フォン・ヒッペル・リンドウ病における実態調査・診療体制構築とQOL向上のための総合的研究

文献情報

文献番号
202211068A
報告書区分
総括
研究課題名
フォン・ヒッペル・リンドウ病における実態調査・診療体制構築とQOL向上のための総合的研究
課題番号
22FC1001
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
辻川 明孝(京都大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 石田 晋(北海道大学 大学院医学研究院)
  • 海野 倫明(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 江藤 正俊(国立大学法人九州大学 大学院医学研究院)
  • 小杉 眞司(京都大学 大学院医学研究科)
  • 齊藤 延人(国立大学法人東京大学 医学部附属病院)
  • 妹尾 浩(京都大学 大学院医学研究科)
  • 高橋 綾子(京都大学 大学院医学研究科)
  • 竹越 一博(国立大学法人筑波大学 医学医療系)
  • 中村 英二郎(国立研究開発法人国立がん研究センター中央病院 泌尿器科・後腹膜腫瘍科)
  • 中本 裕士(京都大学 大学院医学研究科)
  • 長谷川 奉延(慶應義塾大学 医学部)
  • 武笠 晃丈(熊本大学 大学院生命科学研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和4(2022)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
2,650,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
フォン・ヒッペル・リンドウ(VHL)病は、常染色体優性遺伝の希少難病(推定有病率36,000人に1人)であり、脳脊髄血管芽腫、網膜血管腫、膵病変、腎病変、褐色細胞腫、内リンパ嚢腫瘍などを合併する症候群である。小児期から生涯にわたって全身に発症を繰り返し、複数回の手術を要し、四肢麻痺、めまい、視覚障害などQOLの低下も著しい。身体機能の温存には、複数診療科が連携し継続して検査を行い、適切な時期での治療介入を行うことが必須となる。本研究の目的は、疫学・実態調査、現在の医療体制に即した診断・治療の標準化を実現し、患者・家族に対して適切な医療体制および社会福祉制度の環境を整え、QOLを向上させ、本症候群の臨床的克服に向けた基盤を整備することである。
研究方法
①各診療科のVHL病専門家にて、診断基準・重症度分類や診療指針の改訂を行い、関連学会の承認を得る。②ナショナルデータベース(全国民規模レセプトデータベース)を利用した疫学調査を実施する。全てのレセプト情報を用いて、2020年10月の時点でVHL病の確定病名を有する患者を同定する。各臓器において、VHL病関連腫瘍の有病割合などを調査する。③患者への啓発活動として、患者会ほっとChainと連携を行う。④国際連携として、米国VHL Allianceにおける国際拠点施設に登録申請し、連携を行う。
結果と考察
①本研究班13名の研究代表・分担者に加え、研究協力者として合計11診療科のVHL病専門家40名を全国より選任、合計53名の研究班を結成した。複数診療科にまたがる症候群であり、各病変8グループに分かれ、最新の知見に基づいた診療指針および診断基準・重症度分類の改訂を行い、画像診断に関して、放射線診断科の研究分担・協力者が、全体を通じて監修を行った。また今回の改訂にて小児期・AYA世代の患者への対応や遺伝カウンセリングについて十分な内容を追加した。改訂に関して、事前に10関連学会において検討の上で承認が可能であるとの内諾を得て診断基準・重症度分類の承認申請を行った。
②疫学研究として、ナショナルデータベース(全国民規模レセプトデータベース)にてデータ抽出を完了した。本邦におけるVHL病の有病者数は1,448人(男性636人、女性812人)10万人年あたりの罹患率は1.15、診断年齢の平均は40.1±17.8歳であった。VHL病関連腫瘍の有病割合は、網膜血管腫32%、小脳・延髄血管芽腫59%、脊髄血管芽腫33%、腎細胞癌35%、膵内分泌腫瘍22%、副腎褐色細胞腫23%であった。
③患者会との連携については、令和4年6月26日脳脊髄血管芽腫放射線治療に関する医療講演会を行った。同年12月4日の患者会総会では、本研究班の説明と実態調査への協力要請を行った。
④国際連携として、米国VHL Allianceとの連携を行った。令和4年11月に隔年開催のVHL病国際シンポジウムに参加した他、毎月開催されるVHL tumor boardのWEB症例カンファレンスにも毎回参加し交流を深めた。また、令和4年12月京都大学医学部附属病院VHL病センターがinternational clinical care center国際拠点施設として認定された。
本研究では、6年ぶりに診療指針および診断基準・重症度分類を大幅改訂し、最新の知見にもとづいた標準的診療を提示することで、本邦でのVHL病の診療の質を底上げし、早期発見・適切な管理による身体機能の温存、QOLの向上などの成果が期待される。VHL病患者は、正しい医学的な情報を得る方法が乏しいのが現状であるが、患者会と連携し、医療講演会を実施することで、患者自身への疾患への理解を深めることもできた。
疫学研究に関しては、従来は各診療科にわかれてのアンケート調査のみでしか情報がなく、国内のVHL病患者の全体像把握が困難であった。本研究では全国民規模レセプトデータベースを利用した疫学研究により、より正確な患者数、年齢、性別、病変の有病割合のデータを得ることができた。新規治療薬HIF-2α阻害薬の国内承認に向けての情報源として活用することが可能である。また新規治療薬が海外で先行承認されていることや、希少疾患であることから、世界的な情報を取り入れる国際連携は、国内での診療レベル向上に有用である。海外の学会やWEBカンファレンスに参加し、京都大学医学部附属病院VHL病センターが国際拠点施設として認定されたことはこれからの国内診療の質の向上に寄与すると考えられる。
結論
VHL病のガイドライン・重症度分類の改訂、診断・治療の標準化、疫学調査、患者への啓発活動、国際連携を行った。VHL病患者の早期診断、適切な時期かつ低侵襲治療介入を実現するなど医療の質を底上げし、QOLの向上などの成果に繋がる成果が期待される。

公開日・更新日

公開日
2024-04-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-04-09
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202211068Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,445,000円
(2)補助金確定額
3,445,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,271,941円
人件費・謝金 828,058円
旅費 28,340円
その他 545,815円
間接経費 795,000円
合計 3,469,154円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2023-12-01
更新日
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