慢性活動性EBV病の疾患レジストリ情報に基づく病型別根治療法の確立

文献情報

文献番号
202211071A
報告書区分
総括
研究課題名
慢性活動性EBV病の疾患レジストリ情報に基づく病型別根治療法の確立
課題番号
22FC1004
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
大賀 正一(国立大学法人九州大学 医学研究院成長発達医学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 新井 文子(聖マリアンナ医科大学)
  • 今留 謙一(国立成育医療研究センター)
  • 大島 孝一(久留米大学)
  • 森 毅彦(東京医科歯科大学)
  • 和田 泰三(金沢大学)
  • 笹原 洋二(東北大学)
  • 伊藤 嘉規(日本大学)
  • 村松 秀城(東海国立大学機構)
  • 坂口 大俊(国立成育医療研究センター)
  • 澤田 明久(大阪府立病院機構大阪母子医療センター)
  • 平井 陽至(岡山大学)
  • 小林 徹(国立成育医療研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
2,690,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
海外では慢性活動性EBV病と総称される慢性活動性EBV感染症 (CAEBV:小児慢性特定疾患に指定)と、EBV関連血球貪食性リンパ組織球症、種痘様水疱症および蚊刺過敏症は、日本の小児~若年成人を中心として報告されている希少難病である。この4病型の臨床像は異なるが、EBV感染T細胞・NK細胞の増殖から、臓器不全に至る予後不良なものが多い。
これまで難治性疾患政策研究事業において、CAEBVとその類縁疾患の研究班は以下の成果を上げてきた。平成26~28年度、本疾患群に対する診断体制を確立し、診断基準・診療ガイドラインを作成した(CAEBVとその類縁疾患の診療ガイドライン2016; 日本小児感染症学会監修)。平成29~令和元年度には4疾患のレジストリ・バイオバンクの基盤を構築し、この間に本疾患群の発症病理解明、診断法確立、新規治療法開発に努めた。これらを受け、令和2年~3年度には発刊後6年となる診療ガイドラインの改訂作業に着手した。しかし、改訂作業を通じ、改めて、診断に必須である感染細胞の迅速かつ汎用性の高い同定法の確立、予後因子や至適治療法に関するさらなるエビデンス創出の必要性が明らかになった。
具体的には、CAEBV以外の3病型の詳細な臨床像や、各病型間の移行に関して、未だ不明な点が多い。CAEBVは造血細胞移植が唯一の根治療法で、特異的治療薬はない。病態解明と至適治療法の開発は喫緊の課題である。一方、その他の3病型の至適治療法、特に造血幹細胞移植の適応を明確にする必要がある。
CAEBVと類縁疾患は病変が経過とともに全身に進展するため、特定の疾患領域/診療科での診療に帰属させにくい。また、患者年齢は幅広く小児からAYA世代、そして成人までを一体として研究・診療をすすめる体制が望まれる。患者は東アジアに集中していたが、2017年改訂のWHO造血器腫瘍分類に記載されて以降、世界的にも報告が増えてきた。日本をはじめとする東アジアに患者が多いため、私たちの情報発信と研究推進の意義は大きい。
本研究では、集積したCAEBVとその類縁疾患のレジストリ情報に基づいて、正確な診断と病型別の根治療法確立を目指して、① 診療ガイドラインの世界標準へ向けた改定(英文化)、②造血細胞移植の最適化を主眼とした治療指針のエビデンスの創出、③迅速なEBV感染細胞同定法の開発を目指す。
研究方法
a. 初版診療ガイドラインの内容を再検討し、改訂を完了して、英文化を開始する。
b. 疾患レジストリ登録を進めて、治療に関わる課題を抽出し解析を目的として討議を行う。
c. 汎用性の高い感染細胞同定法を開発し、開発中の新規診断薬開発を推進する。
d. 令和5年3月に東京で治療法確立に向けたシンポジウムと患者向けの公開講座を開催する。
結果と考察
 診療指針が改訂され新規診断患者の登録も進んできたが、疾患重症度の多様性と類縁疾患への移行、遺伝性素因との関連、リンパ増殖性疾患から悪性リンパ腫などへの進行、が治療方針に大きく影響していること明確になってきた。これが診療に関わる各科でも共有されるようになった。一方で、これが適切な造血細胞移植の時期と方法の決定に関与し治療選択の難しさを象徴するものであることも集積症例の結果から示唆される。
結論
EBV感染から炎症とリンパ増殖性疾患およびリンパ腫へと進展する本症の適切な治療介入の時期と方法の戦略を具体化するためのエビデンスが集積されている。疾患概念の国際化を進めて、根治のための造血細胞移植の至適化と同時に病勢制御の新規薬剤の開発を検討していくことが重要である。

公開日・更新日

公開日
2024-04-04
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2024-04-04
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202211071Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,497,000円
(2)補助金確定額
3,497,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,285,670円
人件費・謝金 0円
旅費 236,880円
その他 167,450円
間接経費 807,000円
合計 3,497,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2023-12-13
更新日
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