強直性脊椎炎に代表される脊椎関節炎及び類縁疾患の医療水準ならびに患者QOL向上に資する大規模多施設研究

文献情報

文献番号
202211060A
報告書区分
総括
研究課題名
強直性脊椎炎に代表される脊椎関節炎及び類縁疾患の医療水準ならびに患者QOL向上に資する大規模多施設研究
課題番号
21FC1011
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
冨田 哲也(森ノ宮医療大学 大学院/保健医療学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 中村 好一(自治医科大学 地域医療学センター公衆衛生学部門)
  • 渥美 達也(北海道大学 大学院医学研究院 免疫・代謝内科学教室)
  • 高窪 祐弥(山形大学 医学部)
  • 門野 夕峰(埼玉医科大学 整形外科)
  • 金子 祐子(慶應義塾大学 医学部)
  • 田村 直人(順天堂大学 医学部 膠原病内科)
  • 岸本 暢将(杏林大学 医学部)
  • 松野 博明(聖路加国際大学 聖路加国際病院)
  • 西本 憲弘(東京医科大学 医学綜合研究所 難病分子制御学部門 )
  • 大久保 ゆかり(小澤 ゆかり)(東京医科大学 医学部 皮膚科学分野)
  • 藤尾 圭志(東京大学医学部附属病院  アレルギーリウマチ内科)
  • 亀田 秀人(東邦大学 医学部 内科学教室 膠原病学分野 (医療センター大橋病院 膠原病リウマチ科))
  • 森 雅亮(国立大学法人東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 森田 明理(名古屋市立大学 大学院医学研究科)
  • 中島 亜矢子(三重大学 医学部附属病院)
  • 岡本 奈美(大阪医科薬科大学 医学部)
  • 辻 成佳(日本生命済生会日本生命病院 リハビリテーション科)
  • 藤本 学(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 松井 聖(兵庫医科大学 内科学リウマチ・膠原病科)
  • 山村 昌弘(岡山済生会総合病院 内科)
  • 中島 康晴(九州大学 大学院医学研究院整形外科)
  • 川上 純(国立大学法人長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科先進予防医学共同専攻)
  • 谷口 義典(高知大学 教育研究部医療学系臨床医学部門)
  • 土橋 浩章(香川大学 医学部 血液・免疫・呼吸器内科学)
  • 小田 良(京都府立医科大学 大学院医学研究科 運動器機能再生外科学(整形外科学教室))
  • 玉城 雅史(大阪大学大学院 医学系研究科 器官制御外科学(整形外科))
  • 野崎 太希(聖路加国際大学 聖路加国際病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
3,850,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本邦では患者数が約4000人程度と推定されている強直性脊椎炎、X線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎、末梢脊椎関節炎の代表的疾患である乾癬性関節炎、炎症性腸疾患に伴う脊椎関節炎、脊椎関節炎類縁疾患である掌蹠膿疱症性骨関節炎の本邦での実態を明らかにし、早期診断、早期治療介入できる体制を全国レベルで構築する。
研究方法
 体軸性脊椎関節炎および掌蹠膿疱症性骨関節炎に関して、R5年に全国疫学長を実施するにあたり、対象施設、アンケート内容等を検討した。
 仙腸関節MRIを中央読影し特徴的な所見を収集した。HLA B-27保有、非保有で患者検体からシングルセル解析を実施した。脊椎関節炎診療の手引き2020の浸透度を調査するため日本整形外科学会、日本リウマチ学会にてアンケート調査を実施した。
 乾癬性関節炎の重症度評価を検討した。脊椎関節炎領域の統一すべき用語を抽出した。
 掌蹠膿疱症性骨関節炎の診断基準の策定を行った。上記疾患をすべて登録できるよう難病プラットフォーム入力内容を再構築した。
結果と考察
 体軸性脊椎関節炎に関して、R5年に第2回体軸性脊椎関節炎全国疫学調査を実施するにあたりその方法、アンケート内容について第1回実施時の経験を踏まえ議論した。体軸性脊椎関節炎患者を診療している可能性の高い施設を対象に含めるため日本リウマチ学会教育認定施設はすべて含まれるようにした。自治医科大学中央一括審査で IRB 承認を得た。全国から収集した 124 例の仙腸関節 MRI を独立して構成された読影委員会ですべて読影した。その結果 25%の症例で仙腸関節 MRI 撮像が適切に施行されていない実態が明らかとなった。撮像条件の不備と不適切な撮像方向が原因であった。仙腸関節 MRI 撮像に関して撮像条件の標準化が必須と考え、読影委員会で提言した。脊椎関節炎診療の手引き2020の浸透度を確認するため日本整形外科学会、日本リウマチ学会の協力のもと学会員に対してアンケート調査を実施した。593 名から回答を得ることができ、診療の手引きの浸透率は 40%であり、診療の手引きを知っている先生は体軸性脊椎関節炎診療に必要な知識も備わっている結果であった。より診療の手引きが浸透するよう啓蒙活動の継続的な必要が示された。本邦の体軸性脊椎関節炎患者ではHLA B-27保有率が低く診断に有用なバイオマーカー検索を AMED 研究と連携して実施した。HLA B-27 保有、非保有患者の末梢血単核細胞(PBMC)を用いたシングルセル解析による細胞表面タンパク発現情報、T細胞レセプターおよび B細胞レセプター情報の解析を行った。B27陽性例では MAIT 細胞のクローナルな増殖が見られた一方、B27陰性例では Cytotoxic CD4+T 細胞のクローナルな増殖が見られるという差異が認められ、B-27 陽性例と陰性例では病態が異なる可能性が示唆された。さらに今年度は脊柱靱帯骨化症に関する調査研究班(山崎班)と合同で強直性脊椎炎とびまん性特発性骨増殖症の画像所見をAIで鑑別する研究を行うためプロトコルの打ち合わせを行い、現在画像収集中である。
 乾癬性関節炎に関しては患者の重症度を正しく評価・判定するために必要な臨床評価項目を設定した。圧痛関節数、腫脹関節数、皮膚病変、疼痛、患者全般評価、health assessment questionnaire-disability index(HAQ-DI)、付着部炎数に血清 CRP 値と関節の構造的変化を加えた 9項目を PsA の重症度評価に含める臨床評価項目として決定した。来年度難病プラットフォーム疾患レジストリを用いた解析で検証する予定である。
 脊椎関節炎領域における用語統一に関して昨年度に引き続き『脊椎関節炎診療の手引き2020』欧州リウマチ学会の8つのRecommendationsなどから抽出された400を超える脊椎関節炎診療に必要な用語の中から260語程度の和訳と40語程度の定義を検討した。
 炎症性腸疾患に伴う脊椎関節炎に関しては、難病プラットフォームデータベースでの患者データ収集を開始した。難治性炎症性腸管障害に関する調査研究班(久松班)と協力し、全国調査で有症状率、有病率を検討するため分科会を開催し、乾癬ですでに確立されているスクリーニングのための簡便な問診票を改変したもの(PEST)を用いることを決定した。
 掌蹠膿疱症性骨関節炎(PAO)に関しては今年度診療の手引き 2022 を発刊した。その中で新診断基準などの提言を行った。R5に予定している初めての全国疫学調査に向けて疫学専門家を踏まえ対象診療科、施設、アンケート内容について班会議で議論し、決定した。IRB 承認も取得した。
結論
 脊椎関節炎診療の全国標準化に向け整備が進められている。

公開日・更新日

公開日
2024-04-04
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2024-04-04
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202211060Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,005,000円
(2)補助金確定額
5,004,000円
差引額 [(1)-(2)]
1,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 35,771円
人件費・謝金 36,403円
旅費 994,449円
その他 2,783,383円
間接経費 1,155,000円
合計 5,005,006円

備考

備考
銀行口座に利息14円が付与されたが、使用したのは6円のみである。よって残額8円を返納する。

公開日・更新日

公開日
2024-01-16
更新日
-