ホルモン受容機構異常に関する調査研究

文献情報

文献番号
202211059A
報告書区分
総括
研究課題名
ホルモン受容機構異常に関する調査研究
課題番号
21FC1010
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
大薗 惠一(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 山田 正信(群馬大学医学部附属病院)
  • 井上 大輔(帝京大学ちば総合医療センター第三内科)
  • 福本 誠二(徳島大学)
  • 小川 渉(神戸大学大学院医学研究科 )
  • 田部 勝也(山口大学 医学部附属病院)
  • 海老原 健(京都大学 医学部附属病院 臨床研究総合センター)
  • 三宅 吉博(愛媛大学 大学院医学系研究科 疫学・予防医学)
  • 古川 安志(和歌山県立医科大学 内科学第一講座)
  • 難波 範行(鳥取大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
8,514,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
内分泌代謝領域の甲状腺、副甲状腺・ビタミンD、インスリンの3領域に関してホルモン受容機構異常症の研究を行う
具体的には、診断基準の整備、疾患レジストリの構築、診断の対象の遺伝子拡大などを行い、診療の質の向上のため、より良い診療ガイドラインの策定を目指す
研究方法
PTH不足性副甲状腺機能低下症(IHP)・偽性副甲状腺機能低下症(PHP)、低Ca血症性疾患の文献的考察を行い、施行済みのIHP/PHPの疫学調査結果及び、疾患レジストリデータを解析する。PHPの関連遺伝子の検討可能状況の調査を行う。ビタミンD抵抗性くる病/骨軟化症(VDRR)のアンケート調査結果、疾患レジストリデータを解析する
日本内分泌学会・日本甲状腺学会の会員から甲状腺ホルモン不応症(THR)診療指針作成委員会を作り、Mindsに基づいて診療ガイドラインの作成を行う。REDCapを利用し、主に内分泌学会認定専門医施設を対象に登録した甲状腺クリーゼ症例を解析する
インスリン抵抗症(IR)の診療実態調査、患者の病態・遺伝子解析、既報の疾患情報の収集を行い、日本糖尿病学会内に設置された「インスリン抵抗症の疾患分類と診断基準策定のためのWG」と連携して、IRの新たな疾患分類・診断基準を作成する。ウォルフラム症候群(WS)の疫学調査結果の再分析、症例のフォローアップ、新規症例解析を行う。部分性脂肪萎縮症(PLD)の遺伝学的解析、全国実態調査、レジストリ構築を行う
結果と考察
IHPの国際ガイドライン等を検討し、低Ca血症性疾患鑑別のフローチャートの改訂に反映させるため、以下の点について同意した。PHP病型分類から、不明確な2型を除く。1c型は1a型に含まれる。類似疾患として、PRKAR1AやPDE4D遺伝子異常による先端骨形成不全症が存在する。Ellsworth-Howard試験を偽性の診断上必須とはしない。PHPのDefinite診断には遺伝子診断を必須とする。IHPの分類について、新たな遺伝子疾患を加える。IHPとPHPを鑑別するintact PTHのカットオフとして従来より高値の50pg/mlを採用する。ビタミンD欠乏症のカットオフ値としては10-15ng/mlを採用する。PHPの遺伝子変異の検討が一部検査機関で可能となった。VDRRの解析では下肢変形は骨折・骨痛・関節痛と負の相関、骨・関節・脊柱症状、腱付着部症は互いに強い正の相関を認めた。X連鎖性低リン血症性くる病/骨軟化症(XLH)と腫瘍性骨軟化症(TIO)の比較では、小児XLHに頭蓋骨早期癒合症や下肢変形、成人XLHに脊柱靭帯骨化症、腱付着部症、腎石灰化症、歯周炎、TIOに骨折の既往、骨痛、関節痛、筋力低下が高頻度であった。小児XLHに対する抗FGF23抗体の治療効果としては、血清リン値、くる病重症度スコア、下肢変形の改善を認めた
THRの診断基準、重症度分類、遺伝子診断の手引きを公表した。診療ガイドラインが完成した。甲状腺クリーゼ患者114名の情報が登録され、データベースを構築した。急性期重症度スコアは全国疫学調査より高値の傾向、死亡率はより低い傾向であった。無機ヨウ素を抗甲状腺薬より1時間以上先行投与された群では、死亡率がより高い傾向であった。診療ガイドラインを参照して診療された例は、参照しなかった群よりも死亡率が低い傾向であった
発表したIRの疾患分類・診断基準をもとに、難病認定のための個票及びチェックリストを作成した。日本糖尿病学会の承認を受けた。レジストリを構築し、周知した。レジストリ全体では21施設から、遺伝的IRについては4施設から登録希望があった。WS、脂肪萎縮性糖尿病も対象とした。遺伝的IRの診断基準について検討した結果、Cペプチド/インスリン比が診断特異度、感受性共に優れていた。遺伝学的検査を行い、報告のないインスリン受容体遺伝子異常を含め、3例のA型IRを新たに診断した。WSの5家系を新たに診断した。非定型例では遺伝子解析が診断に有用であった。PLDの全国実態調査を日本内分泌学会と連携し実施準備した。先天性のPLD女性症例にPPARγ遺伝子病的バリアントを同定した
結論
副甲状腺機能低下症の疫学調査の二次調査の解析に基づき、IHPとPHPの新たなPTHカットオフ値が提案され、診断基準と診断の手引きに関して合意した。PHPの病因に基づく病型分類、診断法を作成した。VDRRについて、レジストリの構築により、エビデンスが蓄積された。THRの診断基準、重症度分類、遺伝子診断の手引き、診療ガイドラインの策定を行い、公表する段階にきた。甲状腺クリーゼのデータベースの解析から現行の診療ガイドラインの有効性が示唆された。遺伝的IRの電子レジストリを構築した。WSの日本での患者実態調査を進めた。診断基準策定のために、PLDの実態を把握する必要がある

公開日・更新日

公開日
2024-04-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-04-09
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202211059Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
11,068,000円
(2)補助金確定額
10,687,000円
差引額 [(1)-(2)]
381,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 5,470,321円
人件費・謝金 1,020,192円
旅費 340,560円
その他 1,302,347円
間接経費 2,554,000円
合計 10,687,420円

備考

備考
千円以下(420円)切り捨てのため 

公開日・更新日

公開日
2024-02-05
更新日
-