小児急性脳症の早期診断・最適治療・ガイドライン策定に向けた体制整備

文献情報

文献番号
202211054A
報告書区分
総括
研究課題名
小児急性脳症の早期診断・最適治療・ガイドライン策定に向けた体制整備
課題番号
21FC1005
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
高梨 潤一(東京女子医科大学 医学部(八千代医療センター))
研究分担者(所属機関)
  • 前垣 義弘(鳥取大学 医学部)
  • 水口 雅(東京大学  大学院医学系研究科)
  • 村山 圭(千葉県こども病院 代謝科)
  • 阿部 裕一(国立成育医療研究センター 神経内科)
  • 佐久間 啓(公益財団法人東京都医学総合研究所 脳・神経科学研究分野)
  • 奥村 彰久(愛知医科大学 医学部)
  • 永瀬 裕朗(神戸大学大学院医学研究科内科系講座小児科学分野)
  • 酒井 康成(九州大学大学院 医学研究院 成長発達医学分野(小児科学))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和5(2023)年度
研究費
9,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
小児急性脳症診療ガイドライン2016(脳症GL2016)が発刊され6年が経過した.この間に急性壊死性脳症(ANE),けいれん重積型(二相性)急性脳症(AESD),脳梁膨大部脳症(MERS),難治頻回部分発作重積型急性脳炎(AERRPS)など急性脳症症候群の認知度が高まり,各脳症症候群の臨床,画像,病態に関する知見が積み重なっている。2017年に第2回「急性脳症全国実態調査」が施行された。これらを踏まえて、現時点での小児急性脳症の最新情報・治療に益するエビデンスを提供すべくガイドライン2023の発刊を目的とした。
研究方法
小児急性脳症診療ガイドライン改定ワーキンググループ(以下,改定WG)は2020年9月から改定作業を開始した。研究班からは、髙梨(改定WG委員長)、前垣、水口、村山、阿部、佐久間、奥村、永瀬の各研究分担者がWG委員として参画した。Minds 2020に準拠したCQを設定することを決定し、重要臨床課題を「最も高頻度で神経予後不良なけいれん重積型(二相性)急性脳症(AESD)の治療方針」とした。CQに関する文献検索は,2014年5月から2021年1月までの新たな文献をPubMed,医学中央雑誌データベースを用いて行い,適宜ハンドサーチも併用した。改定WGのうち2名でシステマティックレビューを実施した。CQ1と以降の急性脳症の総説・各論記載案は,執筆者以外の改訂WG委員による内部査読を受け修正を加えた。
結果と考察
最終的にCQはCQ1「体温管理療法(目標体温36℃)を実施可能な施設において,急性脳症を疑う患児に対する本療法の実施はAESDへの進展,後遺症,重篤な有害事象を考慮した場合有用か?」(資料1) の1件のみとなった。改定WGにおける投票は「実施することを強く推奨」「実施することを弱く推奨」「実施しないことを強く推奨」「実施しないことを弱く推奨」の4段階で行った.投票結果は「実施することを強く推奨」9%(1/9),「実施することを弱く推奨」89%(8/9),「実施しないことを強く推奨」0%,「実施しないことを弱く推奨」0%であり,「実施することを弱く推奨」することが採択された.その後の外部評価結果を踏まえワーキンググループで協議し、最終的な推奨とした。
CQ1は下記のとおりである。
CQ1「体温管理療法(脳平温療法;目標体温36℃)を実施可能な施設において,急性脳症を疑う患児に対する本療法の実施はAESDへの進展,後遺症,重篤な有害事象を考慮した場合有用か?」に対する推奨としては下記である。
発熱に伴い下記を満たす症例に対し36℃を目標体温とした早期(24時間以内)の体温管理療法は,AESDへの進展,後遺症リスクを低下させるため、実施することを弱く推奨する。
 1)または2),かつ3)を満たす
  1) 難治けいれん性てんかん重積状態
  2) 6時間以上続く意識障害
  3) 多臓器障害を疑わない(例:神経症状出現後6時間以内のAST<90U/L)
 推奨度 2(弱い推奨)  
 エビデンスの強さ D(とても弱い)

令和3年度に実施した小児急性脳症に対する治療に関する全国調査で、体温管理療法(脳平温療法)実施施設が増え、かつ目標体温は低温(34℃)からより安全な脳平温(36℃)に移行していることが明らかとなっている。GL2016発刊後に脳平温療法の有用性を示す論文が数編報告され、GL2023ではCQとして推奨されるに至った。この推奨が小児急性脳症の予後改善に益することが期待される。GL2023発刊後の治療内容の変化、予後改善に益したかを継続調査していきたい。
結論
急性脳症診療ガイドライン2016を継承するGL2023は、新たなCQとして脳平温療法を推奨した。GL2023の実地診療におけるインパクトの評価、診療内容の変遷、またそれに伴う予後評価を今後の課題としたい。

公開日・更新日

公開日
2024-04-10
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2024-04-10
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
202211054Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
11,700,000円
(2)補助金確定額
11,434,000円
差引額 [(1)-(2)]
266,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,888,067円
人件費・謝金 2,593,072円
旅費 455,335円
その他 2,797,629円
間接経費 2,700,000円
合計 11,434,103円

備考

備考
自己資金103円

公開日・更新日

公開日
2023-11-21
更新日
-