文献情報
文献番号
202211052A
報告書区分
総括
研究課題名
新生児慢性肺疾患の診断基準・病型分類の策定、疾患レジストリの構築、および診療ガイドラインの作成に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
21FC1003
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
難波 文彦(埼玉医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
- 中村 友彦(地方独立行政法人長野県立病院機構長野県立こども病院)
- 高橋 尚人(東京大学 医学部附属病院 小児・新生児集中治療部)
- 平野 慎也(地方独立行政法人 大阪府立病院機構 大阪府立母子保健総合医療センター 新生児科)
- 中西 秀彦(北里大学 医学部)
- 諫山 哲哉(国立成育医療研究センター 新生児科)
- 大田 えりか(伊東 えりか)(聖路加国際大学大学院 看護系研究科 国際看護学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
めざましい周産期医療の発展により、低出生体重児の生存率は劇的な改善を示したが、新生児慢性肺疾患(CLD)は未だ高頻度で重篤な、未熟児の合併症であり、発症率は増加している。本研究では、成人期までの呼吸予後に影響する新生児難治性疾患であるCLDに関する問題を解決し、CLD患者が受ける医療水準およびQOLの向上に貢献することを目的とした。
研究方法
①周産期データベースに登録されている超早産児を対象に青年期の呼吸機能について質問紙を用いて評価した。呼吸予後に対するCLDの長期的影響について検証した。
②呼吸予後に関する前向き多施設共同コホート研究を行う。主要評価項目は、1歳時の未熟出生後呼吸器疾患とする。さらに、NICU入院歴のある成人の呼吸予後および国内の出生コホートデータを用いて、長期呼吸予後に対する在胎期間または出生体重の影響についても検証する。
③CLDや呼吸予後に関するデータ項目を選定後、重症CLD疾患レジストリを構築する。
④CLD全国調査を実施する。新生児領域認定施設を対象に、CLDの予防・管理方法に関するデータをアンケート調査にて収集する。CLD全国調査データと各施設の予後データを突合し、CLD管理方法と呼吸予後との関連性を検証する。
⑤CLDに対する介入方法に関する系統的レビューを作成し、メタ解析を行う。
⑥重症CLDのリスク因子についてスコーピングレビューを行い、既存のエビデンスを収集する。抽出された因子について、周産期データベースのデータを用いて妥当性を検証する。検証されたリスク因子を用いてCLD病型分類を作成する。
⑦日本新生児成育医学会『医療の標準化委員会』と共同で、CLDの診療ガイドラインを策定する。
②呼吸予後に関する前向き多施設共同コホート研究を行う。主要評価項目は、1歳時の未熟出生後呼吸器疾患とする。さらに、NICU入院歴のある成人の呼吸予後および国内の出生コホートデータを用いて、長期呼吸予後に対する在胎期間または出生体重の影響についても検証する。
③CLDや呼吸予後に関するデータ項目を選定後、重症CLD疾患レジストリを構築する。
④CLD全国調査を実施する。新生児領域認定施設を対象に、CLDの予防・管理方法に関するデータをアンケート調査にて収集する。CLD全国調査データと各施設の予後データを突合し、CLD管理方法と呼吸予後との関連性を検証する。
⑤CLDに対する介入方法に関する系統的レビューを作成し、メタ解析を行う。
⑥重症CLDのリスク因子についてスコーピングレビューを行い、既存のエビデンスを収集する。抽出された因子について、周産期データベースのデータを用いて妥当性を検証する。検証されたリスク因子を用いてCLD病型分類を作成する。
⑦日本新生児成育医学会『医療の標準化委員会』と共同で、CLDの診療ガイドラインを策定する。
結果と考察
①対象者の平均年齢は16.5歳。CLDなし群140例、CLDあり群103例。呼吸器症状による再入院歴は2群間で有意差はなかった。喘息既往歴は2群間で多変量解析による有意差はなかった。QOL総得点は2群間で有意差はなかった。体重と身長のz-scoreはCLD群で有意に低値であった。
②超早産児202症例が登録された。約30年前にNICUを退院した若年成人の大部分は呼吸器症状が生活の問題や支障とはなっていなかったが、呼吸機能検査では早産児、低出生体重児で予測値に対する1秒量/6秒量の低下がみられた。出生コホートの解析では、気道感染は、低出生体重児で入院を要する重症化リスクが示唆された。気管支喘息は正常出生体重児で乳幼児期に増加し学童期には減少したが、低出生体重児は学童期に通院率が高くなり、より出生体重が低くなるほど高い傾向が見られた。
③研究対象者、除外基準、登録項目等、参加予定施設間での検討をおこない急性期および慢性期の管理法、投薬等のデータ、退院後の発育予後に関する項目を決定し、レジストリの準備を整えた。
④質問票の回収は214施設(75%)。回答結果として、INSURE実施は23%で、LISAは2%。鎮静は実施が70%、呼吸器モードは初期治療では86%が従来型だったが、CLD進行時ではHFOが87%。ステロイド予防投与は全身的投与が14%で、吸入ステロイドが43%。人工呼吸器からの離脱時にHFNCが90%、NIV-NAVAが32%の施設で用いられていた。カフェインについては84%の施設で使用されていた。突合研究についてはNRNJ施設のうち83%からデータ使用の許諾が得られた。
⑤早産児のNoninvasive neurally adjusted ventilatory assistに関する研究のプロトコルをPROSPEROに登録し、文献検索を完了した。検索された論文のメタ解析を行い、英文雑に投稿した。同様に、出生前ステロイド投与に関する系統的レビューをBMJ Openに投稿した。
⑥CLD病型分類の元となるCLDの重症化因子をスコーピングレビューの手法を用いて同定した。BMJ Openにプロトコル論文を出版した。NRNJデータベースを用いて同定した重症化因子の妥当性を検証した。絨毛膜羊膜炎、X線上のBubbly/Cystic所見、SGAの3つの項目を基に新CLD病型案を作成した。
⑦CLDの診療に関わる10個の臨床的疑問(CQ)に関して、日本医療機能評価機構(Minds)による診療ガイドライン作成マニュアルを参考に、世界標準的手法であるGRADE法、ADOLOPMENT法を用いて系統的レビューを行った。それをもとに、デルフィー変法を用いたコンセンサス会議を行い、10個のCQに対する推奨案を決定した。
②超早産児202症例が登録された。約30年前にNICUを退院した若年成人の大部分は呼吸器症状が生活の問題や支障とはなっていなかったが、呼吸機能検査では早産児、低出生体重児で予測値に対する1秒量/6秒量の低下がみられた。出生コホートの解析では、気道感染は、低出生体重児で入院を要する重症化リスクが示唆された。気管支喘息は正常出生体重児で乳幼児期に増加し学童期には減少したが、低出生体重児は学童期に通院率が高くなり、より出生体重が低くなるほど高い傾向が見られた。
③研究対象者、除外基準、登録項目等、参加予定施設間での検討をおこない急性期および慢性期の管理法、投薬等のデータ、退院後の発育予後に関する項目を決定し、レジストリの準備を整えた。
④質問票の回収は214施設(75%)。回答結果として、INSURE実施は23%で、LISAは2%。鎮静は実施が70%、呼吸器モードは初期治療では86%が従来型だったが、CLD進行時ではHFOが87%。ステロイド予防投与は全身的投与が14%で、吸入ステロイドが43%。人工呼吸器からの離脱時にHFNCが90%、NIV-NAVAが32%の施設で用いられていた。カフェインについては84%の施設で使用されていた。突合研究についてはNRNJ施設のうち83%からデータ使用の許諾が得られた。
⑤早産児のNoninvasive neurally adjusted ventilatory assistに関する研究のプロトコルをPROSPEROに登録し、文献検索を完了した。検索された論文のメタ解析を行い、英文雑に投稿した。同様に、出生前ステロイド投与に関する系統的レビューをBMJ Openに投稿した。
⑥CLD病型分類の元となるCLDの重症化因子をスコーピングレビューの手法を用いて同定した。BMJ Openにプロトコル論文を出版した。NRNJデータベースを用いて同定した重症化因子の妥当性を検証した。絨毛膜羊膜炎、X線上のBubbly/Cystic所見、SGAの3つの項目を基に新CLD病型案を作成した。
⑦CLDの診療に関わる10個の臨床的疑問(CQ)に関して、日本医療機能評価機構(Minds)による診療ガイドライン作成マニュアルを参考に、世界標準的手法であるGRADE法、ADOLOPMENT法を用いて系統的レビューを行った。それをもとに、デルフィー変法を用いたコンセンサス会議を行い、10個のCQに対する推奨案を決定した。
結論
CLDに関する問題の解決を目的として、病型分類の策定、疾患レジストリの構築、および診療ガイドラインの作成を行った。その結果、CLD患者が受ける医療水準およびQOLの向上が期待される。
公開日・更新日
公開日
2024-04-04
更新日
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