治験を目的とした、成人発症白質脳症のレジストリーと評価方法に関する研究

文献情報

文献番号
202211056A
報告書区分
総括
研究課題名
治験を目的とした、成人発症白質脳症のレジストリーと評価方法に関する研究
課題番号
21FC1007
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
小野寺 理(国立大学法人新潟大学 脳研究所脳神経内科学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 水野 敏樹(京都府立医科大学医学研究科)
  • 池内 健(国立大学法人新潟大学 脳研究所)
  • 冨本 秀和(三重大学大学院医学系研究科神経病態内科学)
  • 植田 光晴(熊本大学 大学院生命科学研究部 脳神経内科学)
  • 猪原 匡史(国立研究開発法人国立循環器病研究センター 病院 脳神経内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
13,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
令和4年度の成人発症白質脳症の医療基盤に関する調査研究班では、CADASILの画像研究、疾患修飾薬による治験及び国際的なレジストリーの構築、遺伝性脳小血管病に対する遺伝子パネル及び病理学的検査の確立、新たな遺伝性脳小血管病の探索、HDLS/ALSPの遺伝子変異スペクトラムの解明を目指した。
研究方法
CADASIL患者の脳血管反応性と脳卒中発症との関連性を明らかにするため、安静時およびACZ負荷SPECT検査を行った。14名のCADASIL患者を対象として脳血流値を比較し、視床のACZ-rCBF、陳旧性ラクナ数、白質病変量をロジスティック単回帰解析した。
三重大学医学部附属病院で5年間に撮像した頭部MRI4,526例を後方視的に検討し、側頭極病変を認めた442例の背景因子、および白質病変の特徴を分析した。
CADASILに対する世界初の疾患修飾薬による治験(AMCAD試験)を行い、症例登録を完遂した。また、日本, 韓国, 台湾の3カ国共同で国際CADASIL登録研究を開始する予定である。
遺伝性脳小血管病の診断における遺伝子検査および皮膚病理検査の有用性を検討した。遺伝子診断パネルの遺伝子検査と皮膚病理検査を行った。
新たな遺伝性脳小血管病の探索において、本邦の成人CSVDの遺伝学的背景の検討を行った。
HDLS/ALSPの遺伝子変異スペクトラムの解析を行った。
結果と考察
CADASILの画像研究では、視床の脳血管反応性がCADASILの経過を追うための有用なマーカーとなる可能性が示唆された。一方、MRIの後方視的検討では、側頭極病変を認めた442例の中でCADASIL6例、高血圧性脳小血管病56例を認め、CADASIL群では特定の白質病変特徴が観察された。疾患修飾薬による治験(AMCAD試験)の症例登録が完遂し、3カ国共同の国際CADASIL登録研究開始の準備が進行中である。
遺伝性脳小血管病の診断における遺伝子検査および皮膚病理検査は、遺伝性脳小血管病の診断に有用であることが示された。遺伝子診断パネルの遺伝子検査では、NOTCH3変異とCOL4A1の部分欠失が検出され、皮膚病理検査ではNotch3顆粒状蓄積が確認された。
新たな遺伝性脳小血管病の探索では、ABCC6遺伝子変異が認められ、これが新たな成人CSVDの原因遺伝子となる可能性が示された。また、ABCC6関連脳小血管病は、NOTCH3やHTRA1遺伝子変異による脳小血管病と臨床表現型が類似しているものの、側頭極病変を欠くなどの画像的特徴に相違点が存在することが明らかとなった。
HDLS/ALSPの遺伝子変異スペクトラム解析では、HDLSの特定医療費受給証所持者数が増加傾向にあることが確認され、新規のミスセンス、微小欠失、フレームシフト、部分欠失を同定した。
結論
CADASILを含む遺伝性脳小血管病の理解を深めるための取り組みは、診断基準の確立、疾患修飾薬による治験の進行、新たな遺伝子変異の探索など、さまざまな側面で進んでいます。特にCADASILの画像研究では、脳血管反応性やMRIによる特定の白質病変が診断の手がかりとなる可能性が示唆されました。また、遺伝性脳小血管病の診断においては、遺伝子パネルによる遺伝子検査と皮膚病理検査が有用性を示し、遺伝子診断のパネルが構築されました。

さらに、新たな遺伝性脳小血管病の探索では、ABCC6遺伝子変異が新たな成人CSVDの原因遺伝子となる可能性が示され、その特徴をさらに明らかにするための研究が必要とされています。最後に、HDLS/ALSPに関しては、その遺伝子変異スペクトラムが解明され、特定医療費受給者数の増加が確認されました。

これらの研究成果は、遺伝性脳小血管病に関する我々の知見を大きく拡大し、診断と治療の精度を向上させる可能性があります。今後も遺伝性脳小血管病に対する科学的理解を深め、新たな診断手法と治療法の開発につながるような研究を積極的に進めていくことが求められます

公開日・更新日

公開日
2024-04-09
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202211056Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
16,900,000円
(2)補助金確定額
16,900,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 6,941,804円
人件費・謝金 2,288,248円
旅費 302,760円
その他 3,467,210円
間接経費 3,900,000円
合計 16,900,022円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2024-01-22
更新日
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