文献情報
文献番号
202213001A
報告書区分
総括
研究課題名
難治性・希少免疫疾患におけるアンメットニーズの把握とその解決に向けた研究
課題番号
20FE1001
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
宮前 多佳子(東京女子医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
- 森 雅亮(国立大学法人東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
- 山路 健(順天堂大学 医学部 膠原病内科)
- 吉藤 元(京都大学大学院医学研究科 内科学講座臨床免疫学)
- 西小森 隆太(久留米大学 医学部小児科)
- 井澤 和司(京都大学大学院医学研究科発達小児科学講座)
- 岸田 大(信州大学 医学部 脳神経内科、リウマチ・膠原病内科)
- 井上 永介(昭和大学統括研究推進センター)
- 井上 祐三朗(千葉大学大学院医学研究院総合医科学)
- 酒井 良子(明治薬科大学薬学部)
- 盛一 享徳(国立成育医療研究センター 研究所 小児慢性特定疾病情報室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 免疫・アレルギー疾患政策研究
研究開始年度
令和2(2020)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
5,385,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
難治性・希少免疫疾患(自己免疫疾患,高安動脈炎,自己炎症疾患)における患者を含めた医療ステークホルダーにおけるアンメットニーズ(UMN)を明らかにし、患者UMNを評価できる国際的な患者報告アウトカム(Patient Reported Outcome;PRO)を用いて「見える化」し、地域格差を含めた把握とその解決と疫学研究、普及啓発、小児成人期移行医療の推進を目指した方法論の確立を本研究の目的とした.
研究方法
成人移行期を含む若年性特発性関節炎,関節リウマチ,全身性エリテマトーデス,抗リン脂質抗体症候群,高安動脈炎、クリオピリン関連周期熱症候群(CAPS)を主な対象疾患とし,関連患者会の協力を得て, ❶図書館検索によるUMN探索、❷医療者UMNの創出とその検証を目的とした診療実態に関する大規模データベース(DB)解析、❸製薬企業・保険者のUMNの把握、❹UMN把握に有益と考えられる国際標準指標の集積とICTを活用した「見える化」を実現するまでの課題整理と具体的なUMN抽出のための方法,について検討を行った。
結果と考察
❶UMNに関連した図書館検索では QOLを評価した論文は乏しくUMNの概念が未だ浸透しておらずいないことが推察された.評価尺度が統一されておらず、疾患や報告研究により調査内容や評価指標が異なるため、既報間におけるUMNの比較は困難であった。UMN研究における包括的QOL尺度の重要性が示唆された。❷データベース(DB)解析の特性に適応可能な医療者UMNを検討し,医療内容(薬剤)に関するものが高い優先順位をもって選定された.その検証を目的としたDB解析をナショナルデータベース(NDB,2019),小児慢性特定疾病・指定難病DB(2018-2019年度),JMDC claim DB(2015-2020年度)を用い,それぞれの特性を活かし,患者数,高額医薬品を含む薬剤の処方率,併存症,医療費,地域格差などについて検討を行った.関節型JIAではb/tsDMARDs処方割合が増加傾向を示し、2020年度の薬剤費はAdolescent and young adult(AYA)世代の関節リウマチの3.3倍に達していた.専門施設受療率が高く,既に専門施設の偏在が報告されていることより,医療の地域格差が推察された.成人移行医療の対象となる疾患については小児リウマチ医,リウマチ内科医双方の見解をもとに,次なる課題を提起し,解決策を模索する予定である.また小児リウマチ性疾患の有病率の算出を行った.❸製薬企業のUMN探索では,製薬企業が患者のUMNの把握が困難と感じていることが認識された。保険者のUMNの探索は、保険者の協力が得えられず断念した。欧米では様々なステークホルダーからのUMNの比較検討が行われているが,本邦の医療ではこのような機会は乏しい現況である.今後本邦での異なるステークホルダー相互のUMNを認識できる機会の増加が望まれる.❹UMN把握に推奨すべき国際標準的指標として,小児ではKINDL、EQ-5D-Y、成人ではSF36、EQ-5Dが適切と考えられた.しかし ICTを活用した指標の新規「見える化」の実現には,日本語で利用できるPRO尺度の制限やデジタル化における妥当性検証の問題、デジタル化における著作権等の問題などを抽出し、実装までに解決すべき課題があることが明らかとなった.また,国際生活機能分類(ICF)を用いた患者会相談事例の解析により,ICFの「活動」や「参加」のドメインに既存のPROで把握できなかったUMNを反映できることが確認された. ICFをベースとした新規質問票を作成し検証を開始した.ICFの特性を活かしたUMN把握に有用な指標となることが期待される.
結論
患者の生活、医療、職業生活や学校生活、ライフステージ等のUMNを的確に把握し、ガイドライン等に反映させることができる方法論として包括的QOL尺度の重要性が示唆された.ICFを参考としたUMNの把握は将来的に有用と考えられる.UMN評価に推奨すべき国際標準的指標を掲げることができたが,患者や家族が使用できるICTの利活用には,支障となる課題が明らかとなり本研究での実装は不可能であった.国家的な体制構築支援が望まれる.主たる医療者UMNは薬物治療に関連したものであり,患者や他のステークホルダーのUMNとの相違が推察された.異なるステークホルダー相互のUMNの認識が重要である.また医療UMNをDB解析により検証し,All Japanの実態と医療疫学を明らかにした.専門施設受療率が高いことより医療や患者UMNの地域格差が推察された.
公開日・更新日
公開日
2023-12-18
更新日
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