先天性心疾患を主体とする小児期発症の心血管難治性疾患の救命率の向上と生涯にわたるQOL改善のための総合的研究

文献情報

文献番号
202211063A
報告書区分
総括
研究課題名
先天性心疾患を主体とする小児期発症の心血管難治性疾患の救命率の向上と生涯にわたるQOL改善のための総合的研究
課題番号
21FC1014
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
大内 秀雄(独立行政法人国立循環器病研究センター 小児循環器内科)
研究分担者(所属機関)
  • 野口 輝夫(国立研究開発法人国立循環器病研究センター 病院)
  • 市川 肇(国立循環器病研究センター 小児心臓外科)
  • 黒嵜 健一(独立行政法人国立循環器病研究センター 小児循環器部)
  • 吉松 淳(国立研究開発法人国立循環器病研究センター 周産期・婦人科)
  • 岩永 善高(国立循環器病研究センター 循環器病統合情報センター)
  • 白石 公(国立循環器病研究センター オープンイノベーションセンター 教育推進部)
  • 武田 充人(北海道大学病院 小児科)
  • 豊野 学朋(秋田大学 医学部)
  • 鈴木 孝明(埼玉医科大学 医学部)
  • 小野 博(国立成育医療研究センター 循環器科)
  • 三浦 大(東京都立清瀬小児病院循環器科)
  • 八尾 厚史(東京大学 保健・健康推進本部)
  • 犬塚 亮(東京大学医学部)
  • 高橋 健(順天堂大学 小児科学教室)
  • 土井 庄三郎(東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 小児・周産期地域医療学)
  • 山岸 敬幸(慶應義塾大学医学部)
  • 水野 篤(聖路加国際大学 急性期看護学)
  • 稲井 慶(東京女子医科大学循環器小児科)
  • 上田 秀明(地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立こども医療センター  循環器内科)
  • 先崎 秀明(北里大学 医学部)
  • 落合 亮太(公立大学法人横浜市立大学 学術院 医学群 医学研究科 看護学専攻)
  • 岩本 眞理(横浜市立大学 小児循環器)
  • 瀧聞 浄宏(長野県立こども病院 循環器小児科 )
  • 坂本 喜三郎(静岡県立こども病院 循環器センター心臓血管外科)
  • 芳村 直樹(富山大学学術研究部医学系 外科学(呼吸・循環・総合外科)講座)
  • 杉山 央(東京女子医科大学 循環器小児科)
  • 三谷 義英(三重大学医学部附属病院)
  • 小田 晋一郎(京都府立医科大学 小児心臓血管外科)
  • 小垣 滋豊(大阪大学大学院医学系研究科 小児科学)
  • 青木 寿明(大阪母子医療センター 小児循環器科)
  • 城戸 佐知子(兵庫県立こども病院 循環器内科)
  • 赤木 禎治(岡山大学 循環器疾患集中治療部)
  • 笠原 真悟(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 心臓血管外科学)
  • 檜垣 高史(国立大学法人 愛媛大学 大学院医学系研究科 地域小児・周産期学講座)
  • 佐川 浩一(福岡市立こども病院 循環器科)
  • 須田 憲治(久留米大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
先天性心疾患を主体とする小児期発症の心血管難治性疾患では、小児期の心臓外科手術により血行動態が改善しても、遺残症や続発症により生涯にわたる適切な管理と治療が必要となる。また成人に達したこれらの患者を診療することのできる専門施設は十分には整備されてこなかった。本研究では、患者が小児期から成人期までスムースに最善の治療が受けられるよう診療体制の構築を図るとともに、データベースの構築、患者の社会的自立を手助けするさまざまな教育ツールの充実、診療に携わる若手医師看護師の教育などの政策医療を実行することを目的とする。
研究方法
先天性心疾患患者をはじめとする小児期発症の心血管難治性疾患患者が、小児期のみならず成人期まで生涯に渡り良好な生活が営めるよう、関連する各学会や患者団体とともに、疾患の診断基準の確立、ガイドラインの作成、患者レジストリ構築、データベース化、シームレスな移行医療の構築、成人患者の診療体制の確立、長期予後の検討、社会医療支援、若手スタッフの教育などを実施し、関連学会と十分に連携を取りながら、これら様々の医療政策を実施する。
結果と考察
1. 日「小児心血管疾患新規患者の全国調査」を実施し、2020年、2021年の各疾患の発症数を報告するとともに、今年度は調査対象となる70種類の心血管疾患の定義と診断時の注意事項についてもまとめ報告した(山岸敬幸報告書)。
2. 循環器内科拠点施設ネットワーク(ACHDネットワーク)をもとに、成人先天性心疾患「患者登録システム」構築を継続した。登録患者は24,048名に達し、その詳細な臨床情報を論文化した(八尾厚史報告書)。
3. 成人先天性心疾患診療の基盤となる専門医の育成は診療体制の確立に最も重要なであることから、本研究班の事業を通して、成人先天性心疾患の診断治療を行う施設と専門医育成プログラムを実施した(赤木禎治報告書)。
4. 小児心疾患の生涯医療保健施策の最適化に向けて、①脳卒中・循環器病対策基本法と成育基本法の小児心疾患と成人先天性心疾患診療の保健施策への影響の課題抽出と提言作成、②オンラインデータからの保健指標のモデルの提案、③日本循環器学会循環器疾患診療実態調査(JROAD)-DPCデータを用いた成人期の先天性心疾患の実態解明を行なった(三谷義英報告書)。
5. 指定難病である複雑先天性心疾患の長期予後として、Fontan術後患者の中でも運動耐容能が健常者の80%以上である“Super Fontan”は、Fontan患者の遠隔期の治療と管理法を模索する上で重要な一群と考えられており、その頻度を含めた臨床的特徴を明らかにした(Am Heart J. 2023 in press)
6. 心臓外科医の手術成績の向上、新しい手術手技の開発、若手医師の教育を目的として、過去の希少な剖検心臓標本を工業用の精密CTにかけて、できたるアーカイブ化を行う作業を開始した。今後2年間で東京女子医科大学が所有する先天性心疾患のティーチングコレクション100症例をデジタルアーカイブ化して、その3D画像を学会員に限定的に公開する予定である(白石公、大内秀雄報告書)。
7. 日本小児循環器学会及び患者会の協力を得ながら、先天性心疾患患者とその家族における、疾患・診療体制・社会保障制度に関する理解と効果的な利活用の促進に資するウェブコンテンツを作成した。2022年7月に同コンテンツを含むウェブサイトを一般公開し、2022年10月にSNS公式アカウントを作成し、ウェブサイトの内容の周知・広報を図った(落合亮太報告書)。
8. その他、以下の調査研究を実施した。
a. 成人先天性心疾患診療に携わる循環器内科医へのインタビュー調査(城戸佐知子報告書)
b. 成人先天性心疾患患者のQOLや遺残症を評価し、その改善に向けて専門医の教育と育成を実施(稲井慶報告書)
c.シームレスな移⾏医療の体制確⽴に向けた移⾏医療⽀援センター設置活動(豊野学朋報告書)。

結論
先天性心疾患患者の小児期から成人期までの実態を把握することにより、小児および成人患者の診療体制の構築を実現できるとともに、小児科診療から内科診療への診療移行をスムーズなものにすることが、部分的ではあるが可能になった。その結果、小児科医と循環器内科医がタイアップすることが容易になり、情報提供が正確に執り行われ、患者のシームレスな診療移行が実現できるようになった。さらにまた専門医修練施設を全国に構築することにより、医師のみのみならず、専門看護師、検査技師などの育成につながり、日本の成人先天性心疾患診療をより充実した内容に進化させることができた。同時にホームページやスマホアプリの充実により、患者および家族への教育と啓発も可能となった。

公開日・更新日

公開日
2024-04-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2024-04-09
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202211063Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
26,000,000円
(2)補助金確定額
23,893,000円
差引額 [(1)-(2)]
2,107,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 6,871,342円
人件費・謝金 2,904,608円
旅費 2,460,005円
その他 5,657,590円
間接経費 6,000,000円
合計 23,893,545円

備考

備考
自己資金541円、利息4円

公開日・更新日

公開日
2023-11-22
更新日
-