自己免疫性出血症診療の「均てん化」のための実態調査と「総合的」診療指針の作成

文献情報

文献番号
202211057A
報告書区分
総括
研究課題名
自己免疫性出血症診療の「均てん化」のための実態調査と「総合的」診療指針の作成
研究課題名(英字)
-
課題番号
21FC1008
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
橋口 照人(鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 山口 宗一(鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 小川 孔幸(群馬大学大学院 医学系研究科 内科学講座 血液内科学分野)
  • 惣宇利 正善(山形大学 医学部)
  • 和田 英夫(三重大学大学院 医学系研究科)
  • 朝倉 英策(金沢大学附属病院)
  • 家子 正裕(北海道医療大学 歯学部)
  • 酒井 道生(宗像水光会総合病院 小児科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
11,539,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
自己免疫性出血症の症例を確定診断して実態を解明し、診断基準、重症度分類、診療ガイドライン等を作成、確立、改定して本症の検査、診断、治療を「均てん化」することを目的とする。
研究方法
自己免疫性出血症の検査、診断、治療について全国からの症例相談を受付け、確定診断を行うとともに、病態を解析する。また、確定診断に必要な検査方法の開発を行う。更に、AMED 事業と連携して構築した「難病プラットフォーム」の活用により、症例レジストリ運用を円滑化・拡充すると共に検体バイオレポジトリを実施する。
結果と考察
結果: 今年度(3年計画の2年目)は研究代表機関が山形大学から鹿児島大学に移管したが全国からの症例相談を途絶えることなく受付け、自己免疫性凝固第XIII(13)因子欠乏症、VIII(8)因子欠乏症(後天性血友病A)、第V(5)因子欠乏症の確定診断により、解析を依頼された症例の治療方針の決定に貢献した。また、第VIII(8)因子、凝固第XIII(13)因子活性の新規測定法を開発するとともに積極的に学会発表、論文発表を行い、疾患の周知、啓発に努めた。

1)臨床研究倫理審査:令和3年度(1年目)は代表機関である山形大学医学部の倫理審査委員会の承認の下に各主治医が各々の所属機関の倫理審査委員会の承認を受けて進めていたが、令和4年度(2年目)は、2021年6月30日に施行された「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」に準拠して、代表機関である鹿児島大学での一括審査を行うこととした。

2)研究代表機関の移管に伴うHPの新設:
https://kintenka.jp/

3)全国からの症例相談と実験的精密検査による確定診断:代表機関の移管後も全国からの症例相談を途絶えることなく受付けた。相談症例における自己免疫性凝固第XIII(13)因子欠乏症 (AiF13D)、VIII(8)因子欠乏症(後天性血友病A)、第V(5)因子欠乏症の確定診断を行った。

4)FVIII活性の新規測定方法の開発
凝固波形-トロンビン時間で、emicizumabを投与下においてFVIII活性を測定する方法を開発してJournal of Clinical Medicineに公表した。

5)第XIII/13因子の活性測定方法の検証
第XIII/13因子の活性測定方法を検証し、より高感度かつ的確に第XIII/13因子インヒビターを検出できるよう改良を行った。今年度の改良ではF13高値の血漿まで直線性を改善することができ、さらにα2-PI欠乏の影響を除外することができるようになり、AiF13Dを診断する上でより信頼性が高まったと考えられる。

6)レジストリ・レポジトリ:研究代表機関移管後の臨床研究倫理委員会の一括審査の手続きが完了したため、難病プラットホームへのレジストリ、研究検体のレポジトリ及び研究検査を令和4年4月以降の蓄積された症例から本格稼働させ疫学情報の基盤を構築する体制を整えた。

7)疾患の広報:研究班にて日本臨床化学会の機関誌「臨床化学」に指定難病288全体の解説シリーズ「自己免疫性後天性凝固因子欠乏症の現状と課題」を掲載して広報した。先天性や非自己免疫性(消費亢進、産生低下)の凝固因子低下症の鑑別法についても明記した。

8)研究成果公表:本疾患に関する研究成果を多数の学会で報告し、特に研究のまとめや解説を多数の学術雑誌に発表して、周知に努めた。

考察
 今年度、研究代表機関が山形大学から鹿児島大学に移管したが全国からの症例相談を途絶えることなく受付け、また分担研究者の役割が円滑に実行され自己免疫性凝固第XIII(13)因子欠乏症、VIII(8)因子欠乏症(後天性血友病A)、第V(5)因子の確定診断により解析を依頼いただいた症例の治療に貢献できたことは喜ばしいことであった。明確になった最も重要な知見は、原因不明の出血症状が現れた際、欠乏が推定される凝固因子の自己抗体の有無の確認が治療方針の決定に大きく貢献することである。これまでの研究班の活動により「自己免疫性後天性凝固因子欠乏症」の疾患概念は全国に認識されてきているため、本疾患の鑑別診断は益々重要性が高まっていると考える。
結論
研究班の活動により本症の周知・啓発が進んでいることから、原因不明の出血症状を認めた際の本症の鑑別診断は益々重要性を増している。今年度の活動からも確定診断のための抗凝固因子抗体の測定は必須であると考える。令和5年度は症例のレジストリ・レポジトリを進捗させ疫学情報の基盤を拡張して本症の診断・治療ならびに病態解明を更に進めていきたい。

公開日・更新日

公開日
2024-04-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-04-09
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202211057Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
15,000,000円
(2)補助金確定額
15,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 7,913,704円
人件費・謝金 2,000,087円
旅費 435,720円
その他 1,280,349円
間接経費 3,461,000円
合計 15,090,860円

備考

備考
研究に必要な実験器具等購入 自己資金90860円

公開日・更新日

公開日
2024-02-02
更新日
-