全身性肥満細胞症の診療ガイドライン作成に向けた疫学研究

文献情報

文献番号
202211077A
報告書区分
総括
研究課題名
全身性肥満細胞症の診療ガイドライン作成に向けた疫学研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
22FC1010
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
黒川 峰夫(東京大学 医学部附属病院 血液・腫瘍内科)
研究分担者(所属機関)
  • 真部 淳(国立大学法人 北海道大学大学院 医学研究院 小児科学教室)
  • 山本 俊幸(福島県立医大 医学部)
  • 齋藤 明子(独立行政法人国立病院機構 名古屋医療センター臨床研究センター 臨床研究企画部 臨床疫学研究室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
2,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
肥満細胞症は肥満細胞の増殖および皮膚や臓器への浸潤を特徴とする疾患群であり、皮膚に限局する皮膚肥満細胞症と臓器浸潤をきたす全身性肥満細胞症(Systemic Mastocytosis, SM)に分類される。SMは全身掻痒感、紅潮や消化管潰瘍などの全身症状をきたし高頻度で致死的なアナフィラキシーショックに至る、難治性の疾患である。希少疾患であることもあり、その臨床像および分子生物学的な病態については未解明のままである。本研究はSMと診断される症例および検体を全国的に収集し、その臨床像の解析・分類を行うことで希少疾患であるSMの本邦における診療実態を明らかにすることを目的とする。
研究方法
1.SM症例収集
 本研究では多施設共同後方視的調査研究を行う。SMは希少疾患であることから、その頻度や臨床背景を調べるために症例登録システムを構築し、全国の診療施設からの登録を受ける。一次調査として全国の主要な施設の血液内科、皮膚科を対象に質問票を用いたSMの診療実態の調査を行い、SM症例数を予測する。一次調査においてSM症例がいると回答が得られた施設の代表者に対しては、より詳細な臨床情報を得るため二次調査として質問票を用いた調査を行う。二次調査によって得られた情報をもとに、日本におけるSM症例の男女比、年齢中央値、実際に行われている治療内容の割合等の基本的だが未知の情報を研究代表者らでまとめる。臨床情報の解析は、統計調査を専門とする研究分担者が関与し、統計学的手法を用いた解析が行われる。
2.検体集積および遺伝子情報の解析
 SMの最新の診断基準において、骨髄中のKIT遺伝子のD816V変異が小項目に含まれるが、検索をせずとも他の小項目にて診断が可能であり、必ずしもこの遺伝子異常情報が十分に検索されずに診断されている可能性がある。しかしながら、本疾患に関してこれまで報告があり疾患形成に関連性の高いと考えられる遺伝子変異はこの変異のみであり、全例においての変異検索が望ましい。本研究においてはKIT遺伝子のD816V変異有無に関して研究代表者の施設において検体集積のもと中央診断を行う。検体からのゲノムDNAおよびRNA抽出を研究代表者らの施設にて行い、既知のKIT遺伝子のD816V変異有無を検索し、臨床像や治療反応性、予後との関連性を調査する。
3.予後予測因子の同定、重症度分類の確立及び診療ガイドラインの策定
 上記1.及び2.で得られた情報をもとに、SM患者の臨床像を明らかにすると共に発症関連因子、予後関連因子の同定を行い、重症度分類を確立する。また、本邦で行われている治療の実態を把握した上でSMの診療ガイドラインを策定する。
結果と考察
一次調査として血液504施設、皮膚科領域559施設、小児科領域443施設、計1506施設に対して一次調査票を送付した。順次回答が得られており集計を進めている。
本研究により、本邦におけるSMの診療実態が明らかになる。全国の診療機関から得られた臨床データの統計学的解析結果から予後関連因子の同定が可能となり、重症度分類の策定が可能となる。また、現在行われている治療法の解析から、最適な治療法の検討が可能となる。上記のような実際の臨床データを客観的な根拠とした診療ガイドラインの作成は、全国の診療機関における今後のSM診療の医療水準の向上に大いに寄与することとなる。これらの研究成果は日本血液学会を始めとした関連学会での発表や講演を通じて広く全国に普及啓発が行われる。その結果、適切なSMの診断治療が国内全域で可能となることで、不適切な治療が漫然と行われることが防がれ、医療費・社会保障費の抑制につながる。また、全国規模での症例収集が行われることで、相当な水準での科学的妥当性が得られる臨床研究結果が得られることが予想され、米国血液学会を始めとした国際学会での研究発表や、国際的な学術論文への論文投稿により、国際的にもインパクトのある研究結果の報告ができる。そのため、本邦のみならず国際的な観点からも本邦発の臨床研究結果を発信することが可能となる。
上記で得られた臨床データおよび患者データベース構築の結果は、今後SM患者の予後およびQOL改善のために必要な、病態解明に向けての重要な基盤データとしても有用となることが想定される。
結論
現在実施している一次調査により本邦におけるSMの症例数が明らかとなる。一次調査でSM症例が存在する施設には二次調査を依頼し、詳細な臨床情報の収集、検体収集を進める予定である。今後もさらに本研究を推し進め、より詳細な臨床情報の解析を行い、本邦におけるSM症例の臨床的特徴や最適な治療方針などをまとめ、診療ガイドラインの作成の基盤とする。

公開日・更新日

公開日
2024-04-04
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202211077Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,500,000円
(2)補助金確定額
3,500,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,130,222円
人件費・謝金 435,091円
旅費 0円
その他 136,928円
間接経費 800,000円
合計 3,502,241円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2023-12-18
更新日
-