神経核内封入体病(NIID)の臨床疫学調査および疾患概念確立

文献情報

文献番号
202211051A
報告書区分
総括
研究課題名
神経核内封入体病(NIID)の臨床疫学調査および疾患概念確立
研究課題名(英字)
-
課題番号
21FC1002
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
曽根 淳(愛知医科大学 加齢医科学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 岩崎 靖(愛知医科大学 加齢医科学研究所 神経病理部門)
  • 田中 章景(横浜市立大学 大学院医学研究科)
  • 高嶋 博(鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 水野 敏樹(京都府立医科大学医学研究科)
  • 石井 一弘(筑波大学 医学医療系神経内科)
  • 岡西 徹(鳥取大学 医学部)
  • 尾方 克久(独立行政法人国立病院機構東埼玉病院)
  • 吉田 眞理(愛知医科大学 加齢医科学研究所)
  • 祖父江 元(愛知医科大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究費
2,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
神経核内封入体病患者を、頭部MRI DWI画像、皮膚生検さらにNOTCH2NLC遺伝子検査を組み合わせることによって、臨床的、病理学的、および遺伝子解析により診断、蓄積し、臨床像を検討する。その上で、類似の臨床像を示す神経変性疾患、との鑑別について検討した上で、NIIDの診断基準および重症度分類の作成を目指す。 
研究方法
NIIDが疑われる症例に対し、皮膚生検および遺伝子検査を行い、双方とも陽性である症例を蓄積し臨床像を解析した。1例については剖検を施行し、詳細に病理所見を検討した。
これらの解析の結果、高頻度に認められる臨床症状および検査異常について、NIID診断における感度および特異度を検討した。さらに、NIID診断基準における診断のカテゴリーについても、臨床症状および検査結果の組み合わせのさまざまなパターンについて、それぞれ感度および特異度を検討し、その妥当性を検討した。また、実臨床の現場では、遺伝カウンセリングの結果、遺伝子検査を希望しない患者も見られるため、皮膚生検のみで診断した場合と皮膚生検および遺伝子検査の双方で診断した場合とで、それぞれ比較検討を行う。
結果と考察
NIID多数例での皮膚所見、遺伝子解析結果および臨床データの解析の結果、さらには感度、特異度の結果を元に、研究班内で繰り返し討議を行なった。また、日本神経学会の中に、NIID研究班外からも、意見をとりいれるべきとの意見がある、との指摘があったため、研究班外からも意見をいただき議論した上で、診断基準案に改訂を加え、NIID診断基準最終案を作成し、日本神経学会に学会承認を得るために提出した。
 多数例での検討の結果、これまでは、NIID患者は、筋力低下群と物忘れ群で、大多数を占めると考えられていたが、脳炎様症状が初発症状となる例が多数存在することが明らかとなったため、神経内科領域のみならず、救急医療の領域にも、疾患概念の啓蒙が必要と考えられた。
結論
神経核内封入体病の診断基準および重症度分類を策定し、臨床の場面で運用するとともに、疾患概念を確立し広く啓蒙することが必要である。

公開日・更新日

公開日
2024-04-10
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-04-10
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
202211051B
報告書区分
総合
研究課題名
神経核内封入体病(NIID)の臨床疫学調査および疾患概念確立
研究課題名(英字)
-
課題番号
21FC1002
研究年度
令和4(2022)年度
研究代表者(所属機関)
曽根 淳(愛知医科大学 加齢医科学研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 岩崎 靖(愛知医科大学 加齢医科学研究所 神経病理部門)
  • 田中 章景(横浜市立大学 大学院医学研究科)
  • 高嶋 博(鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 水野 敏樹(京都府立医科大学医学研究科)
  • 石井 一弘(筑波大学 医学医療系神経内科)
  • 岡西 徹(鳥取大学 医学部)
  • 尾方 克久(独立行政法人国立病院機構東埼玉病院)
  • 吉田 眞理(愛知医科大学 加齢医科学研究所)
  • 祖父江 元(愛知医科大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患政策研究
研究開始年度
令和3(2021)年度
研究終了予定年度
令和4(2022)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
神経核内封入体病(Neuronal intranuclear inclusion disease:NIID)患者を、頭部MRI DWI画像、皮膚生検さらにNOTCH2NLC遺伝子検査を組み合わせることによって、臨床的、病理学的、および遺伝子解析により確実に診断、蓄積したうえで、臨床像を検討する。その上で、類似の臨床像を示す神経変性疾患との鑑別について検討し、NIIDの診断基準および重症度分類の作成し、疾患概念の確立を目指す。
研究方法
NIIDが疑われる症例に対し、皮膚生検およびNOTCH2NLC遺伝子検査を行い、双方とも陽性である症例を蓄積し臨床像を解析した。1例については剖検を施行し、詳細に病理所見を検討した。また、報告例の少ない小児期に発症したNIID症例についても検討した。
 これらの解析の結果、高頻度に認められる臨床症状および検査所見について、感度および特異度を検討した。実臨床の現場では、遺伝子検査を希望しない状況も想定されるため、皮膚生検所見のみでNIIDと診断した場合と、皮膚生検と遺伝子検査の双方で陽性であればNIIDと診断した場合の両方で感度および特異度を検討した。
 また、NIIDとの鑑別が問題となるFXTASに関しては、遺伝性運動失調のコホートにおいて、遺伝子検査では診断がついていない症例について、FMR1遺伝子のpremutationの有無についてスクリーニングを行いその頻度を検討した。さらに、NIIDの診断基準を策定するにあたって、先に指定
難病として指定され、同様のGGCリピート配列の延長が原因となっているFXTASの診断基準策定を参考に、今後NIIDの診断基準策定に関して必要な課題について検討を行った。
 これらの検討に加え、研究班の班員以外からも意見を取り入れた上で、討論を重ね、NIIDの診断基準および重症度分類を改訂し、診断基準最終案を作成する。
結果と考察
NIIDが疑われる症例に対し、皮膚生検および遺伝子検査を行い、陽性である症例を蓄積し、その臨床像を解析した。
臨床情報が詳細に検討可能であり、かつ皮膚生検と遺伝子検査の双方で陽性であった150例のNIID症例について検討した。初発症状としてもの忘れを初発に受診する例が、150例の中で94例と最も多く、頭部MRI 画像で白質脳症、DWI画像で皮髄境界に沿った異常高信号領域を100%の症例で認め、FAB低下例が83.1%と高頻度で認められた。筋力低下を主症状とする筋力低下群では、発症年齢が平均で27.5才と低い一方で病期の長い症例が多く含まれていた。その他群としてまとめた群では、大半は発熱、頭痛、意識障害で発症する脳炎様症状が初発症状であった。これらの結果から、個々の症状、検査結果について、感度、特異度を検討した。さらに、NIIDの診断基準案の診断カテゴリーについても、感度特異度を検討した。
 これらの結果を元に、班会議を開催し検討することに加え、班員以外も交えた会議において、診断基準案の妥当性について議論し、検査項目および診断カテゴリー、重症度分類等に変更を加え、NIID診断基準の最終案を作成した。
 多数例での検討の結果、これまでは、NIID患者は、筋力低下群と物忘れ群で、大多数を占めると考えられていたが、脳炎様症状が初発症状となる例が多数存在することが明らかとなったため、神経内科領域のみならず、救急医療の領域にも、疾患概念の啓蒙が必要と考えられた。
結論
神経核内封入体病の診断基準および重症度分類を策定し、臨床の場面で運用するとともに、疾患概念を確立し広く啓蒙することが必要である。

公開日・更新日

公開日
2024-04-10
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-04-10
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
202211051C

成果

専門的・学術的観点からの成果
NIID症例のレジストリー構築を継続的に進めており、現在、病理所見で診断された例で、383例が登録されている。そのうち、病理所見および遺伝子検査の双方で診断された例としては292例が登録済みとなっている。そのうち、病理所見および遺伝子検査の双方で診断された合計150例のNIID症例について臨床像を解析した。これらの内容について、日本神経学会、日本神経病理学会、日本病理学会等で発表するとともに、Neurology and Clinical Neuroscience誌に論文を投稿、掲載された。
臨床的観点からの成果
病理および遺伝子の双方で診断された150例のNIID症例について臨床像を解析し学会で発表するとともに、書籍および論文等で発表した。その結果、年間で約80例のNIIDが疑われる症例について、皮膚生検あるいは遺伝子検解析による診断の依頼受けている。また、視力障害をきたすNIIDについて、眼科的な臨床像および網膜と視神経の病理学的検討を行い、国内および国際学会で発表するとともに論文で発表した。臨床的に網膜色素変性症と診断されている症例の中にNIID症例が含まれていることが明らかとなった。
ガイドライン等の開発
病理所見および遺伝子検査の双方で診断された合計150例のNIID症例について臨床像を解析し、個々の症状、検査結果について感度および特異度を検討し、診断基準を作成した。さらに、診断基準案の診断カテゴリーについても、感度、特異度を検討した。これらの結果を元に、診断基準案の妥当性について検討し、適宜改訂を加え、NIID診断基準の最終案を作成した。2023年6月に日本神経学会から承認を受けたため、現在、指定難病への指定を厚生労働省に依頼している。
その他行政的観点からの成果
NIIDは厚生労働省の指定難病の基準を満たすため、現在、厚生労働省指定難病検討委員会に提出し、神経核内封入体病の指定難病追加についてご検討いただいている。
その他のインパクト
2022年の第63回日本神経学会学術大会では教育講演を行い、その様子は、e-learning の素材として、日本神経学会の会員向けサイトで公開されている。第63回神経病理学会総会学術研究会においても教育講演を行った。2024年4月、ラジオNIKKEIドクターサロンにてNIIDについての解説が放送された。一般および医療従事者向けにNIIDについて概説するホームページを公開している(https://janiids.org/)。

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
17件
その他論文(和文)
4件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
16件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
1件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
NIID診断基準の作成(日本神経学会から承認済み)
その他成果(普及・啓発活動)
2件
マスコミ発表1件、ホームページ作成1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Sone J, Ueno S, Akagi A et al.
NOTCH2NLC GGC repeat expansion causes retinal pathology with intranuclear inclusions throughout the retina and causes visual impairment.
Acta Neuropathol Commun , 11 (1) , 71-  (2023)
10.1186/s40478-023-01564-3
原著論文2
Ando M, Higuchi Y, Yuan J et al.
Clinical phenotypic diversity of NOTCH2NLC-related disease in the largest case series of inherited peripheral neuropathy in Japan
J Neurol Neurosurg Psychiatry  (2023)
10.1136/jnnp-2022-330769
原著論文3
Sone J
Recent topics of neuronal intranuclear inclusion disease ( NIID )
Neurology and Clinical Neuroscience , 12 (1) , 3-9  (2024)
10.1111/ncn3.12675
原著論文4
Boivin M, Deng J, Pfister V et al.
Translation of GGC repeat expansions into a toxic polyglycine protein in NIID defines a novel class of human genetic disorders: The polyG diseases
Neuron , 109 (11) , 1825-1835  (2021)
10.1016/j.neuron.2021.03.038
原著論文5
Higuchi Y, Ando M,Yoshimura A et al.
Prevalence of Fragile X-Associated Tremor/Ataxia Syndrome in Patients with Cerebellar Ataxia in Japan
Cerebellum , 21 , 851-860  (2022)
10.1007/s12311-021-01323-x
原著論文6
Fukuda H, Yamaguchi D, Nyquist K et al.
Father-to-offspring transmission of extremely long NOTCH2NLC repeat expansions with contractions: genetic and epigenetic profiling with long-read sequencing
Clin Epigenetics , 13 (1) , 204-  (2021)
10.1186/s13148-021-01192-5.

公開日・更新日

公開日
2024-04-10
更新日
2025-05-26

収支報告書

文献番号
202211051Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
2,600,000円
(2)補助金確定額
2,600,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 509,406円
人件費・謝金 1,134,215円
旅費 0円
その他 356,379円
間接経費 600,000円
合計 2,600,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2023-12-11
更新日
-