文献情報
文献番号
202211061A
報告書区分
総括
研究課題名
間質性膀胱炎の患者登録と診療ガイドラインに関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
21FC1012
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
本間 之夫(東京大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
- 巴 ひかる(東京女子医科大学東医療センター 泌尿器科)
- 柿崎 秀宏(旭川医科大学医学部泌尿器科学講座)
- 松尾 朋博(長崎大学病院 泌尿器科・腎移植外科)
- 石塚 修(信州大学医学部)
- 舛森 直哉(札幌医科大学医学部)
- 三井 貴彦(山梨大学 医学部)
- 新美 文彩(東京大学医学部附属病院)
- 野宮 明(東京大学 医学部附属病院)
- 秋山 佳之(東京大学医学部附属病院 泌尿器科・男性科)
- 前田 大地(金沢大学医薬保健研究域医学系分子病理学)
- 大塚 篤史(浜松医科大学 泌尿器科)
- 千葉 博基(北海道大学 腎泌尿器外科学講座)
- 鳥本 一匡(奈良県立医科大学 泌尿器科)
- 古田 昭(東京慈恵会医科大学 泌尿器科)
- 松川 宜久(名古屋大学医学部附属病院 泌尿器科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
5,770,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
間質性膀胱炎・膀胱痛症候群は、膀胱痛、膀胱不快感、頻尿などの症状を呈する原因不明の症状症候群を指すが、その中でも特に症状が強く、膀胱内に特有の発赤粘膜であるハンナ病変を認めるものが間質性膀胱炎(ハンナ型)であり指定難病となっている。
本研究では、オールジャパン体制で全国患者登録を進め、間質性膀胱炎・膀胱痛症候群の国内データベースを作成することで現行の指定難病である間質性膀胱炎(ハンナ型)の患者数ならびに患者困窮度の実態を把握するとともに、人工知能や病理組織診断を応用して診断の標準化を図り難病指定範囲や重症度基準の妥当性について再検証することを目的とする。
本研究では、オールジャパン体制で全国患者登録を進め、間質性膀胱炎・膀胱痛症候群の国内データベースを作成することで現行の指定難病である間質性膀胱炎(ハンナ型)の患者数ならびに患者困窮度の実態を把握するとともに、人工知能や病理組織診断を応用して診断の標準化を図り難病指定範囲や重症度基準の妥当性について再検証することを目的とする。
研究方法
今年度の研究では、診断法および重症度の妥当性の解析を目指し、まず基礎資料として、①患者データベースの登録数の増加、②人工知能によるハンナ病変内視鏡診断支援システムの開発、③間質性膀胱炎病理組織診断スコアリングシステムの開発、を行った。
① レジストリ登録症例数の増加
本研究にて開発した間質性膀胱炎オンラインレジストリシステムへの登録は2017年8月より始動し、2022年度末に637例の症例登録を得た。今後もさらに登録を推進し、オンラインレジストリシステムへの登録数を目標登録数(1,000)まで増加させる。
② 人工知能によるハンナ病変内視鏡診断支援システムの開発
HICとBPSの患者頻度分布は施設によって異なる。これは、主観的判断に頼る画像診断基準のばらつきを示唆する。多数症例でのハンナ病変画像を人工知能(AI)による深層学習モデルにかけて、画像解析アルゴリズムを開発する。
③ 間質性膀胱炎病理組織診断スコアリングシステムの開発
多数症例のIC/BPSの膀胱粘膜生検の病理組織検討を行い、リンパ球浸潤、間質の浮腫・線維化、B細胞系浸潤の程度、尿路上皮剥離の各項目を評価・スコアリングし、すでに発表している間質性膀胱炎組織診断クライテリア(Maeda D et al. PLoS One. 2015)の拡充と実装化を図る。
これら①~③の研究成果をもとに、難病指定範囲、重症度基準の妥当性の再評価を当該年度の目標とした。具体的には、蓄積された患者登録情報やハンナ病変診断精度を解析し、難病指定の範囲、HIC重症度基準の妥当性を評価し、必要であれば順次提言を行う。
最終的には、国際的にも最大級となるデータベースを用いて、本邦における間質性膀胱炎・膀胱痛症候群の実像を把握する。患者の症状の実態から患者の困窮度が明らかとなり、治療方法の成績の実態からそれらの治療法の現実的な効果が明示される。
*倫理面への配慮*
本研究は、難治性の間質性膀胱炎患者を対象とした研究であり、人を対象とする医学系研究に関する倫理指針に従って行う。
① レジストリ登録症例数の増加
本研究にて開発した間質性膀胱炎オンラインレジストリシステムへの登録は2017年8月より始動し、2022年度末に637例の症例登録を得た。今後もさらに登録を推進し、オンラインレジストリシステムへの登録数を目標登録数(1,000)まで増加させる。
② 人工知能によるハンナ病変内視鏡診断支援システムの開発
HICとBPSの患者頻度分布は施設によって異なる。これは、主観的判断に頼る画像診断基準のばらつきを示唆する。多数症例でのハンナ病変画像を人工知能(AI)による深層学習モデルにかけて、画像解析アルゴリズムを開発する。
③ 間質性膀胱炎病理組織診断スコアリングシステムの開発
多数症例のIC/BPSの膀胱粘膜生検の病理組織検討を行い、リンパ球浸潤、間質の浮腫・線維化、B細胞系浸潤の程度、尿路上皮剥離の各項目を評価・スコアリングし、すでに発表している間質性膀胱炎組織診断クライテリア(Maeda D et al. PLoS One. 2015)の拡充と実装化を図る。
これら①~③の研究成果をもとに、難病指定範囲、重症度基準の妥当性の再評価を当該年度の目標とした。具体的には、蓄積された患者登録情報やハンナ病変診断精度を解析し、難病指定の範囲、HIC重症度基準の妥当性を評価し、必要であれば順次提言を行う。
最終的には、国際的にも最大級となるデータベースを用いて、本邦における間質性膀胱炎・膀胱痛症候群の実像を把握する。患者の症状の実態から患者の困窮度が明らかとなり、治療方法の成績の実態からそれらの治療法の現実的な効果が明示される。
*倫理面への配慮*
本研究は、難治性の間質性膀胱炎患者を対象とした研究であり、人を対象とする医学系研究に関する倫理指針に従って行う。
結果と考察
① レジストリ登録症例数の増加
前研究期間(令和3年12月17日時点:637例)より登録患者数は順調に増加した(令和4年11月30日時点:754名)。754名のうち、解析が可能な706名のデータを用いて中間解析を行った。
② 人工知能によるハンナ病変内視鏡画像診断支援システムの開発
多数症例のハンナ病変画像を収集し、人工知能による画像解析アルゴリズムの開発に2021年度より着手し、極めて高精度(平均AUC 0.921、 感度・特異度ともに80%以上)でハンナ病変を峻別する深層学習モデルの確立に成功した。
開発した深層学習モデルはハンナ病変を高い精度で診断し、経験豊富な熟練医をはるかに凌ぐ診断精度であった。
また、内視鏡機器の製造メーカーの影響を殆ど受けず、内視鏡の種類によらず安定した成績を上げた。
③間質性膀胱炎病理組織診断スコアリングシステムの開発
尿路上皮剥離、間質の浮腫・線維化、炎症細胞浸潤、浸潤炎症細胞の特性評価、をスコアリングし、間質性膀胱炎組織診断スコアリングシステムの構築に着手した。
前研究期間(令和3年12月17日時点:637例)より登録患者数は順調に増加した(令和4年11月30日時点:754名)。754名のうち、解析が可能な706名のデータを用いて中間解析を行った。
② 人工知能によるハンナ病変内視鏡画像診断支援システムの開発
多数症例のハンナ病変画像を収集し、人工知能による画像解析アルゴリズムの開発に2021年度より着手し、極めて高精度(平均AUC 0.921、 感度・特異度ともに80%以上)でハンナ病変を峻別する深層学習モデルの確立に成功した。
開発した深層学習モデルはハンナ病変を高い精度で診断し、経験豊富な熟練医をはるかに凌ぐ診断精度であった。
また、内視鏡機器の製造メーカーの影響を殆ど受けず、内視鏡の種類によらず安定した成績を上げた。
③間質性膀胱炎病理組織診断スコアリングシステムの開発
尿路上皮剥離、間質の浮腫・線維化、炎症細胞浸潤、浸潤炎症細胞の特性評価、をスコアリングし、間質性膀胱炎組織診断スコアリングシステムの構築に着手した。
結論
本研究班の活動の最終的な目標は患者登録を通じて、全国レベルでの診断体制の標準化、診断基準や重症度スケールの再評価を行うことにある。本年度は順調に患者登録数を延ばすとともに、人工知能によるハンナ病変内視鏡画像診断支援システムの開発に成功した。
令和5年度内に開発したハンナ病変画像診断支援システムを限定公開してその実用性を各研究分担施設の症例を用いて検証する予定である。最終的にはインターネット上で一般公開し、画像診断支援システムを広く国内外に提供する。さらに、病理組織診断スコアリングシステムを取り入れることでIC/BPSの診断精度が飛躍的に向上することが期待される。正確な診断の下で得られたデータを多角的、総合的に解析することで難病指定範囲や重症度基準の妥当性について再検証し、ガイドラインのupdateや政策提言を行いたい。
令和5年度内に開発したハンナ病変画像診断支援システムを限定公開してその実用性を各研究分担施設の症例を用いて検証する予定である。最終的にはインターネット上で一般公開し、画像診断支援システムを広く国内外に提供する。さらに、病理組織診断スコアリングシステムを取り入れることでIC/BPSの診断精度が飛躍的に向上することが期待される。正確な診断の下で得られたデータを多角的、総合的に解析することで難病指定範囲や重症度基準の妥当性について再検証し、ガイドラインのupdateや政策提言を行いたい。
公開日・更新日
公開日
2024-04-04
更新日
2024-10-29