文献情報
文献番号
202211087A
報告書区分
総括
研究課題名
小児慢性特定疾病における医療・療養支援および疾病研究の推進に関する研究
課題番号
22FC2003
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
笠原 群生(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター 病院)
研究分担者(所属機関)
- 田倉 智之(東京大学 大学院医学系研究科 医療経済政策学講座)
- 窪田 満(国立成育医療研究センター 総合診療部)
- 小松 雅代(大阪大学 大学院医学系研究科 社会医学講座環境医学)
- 落合 亮太(横浜市立大学 大学院医学研究科 看護学専攻)
- 黒澤 健司(神奈川県立こども医療センター 遺伝科)
- 横谷 進(福島県立医科大学 ふくしま国際医療科学センター 甲状腺・内分泌センター)
- 檜垣 高史(愛媛大学 大学院医学系研究科 地域小児・周産期学講座)
- 西牧 謙吾(国立障害者リハビリテーションセンター)
- 掛江 直子(国立成育医療研究センター 研究開発監理部 生命倫理研究室)
- 盛一 享徳(国立成育医療研究センター 研究所 小児慢性特定疾病情報室)
- 桑原 絵里加(国立成育医療研究センター 研究所 小児慢性特定疾病情報室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
30,800,000円
研究者交替、所属機関変更
【研究分担者追加】
・桑原絵里加(令和4年9月1日)
研究報告書(概要版)
研究目的
小児慢性特定疾病(以下、小慢)対策の推進に寄与する基礎資料および実践基盤の整備のために、①当該事業に関連した疾病研究および適切な医療の促進に関する検討(医療費助成、医療提供体制、疾病登録など)、②地域共生および療養生活支援に関する検討(移行期医療支援・自立支援、国民への情報発信など)を行うことを目的とした。
研究方法
各分担研究者が以下の研究を実践した。
1.疾病研究および適切な医療の促進
1.1 指定難病に該当する可能性のある小児慢性特定疾病の検討
1.2小児期慢性疾病に対する医療経済評価の手法を用いた検討
1.3診療情報明細書データを利用した小児慢性特定疾病の医療費に関する検討
1.4国際生活機能分類から見た医療意見書に含めるべき項目に関する検討
1.5小児慢性特定疾病の遺伝子診断および全ゲノム解析に関する検討
1.6現行および次期登録データベースの在り方に関する検討
1.7小児慢性特定疾病児童等登録データの提供システム等に関する検討
1.8医療機関における医療意見書データ登録支援に関する検討
2.地域共生および療養生活支援
2.1移行期医療支援センターの設置促進に向けた実態と課題の把握に関する検討
2.2医療および障害・福祉の横断的な制度・施策に関する検討
2.3病弱教育と連携した小慢児童等の教育分野向け支援に関する検討
2.4地域共生の促進のための領域横断的な連携を目指す際の課題に関する検討
2.5小児慢性特定疾病児童等の生活実態および社会支援等に関する検討
2.6医療関係者や患者家族等への情報提供・情報共有についての検討
1.疾病研究および適切な医療の促進
1.1 指定難病に該当する可能性のある小児慢性特定疾病の検討
1.2小児期慢性疾病に対する医療経済評価の手法を用いた検討
1.3診療情報明細書データを利用した小児慢性特定疾病の医療費に関する検討
1.4国際生活機能分類から見た医療意見書に含めるべき項目に関する検討
1.5小児慢性特定疾病の遺伝子診断および全ゲノム解析に関する検討
1.6現行および次期登録データベースの在り方に関する検討
1.7小児慢性特定疾病児童等登録データの提供システム等に関する検討
1.8医療機関における医療意見書データ登録支援に関する検討
2.地域共生および療養生活支援
2.1移行期医療支援センターの設置促進に向けた実態と課題の把握に関する検討
2.2医療および障害・福祉の横断的な制度・施策に関する検討
2.3病弱教育と連携した小慢児童等の教育分野向け支援に関する検討
2.4地域共生の促進のための領域横断的な連携を目指す際の課題に関する検討
2.5小児慢性特定疾病児童等の生活実態および社会支援等に関する検討
2.6医療関係者や患者家族等への情報提供・情報共有についての検討
結果と考察
小児期の慢性疾患に対して、近年では、疾病の治療のみならず、患児の社会参加や医療経済の概念、移行期医療支援が重視されるようになってきた。本研究では、国際生活機能分類を用いた小慢医療意見書のコーディングの整合性が確認された。小慢児童等登録データを用いた患児の社会参加の評価を進める予定としている。医療ビッグデータを用いた研究では、小児1型糖尿病の外来診療日数の増加は、統計学的有意に入院イベントを抑制することが示唆され、関連する因子を含めた分析が望まれる。小慢と指定難病の対象疾病の対応性についての検討で、小慢の対象年齢にある20歳未満の特定医療費(指定難病)受給者証所持者を分析した結果、小慢と対応がない指定難病の一部には小慢の要件を満たす可能性のある疾病が存在することが明らかとなった。小慢の要件判断に必要となる知見の集積が重要である。成人診療科への移行には、生活の質(QOL)の向上や自立支援の重要性が認識されており、移行期医療支援センターの全国への設置推進や患者QOLの評価が必要となってくる。どちらも未だ途上であり、今後の課題となっている。小慢の対象疾患は、遺伝性疾患が半数超を占めている。遺伝学的検査が診断確定に必須でありながら保険適応となっていない対象疾患が現時点で少なくとも29疾患存在した。遺伝学的検査の在り方の更なる検討を要する。また、小慢児童等登録データや小慢対象疾病に関する診療報酬明細書データの利活用に向けた基盤整備は、疾病研究の推進につながることが期待される。
国民へ向けた小慢を含めた福祉施策制度の情報提供も重要である。ICTを活用し、小慢児童等が利用し得る施策やサービスを、患者家族の置かれた状況により一覧表示するアンケート形式ウェブサイトは、コンテンツ案まで作成された。施策利用の一助となるよう、今後、サイトの完成を目指している。小慢児童等の治療・療養生活の改善に資する情報の一元化、実施主体の省力化や効率化を図るために継続している公式ポータルウェブサイトおよび小慢指定医向けの研修用プログラムウェブサイトの運用も引き続き行い、正しい情報の提供に努めたい。
研究班における2本柱の課題の1つ、地域共生および療養生活支援に関し、小慢の相談支援体制の充実を図ることを目的とし、北海道をフィールドにICTを活用した自立支援員体制の評価と構築を行った。さらに対象地域を広げ、病弱教育と連携した相談支援モデル構築を模索している最中である。教育分野との連携では、慢性疾患を抱える子どもたちの理解を促すための教育者向けの支援冊子の、医学監修を含めた改訂を進めた。一部は改訂が終了し、最終確認を待っている。残る疾患の支援冊子の改訂作業を継続する予定である。
国民へ向けた小慢を含めた福祉施策制度の情報提供も重要である。ICTを活用し、小慢児童等が利用し得る施策やサービスを、患者家族の置かれた状況により一覧表示するアンケート形式ウェブサイトは、コンテンツ案まで作成された。施策利用の一助となるよう、今後、サイトの完成を目指している。小慢児童等の治療・療養生活の改善に資する情報の一元化、実施主体の省力化や効率化を図るために継続している公式ポータルウェブサイトおよび小慢指定医向けの研修用プログラムウェブサイトの運用も引き続き行い、正しい情報の提供に努めたい。
研究班における2本柱の課題の1つ、地域共生および療養生活支援に関し、小慢の相談支援体制の充実を図ることを目的とし、北海道をフィールドにICTを活用した自立支援員体制の評価と構築を行った。さらに対象地域を広げ、病弱教育と連携した相談支援モデル構築を模索している最中である。教育分野との連携では、慢性疾患を抱える子どもたちの理解を促すための教育者向けの支援冊子の、医学監修を含めた改訂を進めた。一部は改訂が終了し、最終確認を待っている。残る疾患の支援冊子の改訂作業を継続する予定である。
結論
本研究班では、疾病研究および適切な医療と福祉支援の促進のために、必要な基礎資料の提示や具体的な推進方策の提案ならびに社会への情報提供を行ってきた。慢性疾病を抱えた子どもたちの療養環境に関わる支援は、相互に関係しつつ多岐にわたる、総合的な支援となっている。本年度の研究成果を踏まえ、引き続き政策への貢献に努めたい。
公開日・更新日
公開日
2024-04-04
更新日
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