遺伝性骨髄不全症の登録システムの構築と診断基準・重症度分類・診断ガイドラインの確立に関する研究

文献情報

文献番号
202211078A
報告書区分
総括
研究課題名
遺伝性骨髄不全症の登録システムの構築と診断基準・重症度分類・診断ガイドラインの確立に関する研究
課題番号
22FC1011
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
伊藤 悦朗(国立大学法人 弘前大学 大学院医学研究科地域医療学)
研究分担者(所属機関)
  • 張替 秀郎(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 矢部 普正(東海大学  医学部医学科)
  • 真部 淳(国立大学法人 北海道大学大学院 医学研究院 小児科学教室)
  • 高橋 義行(名古屋大学大学院医学系研究科 成長発達医学)
  • 菅野 仁(東京女子医科大学 医学部)
  • 高田 穣(京都大学 放射線生物研究センター)
  • 大賀 正一(国立大学法人九州大学 医学研究院成長発達医学分野)
  • 照井 君典(弘前大学大学院医学研究科小児科学講座)
  • 古山 和道(岩手医科大学生化学講座分子医化学分野)
  • 多賀 崇(滋賀医科大学 医学部)
  • 小林 正夫(広島大学 大学院医歯薬学総合研究科小児科学)
  • 渡邉 健一郎(静岡県立こども病院 血液腫瘍科)
  • 金兼 弘和(東京医科歯科大学 大学院 小児地域成育医療学講座)
  • 山口 博樹(日本医科大学 医学部)
  • 神尾 卓哉(東京慈恵会医科大学 小児科学講座)
  • 小林 明恵(弘前大学大学院 医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和6(2024)年度
研究費
12,308,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
主要な遺伝性骨髄不全症には、ダイアモンド・ブラックファン貧血(DBA)、ファンコニ貧血(FA)、遺伝性鉄芽球性貧血 (CSA)、先天性赤血球形成異常症(CDA)、シュワッハマン・ダイアモンド症候群(SDS)、先天性角化不全症(DC)、先天性好中球減少症(SCN)の7疾患がある。本研究では、CDAと鑑別が問題となる先天性溶血性貧血(CHA)も対象疾患に加えて研究を推進する。先行班研究を発展させ、「遺伝性骨髄不全症のレジストリ」を確立し、より優れた「診断基準・重症度分類・診断ガイドライン」の作成を目指す。これまでの研究を通じて確立した解析基盤を共有し、全ゲノムシークエンス解析拠点、日本小児血液・がん学会の疾患登録事業や原発性免疫不全班とも連携し、正確な診断に基づいた新規症例の把握と検体収集を行う。遺伝子診断を含めた中央診断を行い、正確な診断に基づいた疫学調査を行う。難病プラットフォームを用いた「遺伝性骨髄不全症候群のレジストリ」の構築を進め、より精度の高い疾患データベースの確立とエビデンスに基づいた診断基準、重症度分類と診療ガイドラインの改訂を行う。
研究方法
本研究申請では、発症数が少なく共通点の多い遺伝性骨髄不全症の医療水準の向上をより効果的に進めるために、一つの研究班に統合して研究を推進する。本研究班は、8つの疾患別研究拠点から構成され、各研究拠点(DBA(伊藤)、SA(張替)、FA(矢部・高田)、CDA(高橋・真部)、DC (高橋、山口)、SDS (渡邉)、SCN(小林)、CHA(菅野))は、疫学調査、臨床データおよび検体の収集、遺伝子診断のための既知の原因遺伝子解析とバイオマーカーなどの特殊検査を担当する。研究代表者(伊藤)が、DBAの研究を担当するとともに研究全体を統括する。令和4年度は、難病プラットフォームを用いた「遺伝性骨髄不全症候群のレジストリ」の構築を進め、診療ガイドラインの小改訂を行う。令和5~6年度は、データ収集と観察研究を継続し、正確な遺伝性骨髄不全症の実態把握を行い、より精度の高い疾患データベースの確立とエビデンスに基づいた診断基準、重症度分類と診療ガイドラインの改訂を行う。
結果と考察
各研究拠点は、疫学調査、臨床データおよび検体の収集、遺伝子診断のための既知の原因遺伝子解析とバイオマーカーなどの特殊検査を担当し正確な診断に基づいた新規症例の把握と検体収集を行った。DBAは、14例が新規登録され、2例(14%)に既報の遺伝子変異を認めた。これまでに263例のDBAの臨床情報と検体の収集および遺伝子解析を行い、143例(54.4%)に原因となるRP遺伝子およびGATA1遺伝子変異を見出した。原因遺伝子を同定することができなかったDBAの検体(29トリオ検体を含む31症例93検体)を、國土班に依頼して全ゲノムシークエンスを行い、データ解析を進めている。原因遺伝子が不明であるCSA症例のエクソーム解析を行った結果、本邦では報告のないHSPA9遺伝子の変異が認められた。HLA適合ドナーがいないFA患者に両親からのHLAハプロ一致移植が検討されるが、近年主流となっているPT-CY法は、アルキル化剤の総量に制限のあるFAでは減量が必要で有効性に疑問が生じている。GVHD予防法として短期MTX、Tacrolimus、ATG、MMFを組み合わせ、3例のFA患者にハプロ一致移植を施行した。全例が生着し、急性および慢性GVHDは制御可能で生存しており、PT-CY法なしでのハプロ一致移植が可能であることが示された。原因遺伝子が明らかになっていないDCを含む骨髄不全症109例に対してDCの新規原因遺伝子変異であるMDM4変異を検索したが、変異は認められなかった。脱水型遺伝性有口赤血球症が疑われた日本人20家系を解析したところ、12家系にはPIEZO1または、KCNN4の病原性バリアントを同定した。血液疾患182例に対して、ターゲットシーケンスを実施し、FA13例、CHA12例、DC5例、DBA3例を遺伝子診断した。本研究班で得られたデータをもとに、診療ガイドラインの改訂を行った。さらに、難病プラットフォーム(AMED 松田班)を用いた「遺伝性骨髄不全症候群のレジストリ」にDBA症例を中心にWeb登録を進めた。
結論
正確な診断に基づいた新規症例の把握と検体収集を行い、先天性骨髄不全症のより精度の高い疾患データベースの構築を推進した。HLA適合ドナーがいないFA患者に、PT-CY法なしでのハプロ一致移植が可能であることが示した。難病プラットフォームを用いた「遺伝性骨髄不全症候群レジストリ」の構築が完了し、DBA症例を中心に登録を進めた。本研究班で得られたデータをもとに遺伝性骨髄不全症の診療ガイドラインの改訂を行った。

公開日・更新日

公開日
2024-04-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2024-04-09
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202211078Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
16,000,000円
(2)補助金確定額
16,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 8,009,821円
人件費・謝金 2,221,239円
旅費 140,620円
その他 1,936,322円
間接経費 3,692,000円
合計 16,000,002円

備考

備考
その他(利息)2円

公開日・更新日

公開日
2023-11-21
更新日
-