティング動画及び通院でG-CSFを投与する際の注意喚起動画の作成、ドナーアプリの開発を行なった。ドナー年齢の引き下げは可能である。アフェレーシスナースによるタスクシフトは技術的に可能である。UR-PBSCTによる慢性GVHD対策としてLTFU強化のため造血細胞移植患者手帳の改訂を行った。

公開日・更新日

公開日
2023-12-13
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-12-13
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202214002C

収支報告書

文献番号
202214002Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
8,905,000円
(2)補助金確定額
8,905,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,232,290円
人件費・謝金 200,000円
旅費 510,186円
その他 4,181,524円
間接経費 1,781,000円
合計 8,905,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2023-12-13
更新日
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